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-29- 待ち時間

 いやいやいや、混雑するかも知れん…と坂草は思った。今日は連休明けで、すでに普段通りのラッシュアワーが始まり、人出が多いことが予想された。昨夜までは、まあゆっくりと家を出ればいいか…などと巡っていた坂草だったが、ふと、今朝目覚めたとき、そう思えたのである。だが、そのひらめきは、すでにおそかった。早めに家を出た坂草だったが、予想以上の渋滞で小一時間は車中で待たされる破目におちいったのである。

『ああ、お先真っ暗だ…』

 そう、うつらうつら思いながら坂草は車の運転席で待ち時間を過ごすことになった。小一時間は短いようで結構、長い。坂草がそうなることを事前に予想し、本を読む、あるいはカーステレオを聴く、書類に目を通すとかの待ち時間対策を考えていなかったこともあり、思った以上に長い時間となったのである。

 ようやく車の車列が動き出し、渋滞が解消され始めたとき、坂草はウトウトと半ば眠っていたが、後続車が鳴らすクランクションで思わず飛び起き、立ち上がった拍子に頭を車の天井で、しこたま打ちつけた。シートベルトをはずして眠った油断から、スクッ! とそのまま立ち上がれたのが、さいわいちゅうの不幸だった・・ということになる。クラクションにあわて、坂草は車を発進させようとしたが、シートベルトをめ忘れていることを思い出し、ふたたび慌てながら絞め直すと車を発進させた。

 目的地へ着いたとき、待ち時間は案に相違して油断ならないものだ…と坂草はしみじみ思い至った。待ち時間が気を抜けないのは事実で、そういったことがよくある世の中になったのも事実である。


                    完

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