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せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中


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2/5

のんびり行こう

 律子が運命を感じ、電話してくれたこと。

 まさに納得だった。

 私が見つけた中島の長師海岸は、観光名所というわけではない。釣り客や島巡りをする人、夕陽やみかん畑の写真を撮りたい人がのんびり訪れるような島。移住先として大注目というわけでもなく、目的を持った人が見つける場所。そんな中島に行きたいと私が思った。そして律子の知り合いのご夫婦が中島に住んでいた……これは奇跡に近い。


(そう考えると律子の言う通り。運命ね。絶対に行くしかない!)


 かくしてもろもろ調整をして、9月の初旬に中島へ向けて旅立つことにした。


 ◇


 東京から愛媛の中島へ向かう方法。


 調べると最短ルートは飛行機を使い、フェリーに乗るもの。でも今回の旅は急ぎの旅ではない。


 騙された記憶を少しでも風化させ、傷ついた心を癒すための、再生のための旅なのだ。そのために、1カ月の時間をとった。あくせくする必要はない。のんびり行こう。


 そこで私はいろいろ検索し、まず飛行機で東京から岡山空港へ。そこからバスで岡山駅に向かう。そしてここから、瀬戸内を楽しむ旅がスタートする。


 快速マリンライナーに乗り、高松を目指す。この際、あの瀬戸大橋を渡るのだ。


 本州と四国を結ぶこの橋、名前は知っている。ネットやテレビで見たこともあった。しかし実物を見たこともなければ、渡るのも今回初めてのこと。でもこの快速マリンライナーに乗り、瀬戸大橋を渡れば……。まるで海の上を走っているような、絶景を楽しめるというのだ。


 さらに高松に到着後、特急しおかぜに乗り換える。そこから松山を目指すわけだが、海岸線ぎりぎりを走る区間があり、ここでは海との生活、そこで生きる人々を感じられるという。小さな港で働く人々や行き交う漁船、防波堤に立つ人まで見えるほどの近さなのだとか。さらに内陸に入ると、海から一転、山並みと田んぼが広がる。のどかな田園風景が迎えてくれるのだ。


 私は住所が新宿区に住んでいた。見渡す限りビル、ビル、ビルという都会のど真ん中。


 せとうちの海と山の自然は、間違いなく私の心を癒してくれそうである。何よりも、あのネットで見つけたような夕焼けを中島で見ることが出来たら……。


 東京で経験した私の恋の終わりなんて、ちっぽけなものと思えるはず。


 というわけでネットで飛行機のチケットを購入し、なるべく身軽になるよう、スーツケース一つに荷物を収める。そしてまだまだ残暑が厳しい9月初旬、愛媛の中島に向け、東京を出発した。


 ◇


 まだ残暑は厳しいし、飛行機も電車も冷房はしっかり効いている。


 そこで白のサマーニットに紺色のロングスカート、軽く羽織れる薄手のジャケットを合わせた。髪はサイドでローポニーテールにしてシュシュでまとめる。そしてまずは羽田空港を目指す。


 大きめのスーツケースを引いている。私がこれから旅行だと、通り過ぎる人にもわかるだろう。だが私自身はまだ旅気分ではない。


 飛行機に搭乗しても、都会の延長線上にいる気分。飛行機の乗客も観光客ではなく、スーツを着たビジネスマンが多い。


挿絵(By みてみん)


 岡山空港に到着すると、一斉に乗客が動く。賑わった感じになるが、それも一瞬のこと。常時人がいる羽田空港とは違い、少しローカルな空港にやってきた印象。やはりまだ本格的な旅気分ではない。


 しかも岡山駅に着くと、新宿駅や東京駅ほどではないが、岡山空港より人が多い。なんだか都会へ戻って来た気分になる。


(でもいよいよここからよ。この後、海が見えて島も見えたら……)


 1時間に二本ほどで運行している快速マリンライナーは、グリーン車の一階席を予約していた。目線の低い一階席で、電車が海面すれすれを走っているような感覚を味わいたかったからだ。


 ちなみに二階席は視界が広く、瀬戸内の島々は勿論、瀬戸大橋自体もよく見える。観光客は圧倒的に二階を選ぶらしく、一階席に旅行客の姿は少ない。そして岡山駅を出発してしばらくは在来線の雰囲気が続く。つまりは市街地を走っているという感じ。


(視界は開けている。でも海はなかなか見えないのね)


 児島駅が近づくと、チラッチラッと海が見えた気がする。


 海は見えるような、見えないような感じだが、遠くに瀬戸大橋らしき建造物の一部が見えてきた。


 そこで本州最後の駅となる児島駅に到着。ホームでカメラを手にする観光客もいる。


(とはいえ児島駅に到着しても、橋はまだ少し先。出発したら、いよいよ瀬戸大橋に突入にする……)


 アナウンスが流れ、電車が出発。


 ワクワクとドキドキが入り混じる中、トンネルに突入し、視界が暗くなる。程なくして明るくなると――。


「あっ!」


 遂に、瀬戸大橋に到達!


 橋の鉄骨が車窓からしっかり見え、通過中であると実感する。瀬戸内海とその島々も見えているが、鉄骨がまだ多い。


 でもしばらくすると、鉄骨の間隔が広くなり、太陽の陽射しを受け、キラキラと輝く海と島が見えてくる。


 だがまたしばらく行くと、鉄骨が並ぶ。そしてまた鉄骨の間隔が広くなり、瀬戸内海と島々がよく見えて――。


 その繰り返しで、電車はどんどん進んでいく。


(これが瀬戸大橋なんだ……!)


 無事に橋を渡り、四国に到達。また市街地のような景色が広がる。


(なんだか橋を渡ると、すぐに高松に着くイメージだった。でもそうではないのね)


 何だか「瀬戸内海! 瀬戸大橋!」とテンションが上がり、その後の余韻を楽しむ時間をもらえたようだ。ならばと、岡山駅で購入しておいた「祭ずし」を昼食としていただくことにする。


 祭ずしは岡山名物。蓋を開けた瞬間、その色彩と具沢山な様子にテンションが上がってしまう。錦糸卵の黄色、エビの赤、レンコンの白。椎茸やニンジンなど野菜ものも載せられている。


「いただきます!」


 ほんのり甘みのある優しい味付け。


(何だろう。すご~く美味しく感じる)


 冷めても美味しい駅弁マジック!


 完食し、ペットボトルのお茶を飲んで落ち着いたところで、高松駅に到着した。


 ◇


 高松駅で乗り換えとなる特急しおかぜ。


 海側の景色をしっかり楽しめるよう、指定席を押さえていた。


 ということで座席に座ると、ふわっと欠伸が漏れる。


 何だかんだで飛行機とバス、そして快速マリンライナーを乗り継ぎ、ここまで来ているのだ。そしてさっき祭ずしも食べている。


(海岸線沿いを走るのは、高松駅を出発して30分くらい経ってから。ここは英気を養うため、昼寝ね)


 うっかり寝過ごして景色を見忘れないよう、スマホのアラームをセット。


 乗客はそこまで多くない。だが私と同じように眠気に誘われたらしい大学生カップルが、互いにもたれて目を閉じている。


 そんな二人を見ると、胸の奥でチクリと来るものがあるが……。


 今は失恋の痛みより、眠気。心地良い電車の静かな振動と共に、すぐに眠りに落ちる。


――「あずさ」


 体を重ねた時、その寸前に西園寺さんは私の名を呼ぶ。呼ばれても私は息が上がり、返事どころではないのだけど。


 私をのぞこむ西園寺さんの顔が、逆光により、シルエットで見える。


 そこでハッとして目が覚めた。


 まだアラームは鳴っていないが、すっかり覚醒している。


(終わった恋にすがるのはやめたいのに、こんな夢を見ちゃうなんて。……なんだろう? 欲求不満なの、私!)


 思わず苦笑し、気分を変えようとトイレに向かう。歯も磨き、リフレッシュして席へ戻ると……。


 快速マリンライナーの時のように、チラッチラッという感じで海が見えた。


 窓の様子をうかがっていると、海外線に近づくのがわかる。


「あ!」


 海がすぐ近くになり、思わず声が出てしまう。そこからは漁港が見えたり、堤防が見えたり。島が見えたり、小舟が見えたりと、瀬戸内らしい景色が広がる。


 瀬戸大橋を渡っている時は、思わず見るのに夢中だった。スマホを手にしているのに、写真はほとんど撮っていない。だが今回はパシャパシャと写真を撮り、律子に送ることにする。


 そうしていると次第に海より山、田園や川の景色が増えてきて――。


 高松駅から映画一本ぐらいの時間で、松山駅に到着した。

お読みいただき、ありがとうございます!

飛行機からの景色、奥には富士山、右手には東京タワーが見えています!

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