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-97- 価値

 価値が決められる評価の基準は曖昧あいまいなものである。苦労して手に入れたガラス製の一個の色づきビー玉は、一人の子供にとってはダイヤモンドより価値があるものかも知れない。

「石崎君、君すまんが来週の土、日さ、月、火に変えてもらえんか」

「ええ~っ! 来週の日曜ですか…?」

 課長の岩辺にそう言われ、課長補佐の石崎は一瞬、躊躇ちゅうちょしてひるんだ。次の日曜は石崎にとっては大事な日で、婚約した女性の家を訪問するという大事な予定があったのである。会社の方針で、去年から課長補佐以上の管理職は月に一度の土、日出勤が義務づけられていて、今月の番は岩辺だったのである。

「ああ、ちょいと野暮用ができてね。いやなに…どうしても! とは云わんが。出来れば! の話だ。…なんなら、水曜も休んでもらってもかまわん。月、火、水と三日も休めりゃおんの字じゃないか」

 上目線の陽気な笑い声で言う岩辺だが、内心では、どうしても次の土、日は休みたかったのだ。岩辺の用向きとは、妻にはゴルフで・・と誤魔化し、その実、ほだされて出来た女性との一泊旅行を目論もくろんでいたのである。石崎にとっての土、日の価値と岩辺の土、日の価値は、双方とも同等に思えた。ところが世の中は上手うまくしたものか悪くしたものかは分からないが、^^ 岩辺の相手と石崎の婚約者は同じ店で働く店員同士で、岩辺の目論見は二人の語らいにより呆気あっけなく表沙汰になってしまったのである。

「あらっ! そうなのっ!! …そりゃ、あなたの方が大事だわよ。私もね、離婚しない人、待ってたって仕方ないから、そろそろ他を探そうかな・・って、思ってたとこだったから…」

 二人の間で価値は決定的に格差を見せた。

 二日後の会社である。

「あっ! 石崎君、アレね。アレ、もういいわ…」

「課長、少し元気がありませんね。どうかされましたか?」

「いや、まあ…」

 岩辺は別れ話を持ちかけられた・・とも言えず、口籠くちごもってぼかした。

 世の中ではやはり、真の価値が価値と評価されることが、よくある。


                    完

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