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-30- 情

 世の中は人と人との情のからみ合いで維持されている・・と言っても過言ではない。その条理も、個人差はあるものの、一定の度合いを超えて一方通行になれば破綻はたんする。

「あなたがその立場なら、どういう気がします?」

 小谷にそう言われ、徳竹は確かに…と思った。だが、次の瞬間、かどが立つ言い方をしているのは、あんただろ? と思えた。まず、上から目線の言い方であることに加え、相手の立場と気持を考えない言い方なのだ。

『ははは…それは言えません。れると具合悪いでしょ? そう思いませんか?』

 自分がその立場ならなら、笑みを浮かべ、柔らかくそう言うがな…と徳竹は思ったが、角が立つことをみ嫌う徳竹は思うに留め、口には出さなかった。

「それはそうですね。いや、すみません」

「数値が今一ですね。反省しているかどうか次回、もう一度、やりましょう」

 そう言われた瞬間、徳竹は、カチン! と頭にきたが、切れずに我慢した。反省するだと? なんという粗雑な言い方だ…と思ったのである。そして、こりゃ駄目だめだな…と思え、他を当たることにした。

 情にほだされる・・これは電子機器の人工知能では認識されない、いや、認識できない未知の分野とされている。情は人の世を構成する重要な部分だが、近年、この重要な情けが失われつつあると徳竹は思っていた。そして、今日また、この現実に直面したのである。

『反省する・・というのは相手の存在を認めていない自分が正しい! と決めつける自己主張だろ? 他に言い方があるでしょ?』

 徳竹は、ふたたび思うに留め、口には出さなかった。

「どうも、有難うございました…」

 そう言い残し、徳竹は椅子を立った。この瞬間、二人のえにしは切れた。情の交錯こうさくが絶たれれば縁も切れるが、人それぞれの想いの違いにより、多様な人間模様が生み出される。日常生活で確かにこんなことは、よくある。 


                    完

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