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せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊7/1発売:商業ノベル&漫画化進行中


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25/29

あるある

 波野さんの話を聞き終えた頃。

 夜空から天の川の姿は消えていた。

 代わりに夕食を終えた観光客が続々と集まって来た。


 本当に限られた時間しか、天の川は見えなかった。波野さんがいろいろ調べておいてくれなかったら、あの奇跡の写真は撮れなかったのだ。


 何よりも、誰にも打ち明けていない胸の内を私に話してくれた――それはとても特別なこと。


(何だか自分が波野さんにとって特別な存在のように思えてしまう……!)


 私が東京から中島へやって来た理由を話したから、波野さんも打ち明けてくれた。旅という非日常であることも、彼が話す気持ちを後押ししたと思う。


(自分が波野さんの特別――だなんて思うのはおこがましい! 雑草は雑草らしく、神様を見上げてほっこりできれば十分!)


 楽しい語らいの時は終わり、ホテルへ戻ると、それぞれ別の部屋で朝を迎えた。


 ◇


 翌朝も晴天の中、目覚める。

 リゾートホテルでの朝は実にすがすがしい。

 早起きだったがスマホを見ると、波野さんから連絡が来ている。


『天気もいいので、朝食前に海辺を散歩しませんか』


 これには『もちろんです! ロビー集合でいいですか?』ということで返事をして、白のチュニックにサブリナパンツで待ち合わせ場所へ向かうと……。


 白のポロシャツにベージュのチノパンの波野さんは、朝から大変爽やか。


 そんな波野さんと向かったのは周防大島にある厳島神社!

 広島の宮島にある本元から分社されたもので、海に赤い鳥居が立っているのだ!


「お互いに五時には起きている――これはかなり健康的ですよね」

「夜寝る時間が早いから、自然と早起きになっている気がします。でも早起きは三文の徳と言いますし、何かいいことがあるかもしれませんよ、白石さん」


 波野さんがそんなことを言っていたが、確かにそれは――起きた!


 なんと、向かった周防大島の厳島神社の鳥居から昇る日の出を見ることができたのだ……!


「ついていますね。今日は本元の宮島の厳島神社にも行きますが、そちらでもいいことがありそうですね」


 波野さんはサラリとそう言っているのだけど。

 散歩を提案してくれたのは彼だった。

 ただ、朝早い時間。だからもし起きていたらということで誘ってくれたが……。


 間違いなく、日の出の時間を調べていてくれたと思う。約束という形で強制せず、なんというかタイミングがあったら……とゆるく誘ってくれるのは……。


(波野さんの優しさね)


 相手に無理をさせない。せっかく調べて見られなかったとしても、気にしない。


(押しつけがましさがないところ。すごいと思うな)


 昨晩聞いた話だと、波野さんを裏切った男性は、周囲に寛容だと言われたらしいが、大嘘だと思う。寛容なのは波野さん! その男性のこと、私だったら平手打ちの一つもしたくなる。でも波野さんは結局、距離をとるという形で相手から離れた。二度と関わらないという形である意味、許している。


(波野さんは寛容だと思う。まだ25歳なのに、どこかドンと構えているというか)


 波野さんの器の大きさを感じ、そして向かった本元の宮島の厳島神社では――。


「大吉でした!」

「俺も大吉です!」


 二人して大吉を引けたのだ……!


 勿論、宮島の象徴でもある大鳥居、海上に浮かぶような回廊、高舞台(たかぶたい)や拝殿を含めた本殿、そして(そり)橋も、じっくり見て回った。そして豊国神社の千畳閣(せんじょうかく)、五重塔、大願寺まで見ることが出来た。さらに参道の商店街では友坂夫妻やご近所さんへのお土産でしゃもじを購入。


 翌日はフェリーに車を乗せ、小豆島へ向かった。


 この日の波野さんは、落ち着きのある黄色のポロシャツに白のスリムパンツ。私は水色のシャツワンピースにグレーのスパッツ。9月半ばだが、まだまだ残暑という感じで、波野さんの明るい色合いのコーデは今の気温に馴染む。何より小豆島は……。


「周防大島はハワイでしたが、小豆島はギリシャなんですね」


 エーゲ海に面したギリシャ同様、瀬戸内海に浮かぶ小豆島は、どこか異国情緒が漂う。今日の私たちの服装もそのリゾート感に見事溶けあう。


「小豆島はギリシャのミロス島と姉妹島提携を結んでいます。その友好の証として1992年にギリシャ風車が建設されたんです」

「あ、そうだったのですね。てっきりオリーブの栽培が盛んだから、ギリシャ風になったのかと思いました」


 私の言葉に波野さんはクスリと秀麗な笑みを浮かべ、教えてくれる。


「確かに明治時代、オリーブの栽培に挑戦し、唯一成功したのが小豆島でしたし、現在もオリーブの産地としては小豆島を含めた香川県がダントツです。それに小豆島の年間を通じて温暖であり、雨が少なく、冬の冷え込みが緩やかなところは、地中海の気候と似ていますよね」

「なるほど。ではオリーブオイルやオリーブの瓶詰は、お土産でぜひ購入するとよさそうですね!」

「ええ。そうしましょう。それでガイドブックでおすすめされていたのは、道の駅『小豆島オリーブ公園』です。ここにはオリーブの木が2000本近くあるオリーブ畑があったり、友好の証のギリシャ風車も見ることが出来ます。映画のロケ地にもなっていますし、映画に登場したセットのお店も見学可能です」

「行きたいです……!」


 こうして小豆島に到着した後は、まず『小豆島オリーブ公園』へ向かった。そこでお土産を買い、沢山写真を撮り、ランチも満喫。午後は日本三大渓谷美の一つといわれる寒霞渓(かんかけい)を見るため移動。寒霞渓ロープウェイに乗り、青々とした緑、瀬戸内の海、山頂では秋を感じさせる清々しい空気を楽しんだ。


 そしてこの日は小豆島に一泊。


 翌日もまたフェリーに車を乗せ、まずは高松へ。高松からまたフェリーに車を乗せ、直島へと向かうことに。


「瀬戸内では、フェリーの乗り継ぎはかなりあるあるです」

「そうなんですか!?」

「白石さんは瀬戸内に島がどれぐらいあるか知っていますか?」

「そう言われると……え、全然想像がつきません……!」

「瀬戸内の島、実は700以上あるんですよ」

「えーっ、そうなんですか!」


 これはびっくりだった。

 観光地として知られている島は20程度であり、私の知らない島がまだまだ沢山あるようだ。


「そしてフェリーの直行便が必ずしもあるわけではないんです。自然と乗り継ぎは発生します」

「なるほど」

「それに、フェリーで移動中は白石さんとしっかり話せますしね。運転をしながらだと、どうしても会話だけに集中はできないですから」

「あ、それはそうですね! なんだかんだで運転は波野さんにお任せになっています。……疲れますよね。直島では私、運転してみましょうか!?」

「……最後に車を運転したのは?」

「え、免許を取った大学四年生の時です!」

「思いっきりペーパードライバーですね。車の運転を試したいなら、中島に戻ってからにしましょう」


 そこでぽすっと私の頭に手をのせる波野さんは限りなく優しい。


 車の運転。運転している時の波野さんは……推しはたまらなくハンサム。でもこうやって運転なしで並んで座り、目と目を合わせ、時にこんなふうに触れられ、会話できるのは……。


 すごくいい!


 そんなことを思っている間に、直島に到着した。


お読みいただき、ありがとうございます!

瀬戸内に700以上も島があること、筆者は今回調べて初めて知りました……!

その数もそうですが、瀬戸内海にそんなに島が存在できている=広いことをしみじみ実感です。

そんなこんなで瀬戸内の旅、続きます!

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