表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/68

決戦の時

 暗い闇に支配されている時間帯であっても、二つの月が誇らしげに姿を見せていれば、ある程度は見通す事が出来る。

 事実、エイト達には腰を低くして平原を進み、ブラント村へと侵入を試みようとしている襲撃者達が見えていた。

 その襲撃者達の数は、五十人を越えている。しかも、一人一人のレベルが25から30と言ったところで、冒険者に例えるとランクCにはなるだろうと思われる程の猛者達だ。

 勿論、エイトはそれを肌で感じとり、容易に倒せる敵ではないと悟っている。

 だが、それでもエイトは怯まず、仮面の下に笑みを浮かべていた。


「警備兵だ!」


「村の外まで警備兵を配置してるとは思わなかったが………関係ねぇ。その四人の警備兵を殺せ! さっさと村の住人を全滅させて報酬を頂くとしようぜ!」


「「「「うぉおおおおお!!!」」」」


 集団の中でも一際大きい体躯をした男が襲撃者達を鼓舞し、指示を出す。

 それに従って、次々に勢いよく地面を蹴りエイト達へとその距離を縮める。

 だが、襲撃者達とエイト達の間に突如出現した四十を越える魔素の塊に驚き、全ての襲撃者の足が止まった。


「な、なんだ!?」


「ま、まさか!!? 魔法か!!??」


 突如出現した魔素の塊に、襲撃者達は驚愕の声を漏らす。

 一つや二つならば少々取り乱す程度で済んでいただろうが、流石に四十を越える程になると、途端に先程までの威勢も衰え恐怖に支配されたようだ。

 そして、その恐怖は更に増す事になる。徐々に薄くなる魔素の光と共に。


「…………ご、ゴーレムだぁぁあああ!!!」


「糞っ、糞っ! 魔術師が居るなんて聞いてねぇぞ!!何体居るんだよ!?」


 騎士然とした姿を誇らしげに見せつけるように、ゴーレムカヴァリエがその姿を顕した。

 そんなゴーレムカヴァリエに対して、道化の仮面を被ったエイトが指示を飛ばす。


「剣道に似通った剣術を使う者は無視しろ! それと、上等な防具に身を包んだ者も同様だ! それ以外は………皆殺しにしろ!!!」


 未だ出現したばかりのゴーレムに驚き動きを止めている襲撃者達は、道化師の指示で一斉にカイトシールドを構え前進し始めたゴーレムを見て漸く応戦の為に武器を構える。

 流石に高レベルの者達と言ったところだ。低レベルの者ならゴーレムの姿に恐怖して震えるだけだっただろう。無論、自分達が数では勝っているという事実があるのも関係しているのだろうが。

 しかし、それでもすぐに動揺から立ち直り武器を構えたのは称賛に値する。

 そんな襲撃者達の内の一人が、遥か後方で焦りの色を濃く見せながらも、どこか楽しそうに呟く。


「ヒヒヒ、モーガン家は魔術師を雇ってたのか。だが、土属性の魔術師じゃあ駄目だぜ。火属性か風属性じゃなきゃな」


 楽しそうに呟いたのは、残虐非道で有名なブラドーだ。

 確かに現在のヴァイスハイト国では………いや、エルドラド全体ではと言った方が正しいだろう。世界全体の土属性魔術師の評価は最低であり、事実として他の属性と比べ貧弱な者しか居ない。

 だが、それはエイトがエルドラドへと転移する前の話しでしかない。

 神話、口伝、子供に聞かせる童謡、といったものにしか出て来ない全金属製のゴーレムを現実に錬成する事がエイトには出来るのだから。

 だがブラドーとしては、青銅製とはいえ全金属製のゴーレムカヴァリエを見てもまだ楽しげに呟いていれたのは、四十を越えるゴーレムを錬成すれば早々に魔力切れになるだろうという考えが有ったからだ。


「ヒヒヒ。確かに、青銅製のゴーレムには驚いた。宮廷魔術師の一人である爺にしか錬成出来ない筈だし、尚且つ、これだけの数のゴーレムなんて聞いた事もない。だけどな……魔力が続かねぇだろぉ? ヒァハハハハ!」


 そう笑いつつ告げるブラドーの視線の先では、ブラドーと同じく雇われた者達と、月夜に照らされ鋭く輝く青銅製のゴーレムが戦闘を始めていた。

 戦いは五分五分といった様相だ。

 襲撃者達の中には少々の手傷を負った者も見受けられる。

 しかし、それはゴーレムも同様だ。ロングソードを握る指が折れ曲がっていたり、盾を持つ腕………つまり、どうしても他の部位とは違い弱くなってしまう関節部分である肘から斬り落とされていたりしている。

 だが、ゴーレムは感情を持ってはいない。となれば当然、痛覚も。

 そうなると、ゴーレムはただ無感情に一切の怯みも見せず、斬り落とされた腕で殴りかかり、あるいは組み付いて来る。

 そんなゴーレムを相手に戦う者達は、痛みを感じず恐れも知らない存在との慣れない戦闘によって徐々に息を切らし武器を振るう力が弱まっていく。

 だがそんな中、それでも目の前のゴーレムさえ倒せば、次のゴーレムの錬成は絶対に無いと考えるブラドーの声が響く。


「ヒァハハハハ! おら、もう少しだぞ! ヒヒヒ、手前ぇら少しは考えてみろ! これだけのゴーレムを二度も錬成出来る訳が無いだろうが! 目の前のゴーレムさえ倒せば、後は非力な奴らを甚振るだけだ!」


「………た、確かに」


「なら、後少しだな!」


「報酬はもうすぐだぞ!」


「いい女を抱き放題、旨い酒を飲み放題だ!」


「よっしゃあああ!!」


 無感情なゴーレムとの戦闘によって、徐々に恐怖を増大させて疲弊していた者達が、ブラドーの言葉によって力を取り戻したかのように声を上げる。

 そして、戦闘が始まった当初と同じ程の鋭さで武器を振るい出した。

 残虐非道で有名なブラドーではあるが、人を率いて戦う事に向いているらしい。

 そんなブラドーの言葉に、若干苛立ち舌打ちするエイト。


「ちっ………このままイケると思ったんだけどな。まぁいいか。それなら、お前らクズ共に絶望を教えてやるよ」


 エイトは仮面の下で不敵な笑みを浮かべると、指をパチンと鳴らし全てのゴーレムカヴァリエを魔素へと変換させる。

 襲撃者達の多くは、突然戦っていたゴーレムが魔素へと戻り消えていった事に驚くものの、ブラドーが述べたように魔術師が魔力切れになったのだろうと考え勝鬨の歓声を上げる。

 しかし、それも数秒程すると水を打ったように静まった。

 エイト達と襲撃者達の間に、新たに魔素の塊が四十ほど現れたからだ。


「う、嘘だ」


「そんな筈はない!」


「あんなに苦労して倒したのに、まさか!?」


 徐々に、ゆっくりと、信じられないといった動揺が襲撃者達に広まって行く。

 そして、その動揺は魔素の塊でしかなかった物が、その姿を完全に顕すと絶望へと変わった。


「……………ご、ゴーレムだ……」


「さっきと同じ………」


 先程までの歓声が嘘のように静まり返った平原で、エイトの声が響き渡る。


「ゴーレムカヴァリエよ…………殺れ!」


 短く簡潔な指示を受けたゴーレムカヴァリエは、カイトシールドを構え前進し始めた。

 無感情に、ただゆっくりと前進するゴーレムカヴァリエを、襲撃者達の多くは呆然と眺める。

 そんな中、遥か後方に位置する場所で、ブラドーが余裕の無くなった表情を浮かべ口を開く。まるで、自分を落ち着けるかのように。


「ひ、ヒヒヒ………有り得ない。何故、何度も錬成出来る!? 何故、魔力切れにならない!? …………いや、落ち着け、落ち着くんだ。こうなったら術者を先に叩けば良い。そうだ、そうすれば問題無い!」


 確かに、術者であるエイトを殺せばゴーレムは魔素へと戻り消える。

 襲撃者達の全員がゴーレムを無視し、エイトを殺せば…………。

 だが、どうやらその唯一の策は泡となって消える運命だったようだ。

 何故なら、人外と形容されるランクBの冒険者が、目を血走らせ、殺気をこれでもかと溢れ出させながらエイトの後方に現れたからだ。しかも、二十人程の警備兵を引き連れて。

 そのランクBの冒険者であり貴族でもあるアランが、戦場となり金属同士が打ち付け合う喧騒の中であっても、静かであるが良く通る声でエイトへと問う。


「かぶり技を使う者はどいつだ?」


「戦闘を行っている者の中には居なかった。恐らく、後方に居る五人の内の誰かだろう」


「そうか………雑魚は任せて構わんか?」


「当たり前だ。アランは……いや、アランこそが、殺らなきゃならない相手だろ? 雑魚は俺が片付ける」


 戦場の中であるにも関わらず、静かな口調で話し合う両者。

 もっとも、口調は静かだが、その様子はとても穏やかなものではなかった。

 ともあれ、エイトの意見を聞いたアランは、小さく頷くと襲撃者達の後方に居る五人に鋭い視線を向ける。

 そして、確かにアランの両目がその姿を捉える。


「あいつらの内の誰か………あの五人は全員オレが貰う」


「ああ。だけど、標的以外の上等な装備をしている奴は殺すなよ。証言させなきゃならないからな」


 そう告げるエイトの言葉通り、最大の標的であるピートだけを生け捕りにするのでは駄目だ。ピート以外全員を殺してしまえば、言い逃れる事も出来るからだ。

 だからこそ、ジュードの腕を斬り落とした人物以外……雑魚は除外して、身なりの良い者達は深く事情を知っている可能性がある為、証言者にうってつけなのだ。

 その事をエイトは簡潔にアランに伝える。

 だが、今回の作戦が大詰めになってから嫌と言うほどジュードから言われていたアランだ。流石に怒りで忘れているという事もなく、冷静に頷き理解している事を言外にエイトへと伝える。

 その様子を見たエイトは、ゆっくりと口を開く。


「……そうか、なら行ってこい。お前の……お前達の怒りを教えてやれ」


「あぁ、骨の髄までな」


 アランは緩やかな動作でレイピアを抜く。

 そして、ゴーレムカヴァリエと襲撃者達が争っている場所を、まるで散歩でもするかのように歩いて抜けて行く。

 人外。その形容が的を射てると思わせるには充分の動作。

 そんなアランは、後方に居た五人の前まで辿り着くと、先程よりも濃密な殺気を辺り一面に放ちながら問い掛ける。


「セオドアとかいう奴は誰だ? オレが殺してやるから掛かってこい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ