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色吉捕物帖 三  作者: 真蛸
軽業師
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 近頃はめっきり客席もまばらで、寝っ転がっているやつ、そのままいびきをかいてるやつまでいる始末だ。そうなると六陸もやる気をなくし、気の抜けた技を見せるばかりだった。演目の時間も、どんどん短くなっていき、いまとなっては出ていったと思ったらもう戻ってくると、周りの演者たちからも迷惑がられている。

 だが誰も文句を言えない。小屋の持ち主で興業主は、いまでは六陸だからだ。

 筋斗を失敗して顔からぐしゃりと落ちる。ところどころから遠慮したような笑いと、まばらな拍手が聞こえるだけだ。ち、こう薄い客ばっかじゃ、やる気も失せる、ってもんだ。まったく、半田もお伊勢も乾の野郎も、さんざ人にたかりやがったくせに、ちいと景気が悪くなったと思ったらとっととどこかへ消えちめえやがった。もっとも連中とのつきあいが途絶えたということには、いくぶんかほっとした部分もある。ことに向こうから去っていってくれたというのは。

 しかし小屋の実入りもなぜかわからないがどんどん少なくなっていってこのままでは立ちいかないところまで来ている。なんとかしなければ、とは六陸の酒で濁った頭でも思うことであった。

 しかし色吉の野郎、おれがいつだかの遺憾を忘れてやって、あんだけ丁寧に挨拶してやったってのに、なんでえあの態度てえどは。きっと乾のデブと半田に絡まれたのをおれのせいにして、根に持ってやがるんだ。けっ、あんな野郎に頼ろうなんておれも焼きが回ったもんだ。

 筋斗を失敗して顔からぐしゃりと落ちる。同じ芸の繰り返しに飽きたのか、それまでぱらぱらと起こっていた拍手さえもなかった。

 六陸は客席に向かっておざなりな一礼をすると、そそくさと舞台を引き上げた。

 ちきしょう、また大受けする芸をやってやる。見る目のねえ見物どももあっと言わせて、おれを見下してた連中を見返してやらあ。楽屋に駆け込むや否や、六陸は冷やのまま酒を立て続けにあおった。


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