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普通のおじさんの異世界鑑定譚  作者: あいら


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第31章 砂漠の試練

階段を下りた瞬間、

 熱が、叩きつけられた。


「――っ!?」


 アキラは反射的に息を止めた。


 肺に流れ込んだ空気が、熱を帯びている。

 足元は砂。見渡す限り、起伏のある砂丘が続いていた。


「……砂漠、か」


 天井は高く、疑似太陽のような魔力光源が、

 容赦なく照りつけている。

 ここは、生身で長時間歩けば確実に消耗する階層だ。


「水の消費、行動速度、体力――どれも致命的になるな……」


 アキラがそう呟いた瞬間。


 ナイトが、ふわりと翼を広げた。


「……ナイト?」


 次の瞬間。


 ぱんっと、柔らかな音がした。


 アキラとナイトの周囲を包むように、

 半透明の“泡”が膨らんだ。


 まるで巨大なシャボン玉。

 だが内部の空気は、驚くほど涼しい。


「……え?」


 アキラは、恐る恐る息を吸った。


 ――暑くない。


 先ほどまで感じていた灼熱が、嘘のように消えている。


「……魔法?」


「ワフ」


 ナイトは、何でもないことのように鳴いた。


 《鑑定》。


――《環境適応結界(天犬固有)》

 効果:温度・湿度・有害環境の緩和

 備考:主人への負荷なし


「……固有魔法、か」


 アキラは、乾いた笑いを漏らした。


「いや……もう護衛とか、そういう次元じゃないな」


 泡状の結界は、外部の熱を遮断するだけでなく、

 砂の沈み込みも軽減している。


 歩くたび、足が沈まない。

 まるで、固く締まった地面を歩いているようだ。


「……快適すぎるだろ」


 砂嵐が遠くで巻き上がっているのが見える。

 本来なら、視界を奪い、体力を削るはずの現象。


 だが結界の中では、音も、風圧も、

 ほんの微かな揺れとしてしか伝わらない。


 アキラは、歩きながらナイトを見る。


 白い毛並みは、まったく汚れていない。

 翼も、砂一粒付いていない。


「……鏡のエリアでも思ったけど」


 アキラは、静かに言った。


「お前、本当に凄いんだな」


「ワフ!」


 ナイトは、誇らしげに胸を張る。


 砂漠階層には、地中から現れる魔物の気配もある。


ワームという、ミミズを巨大化したようなモンスターや、

エリマキトカゲのような、ちょっと可愛いモンスターもいる。


砂漠のモンスターは防具を作るのに丁度いい。


「ナイト、どんどん狩るぞ」


「ワン!」


任せとけという風にナイトが駆け出す、

次から次へと倒し、俺はそれを”鑑定”しつつ、マジックバックに入れていく。


砂漠の魔物は大きなモンスターが多く、

注意しないと、すぐにマジックバックがいっぱいになりそうだ。


本当は必要な部位だけを持ちかえればいいのかもしれないが、

植物状のモンスターなら可能だったが、

大きなミミズのようなモンスターを解体するような能力も度胸もない。


結局の所、巨大なモンスターそのままを、丸ごと収納するしかなかった。


「うわ!」


砂の中からワームがいきなり現れる。


すぐさまナイトがワームに攻撃する。

その姿に、アキラは、胸の奥が少しだけ温かくなるのを感じた。


 前世では、

 誰かを守るために前に出て、

 自分が傷つく役回りだった。


 だが今は違う。


「守られてるな……完全に」






 泡の中を歩きながら、アキラは空を見上げた。


 異世界に来てから、何度も驚かされてきた。


 だが、この砂漠で改めて思う。


「……ナイトがいなかったら、俺、とっくに詰んでたな」


 鑑定は万能じゃない。

 知識も、判断も、限界がある。


 それを補い、超えてくれる存在。


 ナイトは、ただの従魔ではない。

 相棒であり、切り札であり、守護者だ。


「……よし」


 アキラは、前を向いた。


「次の階が見えたぞ」


 泡状結界に守られながら、

 二人は、灼熱の砂漠を越えて進んでいく。


 この試練すら、“日常の延長”に変えてしまう存在と共に。

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