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ちょっと聞きたいんだけど………

 この64話は、きつね様から無理があるとご指摘を頂きましたので、元々考えていたストーリーに変更しようと思います。

 なので、この64話は無かったことに………したいのですが、削除の仕方が分からないので取り敢えずこのままにしときます。m(__)m

「なっ!?」


「何時の間に背後に!?」


 突如として自分達の背後に現れた四人に、死のアウルのメンバー全員が目を見開いて驚愕を顕にしている。

 貴族の嫡男━━ミッチ達の勘違い━━、伯爵の娘、ボスコの三人が、他の四人を捨て駒にしてヘヴィーゴングから逃げたと思っていただけに、その驚きもひとしおだろう。


 そんな死のアウルを前にして、クーパーはゆっくりと鉄製の弓に矢を番え、ガルシアは肩に乗せていたハルバードを確りと握りこむと体を搾るように捻らせた。

 しかし、二人はその姿勢で止まったままピクリとも動くことは無かった。あくまでも威嚇でしかない、ということだろう。


 ミッチ達死のアウルのメンバーが緊張した面持ちを見せる反面で、エイダとアルダの二人が微笑みながら口を開いた。


「アタシたちをクズ呼ばわりするなんて、本当に心外だわ」


「まったくだな。私達のような清廉潔白な冒険者を前にして、良く言えたもんだよ」


 微笑んではいるが、とても和やかな雰囲気とは言えない。寧ろ、不愉快そうに見える。

 クズと呼ばれれば誰でも不愉快になるだろうが、それはエイダ達もその例に漏れなかったようだ。


 ミッチは微笑む双子と今にも戦闘を始めようとしている二人を見て、ゴクッと生唾を飲んだ。隙を突けば勝てると算段していたが、流石に正面切って戦えば勝てないのは理解しているらしい。

 もっとも、彼らに隙など皆無と言って良いし、唯一隙が存在するのはエイトとエヴァの二人だけだろう。


 ともあれ、自分達が絶対絶命の危機に陥っている事実を理解したミッチは、この場を乗り切る方法を思案する………思案するのだが、幾ら考えども答えは出てこない。

 その事実に顔を顰め、冷や汗を流す。そして、この場所が自分の死に場所なのを理解した。

 しかし、それでも彼女には彼女なりの意地がある。盗賊紛いの行為を行っていたとしても……。

 だからこそミッチは、キッと鋭い目付きで双子のエイダとアルダを睨め付けた。


「………ふんっ! 殺したければ、さっさと殺しな!」


「へぇ……抵抗すると思ってたけど、意外に潔いわね」


「平民を虐げる貴族、同じく平民を虐げる騎士団、力は弱いが真面目に働く冒険者を虐げるお前たち静寂の剣! アタイたちは、クズのお前たちとは違うんだよ!」


 実のところミッチ達死のアウルのメンバーは、確かに冒険者などを標的にして襲ってはいたが、最低の人種を標的にしたことしか無かったのだ。

 それは彼らの生まれ育った環境が、彼らの考え方を………否、生き方を決定付けたと言える。


 新人のアイン以外は、全員が同じ村の出身であった。その村の名はルービック……エイトが策に嵌めて捕らえた貴族が統治していた村の一つだった。

 領主であるピートに搾取される彼らは、小さな頃から命を掛けて森や平原に食料を探しに危険を知りつつも入って行くしかなかった。

 その結果……一人、また一人と同世代の人間が死んでいった。魔物に食べられ、時には盗賊に殺され、時には口減らしの為に親の手によって。

 その様な辛い過去を経験をした故、彼らは貴族という人種を心底嫌悪している。それと同時に貴族ではなくとも、それに類する悪党も同様に。

 そんな経緯で、彼ら死のアウルのメンバーは悪党を潰して私腹を肥やすと同時に、世の中を少しでも良くしようと考えているのだった。


 同情は出来る………だがしかし、だからと言って貴族全体を悪だと決めつけるのはどうかと言わざるを得ない。

 それに、ボスコ達静寂の剣についても同様だ。ミッチがクズだと罵っている理由だが、それもあくまでも噂に基づいた推論にしか過ぎないのだから。

 その噂とは、ボスコ達が低ランクの冒険者を脅して金銭を奪ったり、商人を襲っているというものだ。しかし、それは根も葉もない事実であり、悪さをしていた冒険者がボスコ達に叩きのめされた仕返しに流した悪評なのだ。

 

 ミッチ達死のアウルのメンバーは、ここが自分達の死に場所であることを既に理解しているが、それでも悪党を目の前にしている現在において━━結果的に言えば、噂に惑わされているだけなのだが━━死を目前にした者とは思えないほどに強い反感の意を示している。

 そんなミッチ達の周囲に、突如として魔素の塊が10個ほど出現する。そして、彼らがそれに気が付き困惑の表情を浮かべていると、魔素の塊は次第に青銅製のゴーレムへと変貌した。


「こ、これは!?」


「ゴーレムだ!!」


「青銅製のゴーレムだと!? 馬鹿な! 巷で噂の道化の魔術師が、この場に居るとでも言うのか!?」


 全員が混乱している中、ミッチだけはゴーレムを錬成した者が誰なのか察知していた。

 ミッチの大きく見開かれた目が、確かにエイトへと向けられている所を見ると一目瞭然だった。


 何時の間にやら自分達の近くまで来ていたエイト、エヴァ、ボスコの三人に………いや、エイトだけを見詰めながらミッチが口を開いた。


「あ、アンタが噂の………クズのピートを捕らえた道化の魔術師かい……?」


 ミッチが言う噂とは、ジュードが敢えて流した噂のことだ。モーガン領に手を出せば、強力な魔術師が叩き潰すぞ、という脅しの為にピートを捕らえた時の状況を態と噂として流したのだ。無論、それはエイトも知っている……と言うより、エイトがそうしろとジュードに言ったからこそ、ジュードとアランが流した噂なのだ。


 エイトはミッチが口にした名を聞いて、不愉快そうに顔を顰めた。


「嫌な奴を思い出させるなよ。………あんなクズの貴族は断頭台じゃなく、俺自身の手で殺したかったのを思い出すだろ」


 一瞬だけ、ほんの一瞬だけエイトから放たれた殺気にゴクリと生唾を飲みながら、ミッチは恐れでもなく、困惑でもなく、心の底から不思議そうに尋ねた。


「何故だい? クズなら貴族だろうと容赦せずに戦うアンタが………何故、コイツらのようなクズに手を貸しているんだい?」


 既にミッチには、エイトの見た目が子供だろうが関係ないし、気にしていないらしい。それどころか、英雄を目の前にしたような心境のようだ。


「……? ボスコ達や騎士団の人達は善人だろ。なんで殺す必要がある?」


「それは違う! アンタは騙されてるんだよ!」


「はぁ?」


 素っ頓狂な声を上げるエイトは、非常に間の抜けた顔を斜めに傾けた。








 エイトが素っ頓狂な声を上げてから二、三時間が経過していた。

 当初、エイダとアルダは自分達を監視し追跡し続ける者達を捕らえ、未開地の異常を尋ねようと考えていた。そして、その追跡し続けている者達が悪意があってそうしているのなら、聞き出した後に殺そうとも考えていた。

 しかし、ミッチ達が訳の分からないことをエイトに言い始めた為、その誤解を解くのにこれほどの長時間を掛けることになってしまった。

 エイダとアルダの二人からしたら、まさか自分達がクズの悪党だと思われて狙われていたとは思わなかったらしく、ミッチ達から聞き出した噂を耳にして「誰だ、その噂を流した奴は!」「腹いせよ! 腹いせなのよ! 絶対に許さないわ!」等々、憤慨した様子で口から火を吹かんばかりに怒りを顕にしていた。

 ちなみに、笑い上戸のボスコはその間は終始笑っていた為、二人を宥めたのはエイトだったりする。


 ともあれ、噂の一つ一つを嘘だと説明するのが終わると、ミッチ達も自分達が騙されていたことに納得したらしく、ばつの悪そうな表情を浮かべていた。単純に、騙されていたのが悔しいというのもあったのだろうが、危うく無実のボスコ達を殺しそうになったことが自分達でも許せなかったらしい。無論、ボスコ達を殺すことは彼らの実力からすると、絶対に無理だと断言出来るのだが。

 それは兎も角、ボスコ達のことは納得出来たようだが、伯爵の娘であるエヴァ、嫡男ではないが同じく貴族の子弟であるクーパーとガルシアについては未だに嫌悪感剥き出しの視線を向けていた。こればかりは、彼らの生い立ちを鑑みれば仕方ないことだと言える。


 思った以上に長い時間を費やして、漸く話し合いが終わると、エイトは大きく息を吐き出した。そして、はたと気付く。当初の目的である未開地の異常について、何一つ尋ねていないことに。

 そう、目的はミッチ達の誤解を解くことではない。なら何故自分達がそんな会話をしていたのかと思い返してみれば「そうか……俺が騙されているとか言われたからか……」小さくそう呟くと、エイトは再度溜め息を吐いた。

 仕方ないと言えば仕方ないだろう。何せ、誤解を解かねば話が進まない状況であったし、クズだと罵られたエイダとアルダが異常に怒っていたのだから。


 心底疲れたと言いたげな様子を見せていたエイトの腹から、キュルキュルっという虫が鳴く音が響くと、全員が自分の腹を押さえた。

 時刻は既に昼を過ぎており、朝から………と言うより、徹夜をしていた者達の空腹は限界にきているらしい。

 当然と言えば当然。エイトとエヴァにしてみれば、自身より遥かに強いヘヴィーゴングと徹夜で戦っていたのだし、その疲労も相当なものなのだろう。


 なんとなく気恥ずかしそうに、エヴァが頬を掻きながら口を開いた。


「あの、誤解も解けましたし……食事にしませんか?」


「俺も腹が空いてしょうがねぇ。先ずは食べて、それから未開地についての話しをするとしようぜ」


 ボスコも相当空腹だったらしく、エヴァの提案に逸早く同意してアイテムポーチから次々と調理器具を出し始めた。

 そして、ボスコ達に抱いていた悪感情は無くなったが、貴族でもあり騎士団でもあるエヴァ達三人には未だに隔意を持っているようで、ミッチ達は視線を合わせないようにしつつ食事を摂り始める。とは言え、先程まで死ぬと考えていただけに、居心地悪そうにしていたが。


 そんな少し居心地の悪い雰囲気にエイトは苦笑するものの、空腹には敵わないのか空間倉庫から食料を取り出すと片っ端から胃の中に納めていった。

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