-35- 迷う
さて、どうしたものか…と、町川は迷っていた。年の瀬が迫っていたこともあり、この機会を逃しては年内に出来ないかも知れん…と思え、大掃除を始めたまではよかったが、いるものと、いらないものを分別して整理し始めている間に、悩ましい芥とも必要品とも判別がつかない物に遭遇したのである。以前、使用した物で未知との遭遇ではなかったものの、長い間、使っておらず、悩ましいことに変わりはなかった。悩ましい・・とは囲碁のプロ棋士がよく使う言葉だが、囲碁を打ってる訳でもないのに、ピタッ! と町川の手は止まったのだった。さて、どうしたものか…と、町川は両腕を組み、迷うことになった。いや、いやいやいや…ああいう場合には必要となることもあるだろう…と、とりあえず必要品の方へ振り分けた。ところが、しばらく別の物を分別している間に、ふと、その物が目にとまった。いや、もう使うことはないぞ…と、町川はその物を芥の方へと分け変えた。そして、しばらくはそのまま分別作業が続いていった。そうこうするうちに昼近くなり、町川は空腹感に襲われた。まだ、3分の1も片づいていなかったが、まあ、夕方までには終わるだろう…と高を括り、中断することにした。さて! と冷蔵庫を開けると、昨日、焼いた味噌漬け魚のメロ[銀ムツ]が目に入った。これは町川の好物で、温かいご飯だと三膳以上は進む代物だった。片や、これも昨日、コンビニで買っておいたナポリタン・スパゲティの一品があった。さて、どちらを食すか…と町川は、また迷うことになった。大相撲の取り組みではないものの、町川の脳裏の中ではどちらも捨てがたく、両者は、がっぷり四つとなっていた。時間は刻々と過ぎていく。このままでは埒が明かん! と、町川は両者を一端、[水入り+行事預かり]とし、菓子パンを齧りながらミルクを喉に流し込むことで、一番を落着させた。町川の潜在意識は、大掃除を優先していた。町川は、よしっ! と、ついに決断した。迷った出来事はすべて[行事預かり]として、先を急ごう…と。これでは徳川秀忠公の二の舞で、関ヶ原に遅参し、家康公に大目玉を頂戴することになるぞ…と大仰に考えた。
大掃除を再開した町川は分別作業を行事預かりとし、掃除を優先して始めた。水をバケツに入れ、雑巾を出そうとした。ところが以前使った雑巾は、かなり破れていた。いい機会だっ! とばかり、町川は古いタオルを雑巾に下ろすことにした。さて、どれを? と腕を組むと、浴室のタオルと手拭き用のタオルが頭に浮かんだ。どちらもかなり傷んでいたから、そろそろ変えよう…とは思っていた物だった。町川はまた、迷うことになった。これは行事預かりにはできない。手で拭く訳にもいかず結局、ちゃぶ台に偶然あった布巾で拭く破目になった。
ともかく、すべての作業が終わったのは、夜の7時前だった。ともかく終わったことは終わったが、行事預かりの諸事が多過ぎ、新年は開けたが町川の正月はまだきそうにない。迷うことで予定が狂うことは、確かによくある。
完




