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せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊7/1発売:商業ノベル&漫画化進行中


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15/29

笑顔が止まらない

「白石さん、ここですかね?」

「はい、そうです!」


 三津浜焼きを食べてから移動すること二時間。事前にネットで調べていた尾道ラーメンのお店に遂に到着した。


 国道2号線沿いで、JR東尾道駅から徒歩5分なので、車でも電車移動でもアクセスしやすい立地。しかも駐車場も割と広いのが嬉しい!


(11時オープンを少し過ぎた時間で到着したから、行列客が着席した直後だったみたいね! スムーズに席へ案内してもらえた!)


 横並びに座り、メニューを確認すると、波野さんが私を見る。


「このシンプルな『ラーメン』を頼めば、尾道ラーメンなんですね」

「そうなります!」

「……餃子は頼みますか?」


 餃子。ラーメンも好きだけど、餃子も大好き。だがしかし!


「餃子は……7個……一皿食べると満腹になりそうなので、よかったらシェアしませんか?」

「いいですよ」

「……波野さんって友坂家の食事会では結構召し上がっていますよね。ラーメンと餃子半分で足りますか? チャーハンもありますよ。小サイズもありますけど……」


 私の言葉に、波野さんがその整った顔の口元に悪戯を思いついた子どものような微笑を浮かべる。


「もしや白石さん、俺を太らせ、美味しくいただくつもりですか?」

「!? そ、そんな! 波野さんをいただくなら、そのままいきます!」


 先日見せていただいた完璧なる裸の上半身を思い出し、即答すると……。


「……白石さん、時々大胆ですね」

「ハッ!」

「尾道で予約したホテル、部屋は別々ですが、いつでも襲いに来ていただいて構わないですよ」

「え、いいんで……い、いえ、お、襲いません!」

「今、言い淀みましたよね?」

「き、気のせいです……!」

「お待たせいたしました、餃子です!」


 あわあわしていたところに、餃子が救世主のように登場してくれたことに安堵する。


(推しの冗談がご褒美過ぎて、やっぱりキュン死しそう……! 私が真剣に「では襲いに行きますね!」と言ったら、どうするつもりだったの……!)


 そこでこうも思ってしまう。


(波野さんは私の反応が面白いから、からかっているのよね? もし真顔で「はい。いつも押し倒したいと思っています!」と言ったら、どうなるのかしら……?)


 もしや激レアな推しの姿を見られるかもしれないと思うと、ついニヤニヤとしてしまう。


「白石さん、そんなに餃子を食べたかったんですね。7個あるので、4個いいですよ。なんなら5個食べても」

「! こ、ここは女子なので、3個とさせてください!!!!!」


 ニヤニヤから一転、やはり私は波野さんの言葉に転がらされ、動揺してしまう。だが波野さんは落ち着いた様子で告げる。


「ラーメンが来る前に餃子、食べてみましょう」

「はい!」

「「いただきます!」」


 ということで尾道ラーメンの前に、まずいただいた餃子は……。


「あ、皮がしっかりした食感ですね」

「そうですね。薄皮タイプではなく、もちっとした皮で……美味しいですね」

「はい。頼んでよかったです……!」

「ラーメンお待ちどうさま~」


 餃子に感動していると、ラーメンが到着!


挿絵(By みてみん)


「チャーシュー、メンマ、ネギ……このしみしみの天かすみたいに見えるのが背脂ですね!」


 私がスマホを手にそう言うと、波野さんから笑顔がこぼれる。


(うわぁ、推しのこの笑顔、めっちゃ自然でいい! 写真、撮りたかったなぁ~)


 すっかり推し活モードの私に波野さんは……。


「白石さんの表現……ツボなんですけど。しみしみの天かすみたいな背脂って……。普通に背脂でいいのに! 面白過ぎます……!」


 ふるふると体を震わせてくれる波野さんが尊過ぎて、私は衝動を抑えきれず、写真をパシャリ。


「白石さん、俺の写真を撮るなら、一緒に撮りましょう」

「え、私は別に……」

「はい、少し顔を上げてください!」


 波野さんは、尾道ラーメンと私のスリーショットを撮ると、すぐにメッセージアプリへと写真を送ってくれる。


(どんどん私のスマホに、デートしているみたいな写真が増えていく……)


 それはもう胸がトクトクと高鳴る事態で、またも煩悩が強くなりそうになる。


(煩悩退散! ラーメンに入魂!)


 ということで手首につけていたシュシュで、髪を後ろで束ね、ラーメンを食べる体勢を整える。


「白石さんの本気度が伝わりますね」

「はい! 麺が伸びる前にいただきましょう!」

「そうですね。では」

「「いただきます!」」


 まずはスープを一口。


「あ……魚介が効いていますよ、白石さん」

「そうですね。これだけ背脂がありますが、しっかり魚の旨味を感じます。いい感じです。私の好きな味!」

「次は麺ですかね」

「あ、麺、お先にどうぞ」

「……白石さんは?」

「私はネギから行くんです。野菜のつもりで、先に食べるんです」


 すると波野さんが再びふるふると笑いを堪えている。


「野菜……野菜食べたいなら、肉ニラでも頼みますか?」

「え……それは、食べ切れないです!」

「白石さんは旅行だからですか? 中島にいる時以上に面白いんですけど」

「そ、そーですか?」

「ネギの次にメンマを食べているのは、メンマも野菜だから?」

「そ、そうです……」


 私の言葉に波野さんのふるふるが止まらない!


「尾道ラーメンと聞く度に、白石さんのことを思い出し笑いしそうです……!」


 波野さんはラーメンを食べている最中、ずっと笑いが止まらない。そして「尾道ラーメン、すごく美味しいんですけど、白石さんと完全にリンクしてしまって……。尾道ラーメンと聞いただけで、爆笑しそうですよ!」なんて言うのですが!


(私だって尾道ラーメンと言ったら、この先ずっと、波野さんのこと、思い出す気がします……!)


 ◇


「では胃袋も満たされたので、尾道散策をしますか?」

「はい! 尾道と言えば千光寺と思うので、まずは千光寺ロープウェイを目指し、瀬戸内の海と街並みを楽しみたいです!」

「賛成です。尾道らしい景色は俺も前から見たいと思っていたので」


 こうしてロープウェイの近くまで移動し、車を停めて、乗り場まで移動。ロープウェイは15分間隔で動いているので、お手洗いなどを済ませ、乗り込むと――。


「あ! すでにロープウェイからの眺望で、海も街並みも見えていますね!」

「ええ、見晴らしがよく、瀬戸内海の碧さが目に眩しいです」


 波野さんがサングラスをはずし、目を細めると、近くの席の女性グループから「わあ、あの人、めっちゃかっこいい」というささやき声が聞こえてくる。


(やっぱり私の推しはイケメンだよね……)


 なぜか我がことのように嬉しくなっていると、乗車時間3分で山頂に到着となる。


「うわあ、波野さん、これが展望台なんですね!」

「展望台と言えば縦に伸び、高さがあるイメージですよね。でもこの展望台は尾道ならではの坂道を取り入れ、緩やかなスロープ、らせん階段もあり、歩きながら眺望を楽しめる……とガイドブックに書いてあります」


 つまり細長い橋型の展望台だった!


「こんな展望台、初めてです。波野さん、行きましょう!」

「ええ、行きましょう!」


 まずは階段を上り、展望デッキへ向かう。開けた展望デッキは全身で太陽と風を受けるので、実に清々しい!


「ロープウェイの途中で見た景色より、さらに眺望がいいですね、波野さん!」

「そうですね。見える島の数も増えましたし、迫力があります」


 テンションが上がりっぱなしの私は思わず両手を上げ、喜んでしまう。そんな私を見て微笑を浮かべた波野さんは、眼前の景色について教えてくれる。


「山陽本線、尾道大橋と新尾道大橋が見えていますね」


 確かに二つの橋が見えている。


「二つの橋は平行して走っていますよね? 何が違うんでしょうか……?」


 私の問いに波野さんはサラリと答えてくれる。


「尾道大橋の方が古くて、向島へ行くのに日常使いしている橋なんだそうです。新尾道大橋は、しまなみ海道の入口、高速に乗るための橋」

「あ、用途が全然違うわけですね!」


 ゆっくり場所を移動しながら、引き続き開けた景色を眺める。上ではなく、横に移動しつつ、展望を楽しむのは初めての感覚だった。


挿絵(By みてみん)


「あれは尾道水道ですね。向島も見下ろすように見えています」

「向島……じゃあ左手のあの山が高見山ですか? それにしても見下ろす……そうですね。何だか浮遊感もあり、展望台なのにアスレチックな気分になれます!」

「アスレチック……なんだか白石さん、童心に返っています?」

「あ、わかります~? ちょっと駆け出したい気分です!」


 私の言葉に波野さんがクスクスと笑う。

 推しの笑顔を見ていると、私も自然と笑顔になる。


「あの屋根は……お寺ですかね~?」


 ウキウキ気分で尋ねると、波野さんが落ち着いた様子で答えてくれる。


「あれは……尾道市立美術館だと思います。その奥が三原方面だから……。あれが佐木島で、その隣が岩子島、そして生口島、かな」

「なるほど。あの横長の建物は……」

「あれが尾道駅ですね」


 そんなことを話しながら、螺旋階段をゆっくり降り、しばらく歩くと素敵なスポットを見つけてしまう。


お読みいただき、ありがとうございます!

尾道ラーメン、たまに食べたくなるとご当地カップ麺につい手が伸びる(笑)

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