-96- 拘(こだわ)れば肩こり
立て板に水・・とはよく言うが、物事をスンナリと受け流せば肩がこらなくて済む。それを、ああやこうや・・ああたらこうたら・・どうのこうの・・どうたらこうたら・・と拘れば、肩こりの原因ともなる。
医学界の変人と言われ、肩こり総合研究所を立ち上げた灯台付属病院の手羽先教授は、その因果関係を解明しようと日夜、室内に籠り、研究に没頭していた。
「白滝君、どうだった? こったかね?」
「いや先生、それがつい病みつきになりまして、ゲームに没頭してしまいますと、思ったほど測定の数値は上がらず、それほど肩もこりませんでした…」
「そうか…楽しみと拘りは、また別だというデータかな、ははは…。脳細胞は、やはり楽しめば乳酸を発生させないことになる…」
「そのことは、先生が発表された論文でも結論は出ているかと…」
今年、助手から講師に昇格した白滝は、語るのも恐れ多い・・といった言いようで、呟くように小さく言った。白滝にとって、先生あっての私…とでもいった言いようである。
「うむ…。まあ、地道に進めるとしよう!」
「はい!」
少し前、白滝はライバルの筑寝と講師のポストを争い、勝利したのだった。講師選考に落ちた筑寝は、先輩の開業医の下で働くことにして付属病院から去ったのである。その軋轢の拘りで、実のところ、白滝はかなり肩がこっていた。同じように、手羽先も愛弟子を退職させた失念の拘りから、かなり肩がこっていた。
拘れば肩こりになることは、確かによくある。
完




