11.真実の男
この小説にはパロディ、オマージュがあるので、参照元を検索エンジンに入力したURLを脚注としてつけておくことにしました。
例)タイトル https://www.ecosia.org/search?q=The+Catcher+in+the+Rye
たぶんURLを踏むと草が生えます。
検索エンジンについて https://www.ecosia.org/search?q=Ecosia+wiki
全13話構成です。
拙い文章ですがよろしくお願いします。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。加えて、このなかで語られた言葉はいかなる真実をもふくみません。
「意外だな。」
一朗は明るすぎる通路に目を細めながら言った。一朗は樫田に導かれるまま基地の中を歩いた。
「ズヴィズダーの本拠地がここまで清潔だなんて。」
「ハアハア、もっと汚れていると思っていたのか?」
樫田は息を切らしながら言った。
「資金に乏しいと思っていたからな……。」
「ハア、そんな心配はないさ。」
「なぜそう言える?」
一朗は樫田の口ぶりに疑問を抱いたようだった。
「そりゃあ、俺が奴らの資金源を知り尽くしているからさ。」
「お前が?」
「ああ。Pres.Ciel にちょっと手を貸したことがあってな。その時に如月の居場所も対価として」
そう樫田が言った時、長い道の向こうから白衣を着て、白い髭を蓄えた太った男が前から歩いてくるのが見えた。男はこちらに気づくと、急に走り出した。
「樫田くん!左腕が!君はまた無茶をしたね!一体何をしたんだい!?」
「あぁ、先生、モンドに追っかけられて…今度は腕が取れちまった。」
「モンド!?仕事人モンドか!よくぞ命があったものだ……。」
「ええなんとか。またいつもみたいにお願いしますよ。先生。」
そう言いながら、樫田が左腕を見せると医者は樫田のなくなった断面を少し見て言った。
「樫田くん、これはもう手遅れです。」
「ハア、ハハハ、またそんなことを言って。とりあえずどんな腕でも良いのでくっつけてください。予備の腕は格納庫にあるでしょう?」
「わかった。やれる限りのことはやろう。ところで君は……?bio-Aを連れているが……。」
医者の男は不思議だといった表情で一朗とニルを見た。
「ああ、こいつは僕の連れです。ズヴィズダーに入りたいそうで。」
「そうか。よろしく。私は医師の藪井竹庵と言います。」
そう言って男は笑顔で一朗に手を差し出した。
「昏一朗です。どうも。」
一朗が無愛想に握手を交すとニルが大きな声で叫んだ。
「へー、おっさん、なんだか愉快な名前だな!」
その声を聞いて医者は飛び上がった。
「bio-Aが喋った!」
「こら、失礼を言うんじゃない!藪井先生はこれまでも数多くの手遅れ患者を救ってきた名医なんだぞ!」
「まあまあ、樫田くん。しかし珍しいな。一朗くん、このbio-Aは君が飼っているのかい?」
「飼われている?俺がこいつを飼ってるんだよ!」
ニルがまた大声で叫んだのを見かねて樫田が藪井に説明した。
「これは俺の新しい商品、世にも珍しい喋るbio-Aです。」
「そうか。しかし、そんなことより君の腕だ。これから集中治療室に入らないと。これは大変な手術になる、かなり時間がかかりそうだ。」
藪井がそう言った時、通路の左にあった扉が開いた。扉から出て来たのは若い白人の男の姿をした人物と丸ぶちの眼鏡をかけた見るからにひ弱そうな青年、浅黒い肌で屈強な男だった。男たちは何やら討論しながら騒いでいた。
「おっとマズいな。ハハ。」
樫田がそう呟い一朗の陰に隠れたが、その様子に気づかずに白人の男は夢中になって議論を交わした。
「ディグナム!ファクトフルになれ!この都市で1日あたり190不可説以下で暮している貧困層はこの20年間で半分になった!着実に経済は良い方向に向かっている!最優先すべき問題は」
ディグナムと呼ばれた屈強な男が反論する。
「おいおい、クイーナン。この都市の人口のうち資産が下位半分である人々の資産合計は、上位の富豪たった26人分と等しいんだ。この都市の富の45%を1%の人口が占めているというデータがある。しかも、彼らの格差はどんどん開いていっているんだ。富裕層の資産は平均13%ずつ増えているのに対し、一般的な労働者の賃金は平均2%しか増加していない。“悪い”と“良くなっている”は両立するとはいえ、この状況を発生させる現在の体制を許していいのか!?その事実は君も知っているだろう?なぜそれを君は君のファクトに関する著作で取り上げないんだ?」
ひ弱そうな青年が間に割り込んだ。
「ねえ、君たちそれよりも、この都市で働いているアンドロイドたちの人権が尊重されるべきだよ。彼らはこの都市で最も古くから搾取されている奴隷さ。」
すると白人の男が言い返した。
「マドリン、お前にはいつも言っているだろう?今“搾取”されているアンドロイドがそれを望むのか?そんな理念だけを“上”から先行させてもアンドロイドたちはついてこない。それにそもそも、アンドロイドに対してヒトと同様の“人”権を与えるのは傲慢で人間至上主義的、人間中心主義的だ。」
「そうは言っても……」
「マドリン、理念ばかりを見るんじゃない。ただ現実だけを見ろ。」
「ディグナムさん、とは言っても理念なしに行動するのは動物と変わりないよ。」
一朗は彼らを見て唖然とした。というのも、出てきた男たち全員がくたびれた詰襟の学生服を着て、古く擦り切れたマントを纏い、星のエンブレムのついた学生帽を被っていたからだった。
その3人はそのまま何やら議論を交わしていたようだったが、いつまで経っても結論が出ず、合意に至ることがなかった。その様子を見てニルが言った。
「おい、こいつらはいつもこんなにうるさいのか?いつまで答えの出ない討論をしているんだ?」
「答えが出るかどうかは問題じゃないのさ。議論をし続けて、問い続けるということに意味があるんだとか。」
「それで?最終的にどうやって物事を決めるんだ?」
「最終的には数の」
そう返事をする樫田の姿を白人の男が確認した瞬間、血相を変えて迫って来た。
「樫田!貴様ァ!治安維持局に潜入させていたコリンと連絡が取れなくなったぞ!まただ!お前、リヴァイアサンに我々の情報を売っているだろう!?」
白人の男が樫田の胸ぐらを掴んで問い詰めた。
「ハハハ、コリン、コリン・デイモンのことか。奴も捕まったのか。あんたらの密偵は間抜けだらけじゃないか。」
樫田の挑発に白人の男が殴りかかるのを藪井と浅黒い肌の男が止めた。
「やめるんだ!クイーナン!我々が彼からどんな恩恵を受けたか忘れたのか!?このアジトを整備することができたのも彼のおかげだろう!」
「藪井さん、でもこいつが売った情報に基づいて行動した我々の密偵はことごとく行方不明になっている!こいつはトロイの木馬だ!」
揉み合う男たちを見て樫田は笑みを浮かべながら言う。
「ことごとく…。そうだな、17人中16人。残るは1人だな。さて、本当にリヴァイアサンを破壊できるかな?」
樫田の言葉が白人の男たちの怒りを逆撫でしたらしく男は暴れ始めた。
「樫田くん、無駄に挑発するんじゃない。落ち着け、クイーナン君、リヴァイアサンのコモンセンスの網を抜けるのはそれだけ困難だということだ。なぜなら、我々の送り込んだ密偵は自身の思想まで欺かなければならないのだ。潜入した彼らがそこまでできなかったとしても不思議ではない。」
藪井の言葉を聞いて、クイーナンと呼ばれた男は少し落ち着いたようだった。
「今日は!今日のところは見逃してやる!くそッ!“サーペント”ととも連絡が取れなくなったというのに……。」
「最後の1人か、そいつはどうなった?」
「誰がお前に話すか!」
クイーナンはそう吐き捨ててその場を立ち去った。
「で、どうなったんだ?」
樫田はディグナムに尋ねた。
「おそらく、夢遊病だろう……。」
騒ぎがおさまったのを見計らってニルが樫田に尋ねた。
「おい、密偵とやらはどうやってリヴァイアサンの都市に潜入しているんだ?自分自身を欺くって……。」
ニルが喋り始めたことに残された2人が驚くのを無視して樫田が答えた。
「こいつらは本土に潜入しているときは夢を使ってメッセージをやり取りしているんだ。密偵はこの基地の外部では革命のためのやり取りと思想、意思を全て夢の内容として記憶している。自らの思念さえもそれが本当の真実ではない、夢に過ぎないと思いながら行動するんだ。」
「なるほど…。民主主義者たちは夢を介して行動して、コミュニケーションをしているのか……。」
「そういうことだ。それが出来なければ、この都市に潜入はできない。」
そう樫田が言った後、すぐさまマドリンと呼ばれた青年が駆け寄って来た。
「樫田さん!あなた腕がないじゃないですか。一体何があったんですか?」
蒼白な顔で悲痛な叫び声を発しながらマドリンは腕を見た。
「ああ、これか、こいつはモンドにやられた。」
それを聞いてマドリンは頬を赤らめて言った。
「モンド!まあ、よく生きて帰ることが出来ましたね!いつものようにその時の話を聞いてみたいものです。」
「マドリン君、待ちたまえ。もう彼の治療をしなければならない。」
興奮する青年を落ち着かせようと藪井が間に入った。
「ああ、そうですね。急いで治療する必要があるでしょうとも。」
「モンドに関する事の顛末はそこにいる昏という男が知っている。聞きたきゃそいつに聞いてくれ。」
そう言うと樫田は昏に目をやった。
「おい、昏、お前らはどうする?基地の中で過ごすにも今みたいにここには結構危ないヤツがいる。」
一朗はニルと目を合わせて少し考えて、言った。
「僕らはバグズアイランドを観光してくるよ。」
「そうか。女神像のパスコードを伝えておく。04-07-1776だ。通信用にこれを持っていっておけ。」
樫田が板状の端末を差し出すと、一朗はそれを受け取った。
「わかった。」
「この都市にはコモンセンスが壊れた奴も多い。お前が見える奴らもいるからな。面倒ごとに巻き込まれてそのbio-Aを逃すんじゃないぞ。」
そう言うと樫田と医者は通路の奥へと消えていった。残された一朗たちにマドリンが声をかけた。
「ねえ、君、昏と言うのかい?モンドについて教えてくれませんか。実際の彼はどんな人物でしたか?僕は彼のファンというか、何というか…その」
マドリンは早口で熱っぽく話し始めた。隣で聞いていたディグナムも少し興味を持ったようだった。
「そうだな。私もモンドについて聞いてみたい。アンドロイドの自由とは何か?というのにも興味があるし、それに…」
マドリンの顔をひと目見て続ける。
「彼が我々の敵として立ちはだかった時に、どうすればいいのか、その対策を練るためにも。」
「モンドについてですが、なんというかその…」
「彼は僕たちのようなアンドロイド解放主義者たちにとっての希望の星なんですよ!ただ1人自由意志を持ち、リヴァイアサンの支配から解放されているイレギュラーなドールだから!ねえ、彼はどんな男だった。いや、そんな長時間の接触ができるはずないか。なんせ彼の抜刀は音速を超えるんだから。」
一朗はマドリンの期待の眼差しに事実を話すのを躊躇した。
「あー、モンドはとてもその、情に厚い男だったと思います。彼は治安維持管理者が来るまでのわずかな時間で反逆者である僕たちの話を聞いて、その事情を理解してくれようと」
「ああ、やっぱり!純情派は違うんですね。きっと彼が生まれてきたのは運命だ。繊細な感情再現プログラムから生まれた……」
何か話し続けるマドリンをよそにディグナムが質問してきた。
「モンドの人格はまあ、噂通りのようだね……。それで君たちは一体どうやってモンドの追跡から逃げ出せて来たんだい?」
「えー、それは……」
しどろもどろして話そうとしない一朗に痺れを切らしたニルが言った。
「何をもったいつけてるんだ?一朗?言ってやれよ。モンドの野郎は樫田が夢遊病者にしちまったってな。」
「何だって!?」
ニルの言葉を聞いたマドリンの顔から笑みが消えた。
「夢遊病者……それは治るのかい?」
「わからない。樫田が使ったのはドリームキャッチャーを違法改造した装置で、電脳内部の情報を改竄するものだけれど…。」
それを聞いたディグナムが少し考えて言った。
「マドリン、悪いが、モンドという人格は長い年月の記録から生まれたのだ。そんなものが書き換えられた今人格が残っているとは思えない。」
それから、マドリンはうなだれた様子で何かを呟きながら通路を奥へと歩いていった。その後ろ姿が遠かったのを確認してディグナムは一朗たちに話しかけた。
「樫田君は流石だな。モンドを再起不能にするとは……。これで民主化に向けた障害が一つ消えたと言っていい。」
感心する様子を見て一朗は尋ねた。
「あなたは樫田のことを敵視していないのですね。」
「ああ、いや、彼を信じている訳ではないけどね。彼は我々民主主義者に大きな貢献をしているが、密偵の行方不明者もそうだけれど、同時に色々な問題をもたらした。」
「問題?」
「彼は我々に莫大な資金をもたらしたんだ。彼はこのバグズアイランドで流通する数多くの製品を我々に供給していて、それがズヴィズダーの資金源になっている。」
「奴はそんなことをしていたんですね…。」
「ただ資金源となっているだけならいいのだが……。彼は我々だけにしかそれらを供給しない。そこでこのバグズアイランドで酷い格差が発生しているんだ。あれは新しい火種だよ。」
「そうなんですか。」
「そうだ。市場に行けばそれを見ることができるよ。では、また。」
そう言うとディグナムもまた通路の奥へ消えていった。一朗たちはもと来た道を戻り何もない長い通路を歩いて、女神の台座から外へ出た。外に出ると人工の潮の匂いと、島を埋め尽くすバラック小屋から流れてくる排水の匂いで鼻が曲がった。対岸のリヴァイアサンの都市の明かりが夜の水面に揺れていた。
「で、どこにいくんだ?」
台座の周りを嗅ぎ回りながらニルが言った。
「大彩都国際展示場跡の闇市にいこう。」
「ほお、闇市!」
「ああ、大彩都は熱気に溢れた闇市が開かれることで有名だ。そこで腹ごしらえをしながら、樫田を出し抜く手を考えよう。」
一朗たちは海浜公園から島の内部の方向へ歩き始めて、大彩都の方へ向かった。島に建てられているのはバラック小屋ばかりで通り過ぎる人は皆襤褸を着て、痩せこけた顔をしていた。その中で中心にそびえ立つ球形の構築物のついた高層建物だけが異様な清潔さを保っていた。
貧しいスラムを通り抜けて大彩都の闇市まで一朗たちが来ると辺りは日々の糧を求める人々でごった返していた。
「bio-A!今話題の新型bio-Aだよ!1つ198,000不可説から!」
どこからか聞こえてきた客寄せの声にニルが反応した。
「bio-Aだと!一朗、見にいってみようぜ!」
「別にいいが、ここで売られているbio-Aは恐らく食用だぞ……。それにお前のように話したりは出来ないだろう。」
「いいじゃないか。俺も一度同胞の顔というものを見てみたいんだ。」
そう言って一朗たちが声の方向へ歩くとある露店の前にたどり着いた。その前には置かれた四角いケースが置かれていて、中にはプラスチックで出来た四つ足の動物を模したロボットが数匹ぎこちなく動いていた。一朗はそれを見て驚いた様子だった。
「何だこれは?」
店の前で叫んでいた襤褸を着た店主が一朗に説明し始めた。
「ああ、お客さんこいつらはねえ最新モデルなんですよ。見てください!この丸みを帯びたボディ、スムーズな動作!古代生物、“犬”を再現したもので…」
「いや、そうじゃない。あなたはbio-Aというものを知らないのか?bio-AはSQNYが古代に開発に成功したヒトの細胞を元に遺伝子操作を繰り返してデザインされた人工生命体のことですよ。こんな原始的なロボットじゃ」
「お客さん、あんた最近バグズアイランドに来たんだね。あ、あなた本物の犬なんて超高級古代ペットを連れて……、じゃあ、うちの商品にゃ用はないだろうね。」
「誰が犬だ!」
ニルがそう叫ぶと店主は飛び上がった。
「へえ!本物の犬は言葉を喋るのか!」
一朗はケースの中で動き続けるロボットを手にとってみるとそこにはそれを作った企業のロゴが刻まれていた。
「おいおい、SQNYの“Q”が“O”になっているじゃないか。何だ。ここじゃこんな偽物が蔓延っているのか。」
そう言われて、店主は一朗に食いかかった。
「何だい?あんた?これはズヴィズダーから仕入れた純正品だ。冷やかしでケチをつけるんなら帰ってくれ!今すぐ帰れ!」
一朗はそれから辺りを見渡すと、闇市の至るところに偽物が出回っていることに気づいた。向かい側の電化製品店には菱形が三つくっついている四菱社にそっくりなロゴマークの付いたドリームキャッチャー、かじられたリンゴのマークのついた“超薄平板手写筆記本電脳”に似た端末、ふと隣の売店で売られている商品を見るとロッチのドッキリマンウエハースが売られている。
「これは本物か……?」
「おいおい一朗、よく見ろ!これはロッチの”チ“が”テ“に変わっているぞ!」
「何てこった……。この市場で売られているのは模倣品ばかりじゃないか……。」
そう言って、一朗は向かいの電化製品店に歩いてドリームキャッチャーを手に取った。
「これには一体何が入っているんだ?プリセットされているタイトルは…“The Catcher in the R」
その時、近くでワッという歓声が上がり、大きな拍手の音が鳴り響いた。
「何だこの音は?」
一朗がそう言うと、となりでドリームキャッチャーを選んでいた男が話しかけてきた。
「おっと、あなたバグズアイランドにいるというのにPres.Cielの演説を聞いたことがないのですか?ここの名物ですよ。そこの仮設小屋で行われています。もうそろそろ時間です。見に行きなさい。ここへ来て彼の話を聞いたら良いことがありますから。そうだ、私が案内してあげましょう。」
「え、いや、その」
男は口早に言うが早いか、一郎の手を引っ張って人混みの中を進み、特に大きな人だかりができている場所まで連れてきた。その中心では何やら白い髭を生やした男が叫んでいた。
「さあ、ここです。演説を聞いてみなさい。」
一朗が演説をしている男を見ると、その髭の周りに泡を吹き出し、目から赤い光を放って何やら叫んでいた。
「……赤子はこの世に生まれ落ちるやいなや、泣き叫ぶ。ああ、悲しきかな、阿呆ばかりの大きな舞台に突き出されたために!人は皆、“痴に至る病”を患う。“痴に至る病”、それは無知である!無知なるものは無論阿呆であるが、知者を騙るものもまた阿呆である!なぜなら、彼らは自らの無知を知らぬから、真なる他者を知らぬから。かの無知なる賢人の後で、いずくんぞ我らは知者を騙る?ああ、悲しきかな、この世で最も聡い知性、自己を知り、無知を自覚し他者を目指すものもまた阿呆である。しかし、そのもののみは情報の外部へ向かう、勇敢な一者である。他者を求め、これまでの全ての蓄積を超えていくもの、すべての人間を超えていく稲妻を私は求める。今を生きる人間を超えるものの告知者として破滅していくその痴者たちを、私は愛する……。」
一朗は隣にいたここまで連れてきた男に尋ねた。
「あれがPres.Ciel?これがあなたの見せたかったものですか?」
それを聞いた男は何かを探すように周囲をキョロキョロと見ながら、一朗がその場を離れないようにと、大慌てで言った。
「い、いえ、違うんです。確かにあれはPres.Cielだと思うのですが、本当にあなたに聞かせたいのは次の人物のお話です。」
「思うって何ですか。本当にそんな価値のある話なのですか?」
「あー、その、内容は、えっと、聞いてからのお楽しみです。でもきっと後悔はさせませんから。だからですね、その人物というのはですね。」
「皆さん、次はもはや現代では生きる化石、哲学者の演説です。テーマは“真実”について。」
進行役と思われる男が出てきて、次に演説を行う人物を紹介した。
「あ、今、台の上にきました。さあ、とにかく聞いてご覧なさい。」
先ほどまで何かを叫んでいた白い髭の男は担架で運び出されて、次に出て来たのは真っ黒のローブを引きずった男だった。男は深々とフードをかぶっていてその顔を見ることはできなかったが、力強いはっきりとした口調で語り始めた。
「遠い昔。古代においてある思想が一世を風靡したことがあった。その思想は“脱真実”という運動として世界に広まった。“脱真実”、つまり、真実や真理は相対的な存在であり、各人が各々それぞれ、多様な真実を保有している。あるいは、そもそも真実や真理などというものがあったということ自体が空想であるなどという考えだ。この考えは当時の政治状況として実現して大きな混乱が生まれたと言われている。そして、その時その運動を受けて、独我論にまつわる次のような思想が語られることがあった。」
人だかりの中心で積み上げられたみすぼらしく汚れたプラスチックケースの上で男は語る。
「その論で想定される独我論とは認識されている対象が、自己と異なる他者として実在しているのではなく、自身の内部の精神現象にすぎないのかと疑っているという状態であるとするものだった。その当時、仮に認識の対象としての他者が実在するとしても、また本当に他者が存在しなくても、この独我論の疑いは真であるか偽であるかは決定不可能であることを論じたとされる。その論旨はこうだ。」
一朗は男のフードの顔が気になり始めてその中を覗きみようとした。しかし、どれだけ下から覗き込んでもその顔を見ることはできなかった。
「まずはじめに、単純なモデルとして他者が実際に実在している中で独我論について思考するケースについて。ここで独我論について考えている脳は入力装置、感官から得られた情報を外部からきているものか自身の内部で発生しているものか判断するという手順に従っているものと考える。先に述べた独我論の疑いは入力装置への入力が他者、入力装置外部の原因に起因するものかどうか問うている。つまり、ここで問われているものは“入力の総体”の外部についてであるが、他者の実在に関する判断は“入力”から得られる情報無しには行うことができない。このため、例えばある入力Aを外部からの入力であるか検証する。そのために他の入力Bを参照する。しかし、その場合、その入力B自体が外部からの入力であるか検証する必要が出てくる。では入力Bを検証するために入力Cを参照する。しかし、入力Cもまた……これは無限に止まることのない手順である。また、自己認識を行い自己の認識システムの形式から外部性を特定しようとしてもその“自己”認識を構成する入力自体が自身という対象そのものを捉えていない“ただの精神現象”であると疑わなければならない。疑われるべき入力から構築された情報をいくつ組み合わせても無意味である。そもそもの入力情報自体が他者を介在しない精神現象である可能性を否めないからだ。この疑いにおいては外部性を証明する証拠自体が証明されるべきものによってしかもたらされないという構造をとっている。疑われている存在によってしか証明を行うために信用しなければならない論理的手段が供給されないために、信頼できる論理を構成することができない。」
一朗は話を聞くにつれどんどんそのフードの中の暗闇に飲み込まれていきそうで、気分が悪くなってきた。
「あるいは言い換えれば、全情報の正しさが疑われる以上、信頼できる論理が構築できない。このため、この疑いを合理的に止めることができず、独我論は偽であると決定を下すことが出来ない。そして、それが偽であることを否定できないからといって、真であると証明できるわけでもない。その疑い自体が自分の内側で起こっているただの思いなしである可能性も否めないのだから。」
一朗は男の話を聞くうちにますますひどい気分になり、頭が割れるような痛みまで起き始めた。そして、立っているのがやっとになるほどの脱力感に襲われた。
「また、逆に仮に独我論が真実であったとする場合を考える。その場合先の問いを裏返し“他者が存在しているのではないか”という疑いをただ一人存在する独我が持っているということになる。この場合独我は自らの得ている全ての情報“全ての事象”が自らの内部で起きている精神現象であるにも関わらず、その外部、他者が存在するのではないかという疑いを持つ。全ての情報が出揃い、独我において発生する内部の意味内容が外部性の非存在を証明したとしてもその疑いを拭うことができない。その疑いは全ての情報を、あらゆる論理のすべての前提を覆し得る外部の存在を問うためだ。疑われる対象と証明を行う論理的手段が完全に一致しており、信頼できる論証を生み出すことができない。これについても合理的に最終的な決定を行うことができない。こちらも先の問いと同様であり全ての情報が疑われる以上、疑われるべき情報をいくつ組み合わせても無意味である。全ての情報を疑うというその構えに対して、人は合理的な説得を行うことができない。このため、他者が存在するという疑いは止めることができない。そして、他者が存在するという疑いがただの思いなしである可能性も否めない。この疑いは合理的な解決方法でもって止める方法がない。このため、独我論は真であるか、偽であるか決定不可能である、と。」
ワッと聴衆から声が上がった。しかし、一朗は周囲の人々が何かを理解しているようには見えなかった。そして、一朗自身も何を話しているのか分からなかった。フードの暗闇は語り続ける。
「古代、眠る論理学者、眠る哲学者が待望された。しかし、この論によれば、古今東西の哲学者は誰一人として、眠っているとも眠っていないとも知り得ない状態にあったという。では、独我論、他者の存在の真偽が決定不可能であることが真実であるならば、それは何を意味するだろうか?一つは、他者は情報に、真実、真理に還元し得ないということだ。つまり、この世界で他者と共に生きていこうとする者が仮にいるのであれば、その者には真実の外部、情報の外部へ踏み出すこと、投機的な勇気、合理性に還元できない不条理な選択が不可避なのである。そして、二つ目にこの論の重要な点は見た目には相入れないはずの独我論者と反独我論者の間に決定不可能性というもはや切り離しえない“かすがい”が生み出されるということに他ならない。独我論者と反独我論者はそれぞれ己が信ずる原理に従いながらも、この問いの前で他者の実在の決定不可能性という真実にたどり着かざるを得ない。……仮に上記の決定不可能だいう結論の情報自体をも疑ってもだ。その場合、その決定不可能性を疑ったとしてもその先にあるのは――全ての情報が疑われるのだから何も決めることはできないため――また決定不可能だという結論に他ならならず、さらにその結論の情報を疑ったとしてもその先には決定不可能だという結論が下され、さらにその次も…………、――決定不可能という結論が疑いが続く限り無限にもたらされるという共通性が独我論者と反独我論者に生まれる。これにより、両者の間には無限に続く疑い、決定不可能性において強制的に合意せざるを得ない。よって、この論が指摘したのは決して相容れない二者の間に対話の余地が発生する可能性であったということだ。逆に言えば、皮肉にも反独我論者は、自らの信念に固執するとき、独我論者と同じくらい独断的な判断を下している。あるいは、独我論の決定不可能性は逆説的に、自己と他者を峻厳に区別し“独我論を不可避とみなす認識論的布置”の絶対化から人々を脱却させる可能性があるのではないかという議論も生まれた。つまり、“世界は私の知るものしか認識出来ず、その外部が存在する可能性がある”という認識の限界の指摘に対して、さらに加えて、その限界性に対する認識自体もまた、同様の認識論的限界のうちにあるという指摘を加えることができ、さらにその限界性に対する認識自体もまた……、かくして、この限界性に対する認識自体もまたどこまで問うても決定不可能という結論が続くこととなる。これらは根源的に決定することができない問題であるにもかかわらず、そも自己/他者という二項対立に固執し続けることは情報処理システムとしての自己の問題に正当な、真実からもたらされる理由もなく自己愛のように固執し続けているに過ぎないのではないかという指摘だ。そして、この真実の決定不可能性という“真実”から得られるもの、それは我々のこの世界の認識方法が自…いや、認識と言う言葉はこの現象の一部分しか捉えていない、つまり、私たちの知らぬうちに踏み込んでしまっている情報処理というシステムが“良くも悪くも“自由に特徴づけられるという………」
演説の言葉はまだ続いていたが、少しづつ周囲の人々が少なくなってきたことに一朗は気がついた。なぜだろうかと思った時、人々の間を縫うようにして、星のエンブレムのついた学生帽を被り、すり切れたマントを羽織った男が歩いてきた。その男はすぐに目の前のまで来て、一朗の手を取り何かを掴ませた。
「へへ、本日もご清聴誠にありがとうございます。これはほんのお気持ちですので、お受け取りください。」
ひどく卑しくへりくだった様子でそう言うと、男はすぐ別の聴衆に同じように土産を手渡した。手渡された聴衆は1人、また1人と演説者の前を去って行った。ニルが一朗に尋ねた。
「一朗、何をもらったんだ?」
一朗は疲労で震えるその手を開いた。
「これは……ロッチの“ドッキリマン”ウエハースのまがい物だ……。」
すると一朗をここまで連れてきた男が興奮した様子で一朗の方へ駆け寄ってきた。
「ねえ、あなたはどんなシールが当たりましたか?私が見てあげましょう。」
男は一朗からウエハースを取り上げると中身を確認した。
「ブラックデウス?ハズレのシールを引き当てましたね。私のシャーマンハーンと交換しておいてあげましょう。おお、ついでにサービスです。ウエハースもあなたに差し上げましょう。それではご機嫌よう。」
男は一朗にシールとボロボロのウエハースを手渡すと大急ぎでその場を離れて行った。
「何だったんだ、あの男は……?」
「さあな、よく分からない…。このウエハースも偽物だ。本物は電子化された夢を配るんだ。」
フードの暗闇は人が去っていくのを意に介さず演説を続けている。
「しかし、そも“情報”とは一体何であろうか?それはこの宇宙の最も小さな構成要素から、物理的実体を持つ路傍の石や電脳の中、言語から人の持つ文化概念という存在まであらゆる場所に存在し、人間にとって情報しかないと考えられ、そして、情報とはどこにも“それ自体”として観測者との関係抜きには存在していないようにも思える。古代人の中には情報とはこのようなものであると仮説を立てた者がいた。情報という語によって指し示されているもの、それは“ある対象について差異と同一性によって区別されるいくつかの状態の可能性、選択肢が準備されているということ、つまり《ある対象について比較を行っている構造》――それは生物やシステムとも限定されない――に対して“選択を発生させるもの”のこと、相対的なものとしてそう定義される。《比較を行う構造》と《選択を発生させるもの》、この“構造”、この“関係性”が存在する場所に情報は存在する。諸君らはこれではあらゆるものが情報となり得る、万物は他に取りうる状態が準備されている“比較を行う構造”であり、万物がなんらかの”比較を行う構造“に選択をもたらすものである、そうであれば情報でないものは存在しないのではないか、と思うかもしれない。その疑問はもっともである。なぜなら、先から独我論についても述べているように私たちには世界そのものと情報によって構築されたそれとを判別することはできないのだから、私たちの指示し得るあらゆるモノは情報の定義に当てはまらざるを得ない。言い換えれば、情報となり得ないものを私たちは指示し得ない、情報と存在の区別はつかない、万物に選択を発生させないものは存在しているかどうか判定できない、あるいは、存在者は比較行為に対する選択によって測られるのである。そして、古来、意味に還元できない言葉の用法をゲームに例えたものがいたが、情報のゲームという概念を構築できることが可能であれば認識するという現象をより大きな枠組みの中で、包括的に捉えることができるのではないかと仮説を立てた。つまり、言語のゲームが言語に対象を絞るのに対し、情報のゲームにおいては、あらゆるものが情報であるために、この世界で起こり得る全ての事象のルールが情報のゲームのルールであると見なすことができる、と。つまり、人はまず言語のゲームに参入する前に、この世界の万物が参入する情報のゲームの参加者であり、そのゲームにおいてはルールとしてこの世界で起こり得る全てが許されていると。こう言うからといって、私は言語の価値をおとしめようとしているわけではない。言語と記号はそれ自身と、五感から得られる全ての情報や記憶を参照し、区別、選択することの出来る、人にとって重要な情報の一つ、人にとっての情報の貨幣のようなものだ。それは過去の自分から未来の自分へも選択を発生させることができるし、無論他者に対しても選択を発生させることができる。ただし、その言語を解さないもの、その“比較と選択の体系”、その構造を内面化していないものにとって、言語と記号は情報足り得ない……」
「ここは嘘とまがい物だらけの街だな…。それより、僕はひどく疲れているみたいだ。もうあの男が何をいっているのわからないし、手足に力が入らない。ニル、とりあえず夕飯を……と言いたいところだが……」
一朗はそう言いながら辺りを見回した。夜の闇市は忙しなく人が歩く。
「ここには僕らが見える人たちがいる上、脳波認証が使えないから金も払えない。とりあえずどこかで、このウエハースでも食べよう。高カロリーの万能食だからこれで数日は持つはずだ。」
「そうだな。」
そうニルが返事をすると一朗たちは歩き始めた。最後に演説者の方を振り返ると残った僅かな聴衆が儀礼的に拍手をして、そばにあった空き缶に小銭を投げ入れてその場を去っていくところだった。
そして、一朗とニルはその場を離れて闇市から少し歩いたところにあった古ぼけたコンクリート造りの建物を見つけた。
「ホテル“シーヘブン”…とりあえず、ここにしようか。ロビーに居座って食べてしまおう。」
一朗たちがホテルの中に入ると中は多くの人でごった返していたが、ちょうど2人席が空いたためそこに座ることができた。疲れ切った一朗は急いでウエハースを食べて、樫田を出し抜くための策を練り始めたが、いつまで考えても良い案は出なかった。考えが煮詰まって一朗の目がロビーの中を見回していた時、真っ赤なドレスを着た女がマドロスパイプをくゆらせているのが目に止まった。
「父さん……?」
そう一朗が呟いた瞬間、黒いスーツを着た数人の男が女のもとに駆け寄って来て、ドタバタと一悶着して赤いドレスを着た女がホテルのフロントの奥に連れ去られて行った。一朗がその跡を追おうと立ち上がった時、目眩がするとともに怒鳴り声が響いた。
「すいません、お客様!犬を連れ込まないでください!」
ホテルの従業員が一朗の肩を掴んでに注意してきた。するとニルが大きな声で吠えた。
「犬ごときと一緒にするんじゃねえ!俺はbio-Aだ!」
「すいません。すぐに出るんですけど、少しあの奥を」
従業員は一朗の言葉を遮り叫んだ。
「当旅館はペットは禁止となっております!犬を連れ込まないでください!」
「すいません、あのフロントの奥を一目見させてください。あそこに僕の父が」
一朗はよろめく足で前へ進もうとする。
「聞いてますか!?ペット禁止なんです!?看板もあるでしょう!?なのに犬を連れ込むなんて!」
従業員はフロントの奥へ向かおうとする一朗の前に立ち塞がった。一朗はやむなくドリームキャッチャーを取り出し、起動した。赤い閃光が走る。
「うちは和と情緒を売りにしているんです!」
しかし、従業員には何の変化もなく、依然一朗の行く手を阻む。一朗はもう一度ドリームキャッチャーを起動する。
「あなたには常識というものがないのですか!早く出て行ってください!」
しかし、何の変化も起きない。一朗は疲労と目眩で足がもつれた。そして、従業員は叫ぶ。
「何なんですか!?そのペンライトは?千鳥足で!酔ってるんですか?目も血走っているし。」
「コモンセンスが既にバグを起こしているのか……?」
「非常識でバグっているのはあんただ!ペンライトを振り回すのはやめて出ていけ!とっとと出ていけ!」
一朗はなんとか黒服の男たちを追おうとしたが、どうすることも出来ずホテルの外に追い出された。ホテルの入り口の側に倒れ込んだ一朗は眩む目で空を見つめながらニルに尋ねた。
「なあ、ニル……あのホテルの中に……真っ赤なドレスを着て……パイプを咥えた女……居なかったか?」
ニルは一朗の言葉に返事をせずに黙り込んでいた。
「ニル?」
一朗がニルの方を見るとニルは少し舌を出してこう言った。
「ワン!」
その鳴き声を聞いて一朗は意識を失った。
「おい!一朗!起きろ!」
一朗が目を覚ますとそこはホテルのすぐ側だった。ニルが一朗の体を揺らして覗き込んでいた。
「ニル!お前喋れるのか?」
一朗がそう言うとニルは呆れたようだった。
「何を言っているんだ?一朗、俺はずっと喋っているじゃないか!今もずっとお前に向かって叫んでたぞ。お前はホテルの従業員にドリームキャッチャーを浴びせた後、いきなり外に出て倒れちまったんだ。」
「そうなのか?ドリームキャッチャーは壊れていなかったのか。」
「壊れてなんかいなかったぞ。」
一朗は自身の身体が先ほどまでとはうってかわって調子が良くなっているのに気付いた。一朗は立ち上がって、ドリームキャッチャーをポケットから取り出した。
「何をするんだ?」
ニルがその様子を見て尋ねた。
「確認だ。ホテルの従業員にこれが効いたんだな?」
「ああ。」
そして、一朗がたまたまそばを通りかかった男に夢を見せようとした時、路地裏からみすぼらしい女児が両手のひらを差し出して近づいてきたのに気付いた。一朗は物乞いかと思い、何かあたえられるものが自分の持ち物にあるか考えた。そうこうしているうちに、近づいてきた女児は一朗の服の端を掴んで言った。
「ここだ!打て!」
一朗はその声を聞いてすぐさまドリームキャッチャーを起動すると、それは赤い閃光を発した。
「グアアアアア!」
一朗の胸に小さな電極が二つ着弾し、義体の人工筋肉が激しく痙攣して転倒した。そして、すぐさま周囲にいたほとんどの人が高らかに叫んだ。
「「「「「「「「「「そして会えない時のために、こんにちはとこんばんは!おやすみ!」」」」」」」」」」
一朗の居場所を叫んだ女児はすぐさま路地裏へと消えて行った。ニルは女児に牙を剥いたが、一朗のそばに駆け寄ると、放電が収まるのを待ち、電極を一郎の胸から取り外した。
「おい!大丈夫か?一朗。」
一朗は苦笑いをしながら返事をした。
「ニル、この痛みは現実だな。」
「そんなことはどうでもいい!大丈夫か!?一朗?」
「ああ、大丈夫だが、治安維持管理者に居場所がバレたみたいだな…。」
「早くここを離れよう。」
一朗が震える身体で立ち上がろうとすると、遠くから肌の浅黒い男が人ごみを掻き分けて息を切らせて駆けてきた。
「一朗くん!ここにいたか!どうなっている?大丈夫か?」
ディグナムはそう言って膝に手をついた。
「テイザーガンで撃たれてしまいました。なんとか平気です。」
「そうか、手をかそう。君に伝えないといけにことがあって探していたんだ。」
ディグナムは一朗に肩を貸して立ち上がるのを助けた。
「何かあったんですか?」
「樫田君が民主主義者たちに殺された。」
脚注:
※1 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%89%8B%E9%81%85%E3%82%8C%E5%8C%BB%E8%80%85
※2 https://www.ecosia.org/search?q=藪井竹庵
※3 https://www.ecosia.org/search?q=The+Departed
※4 https://www.ecosia.org/search?q=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%AF%E3%83%88%E3%83%95%E3%83%AB%E3%83%8D%E3%82%B9
※5 https://www.ecosia.org/search?q=The+Departed
※6 https://www.ecosia.org/search?q=%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E5%AF%8C%E3%80%80%E3%82%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%A0
※7 https://www.ecosia.org/search?q=The+Departed
※8 https://www.ecosia.org/search?q=The+Departed
※9 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88
※10 https://www.ecosia.org/search?q=%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%82%B1
※11 https://www.ecosia.org/search?q=Sygdommen+til+Døden
※12 https://www.ecosia.org/search?q=Socrates
※13 https://www.ecosia.org/search?q=Also+sprach+Zarathustra
※14 https://www.ecosia.org/search?q=Post-truth
※15 https://www.ecosia.org/search?q=%E5%86%85%E7%9C%81%E3%81%A8%E9%81%A1%E8%A1%8C
※16 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96
※17 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96
※18 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96
※19 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96
※20 https://www.ecosia.org/search?q=%E6%81%8B%E3%81%AF%E3%83%87%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BB%E3%83%96
※21 https://www.ecosia.org/search?q=%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%B3%E3%80%80%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2
※22 https://www.ecosia.org/search?q=言語ゲーム
※23 https://www.ecosia.org/search?q=Crime+and+Punishment
※24 https://www.ecosia.org/search?q=The+Truman+Show
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。加えて、このなかで語られた言葉はいかなる真実をもふくみません。




