11 卒業式!
時の経つのは早いもので、3年間の学園生活も終わり、卒業式の日となった。
私にとって運命の日。
芝居とはいえ悪役令嬢としていじめをするのは辛かったが、相手が芝居と分かってくれているのと励ましてくれるのでやってこられたと思う。
辛そうにいじめをしている私に気がついたみんなが、私の為に励ます会を開いてくれた。私は泣いたね。これからもいじめを頑張るからとみんなに誓ったのもいい思い出だ。みんなの優しさをいっぱい感じるとてもいい会だった。
ゲーム攻略の方はみんなの演技力もあって、2年の終わりにはそれぞれがカップル成立の条件をクリアーしていた。
何故分かるかって?それはそれぞれの女性に対する反応が、好感度マックスの時のものだったからね。5組のラブラブカップルがクラスに居るお陰で、3年生になってからの教室はお花畑な空気になってしまった。
イチャイチャしてる本人たちはいいだろうけど、周りの人たちにはイライラがたまりまくった。
私が五人に注意すると直ぐに女性たちは教室でのイチャイチャを彼氏に禁止した。だがそれが男子の心を燃え上がらせたのか、好感度はマックスの筈なのに上がり続けていたように感じた。
もう修道院間違いなしね!
って事で卒業式!
ホールは多くの参列者でいっぱいだった。その中には参加する筈のない国王や第一王子それに国の主要人物が数多くいた。
今回の卒業生には大聖女や大魔法使いなど国が気を使うほどの生徒が5もいたからだ。彼女たちの心象を良くしようとみんな卒業式に参列しているのだ。
好感度は大事だもんね!
そんな中での卒業証書授与。
成績優秀者から卒業証書をもらうので、当然首席の私から。
ステージ上には私の他に、5組のカップルが並んでいる。
ゲームの時も上位成績者はこのメンバーだったな。
先頭の私が卒業証書をもらおうとしたところで最終イベントが始まる。
「ちょっと待ってくれ!みんなに聞いてもらいたい事がある!」
レオニダス王太子様の声がホール中に響く。
国王も含め参列者たちがざわめき出す。
きたきた!
「こいつには卒業証書をもらう資格など無い!」
「この者は学園内で上位貴族の権力を振りかざし!」
「我々の愛する者に危害を加え続け!」
「あまつさえ極刑にしようとした!」
「まさに悪魔の所業!言語道断である!」
おぉ~きっと5人では練習したね。中々決まってていいよ~!
じゃあ最後に断罪のセリフ言っちゃおうかレオニダス王太子様!
「レオニダス王太子の権限によりここで処罰を言いわたす!」
ざわめいていたホールが静まり返る。
レオニダス王太子様は会場を見渡してから私を指差す。
「この者を極刑に処する!」
ホールは静まりかえったままレオニダス王太子様の声の余韻が残っていた。
「えっ?」
私もそうだがソフィアさん、フランチェスカさん、ファルちゃん、クラリッサさん、ルドヴィカ姐さんの5人もポカンとしている。
私はみんなに修道院に行きたいと話していたから、卒業してからそうすると思っていたのだろう。
私はここで修道院送りになる予定だったのだが極刑?ハッピーエンドデータ揃ってる筈なんだけど………。
レオニダス王太子様は権限を行使して極刑に処すとはっきり言葉にした。
全ては決定してしまったのだ。
「あれっ?」
レオニダス王太子様を筆頭に5人が私を取り囲む。
「直ぐに処刑場で刑を執行する!卒業式はその後だ!こっちへ来い!」
私はまだ状況を理解できず呆然と立っている。
「極刑?………今すぐ?」
ゲームではレオニダス王太子様の最終決定で、それぞれのエンドロールが流れ始めるのだ。
5人が力無く立っている私を強引に引っ張って行く。
「大人しくついてこい!この外道が!」
「痛っ!」
「直ぐに終わらせてやる!」
レオニダス王太子様たちに壇上を強引に連行されながら、極刑の言葉が私の頭の中を駆けめぐる。
「極刑………」
決定してしまった現実に涙が溢れてきた。
「なんだ、お前みたいなのでもショックを受けるのか。ざまあみろ!」
「貴様が居なくなると思うと清々するぜ!」
3年間の全てが終わった。
力が入らず立っているのもやっとな私は引っ張られすぎて顔から転んでしまう。
ドタッ!ザザッ!
両手を掴まれてるから手をつけなかった。
「さっさと立て!このクズが!」
顔から血が出てるっぽいけど、心が悲しすぎて痛さを感じなかった。
ソフィアさんたち5人との学園生活は楽しかったなぁ。集まれるのは体育館裏だけだったけど。
ソフィアさんは大聖女になっても優しかった。2人の時は様付けを止めてくれないんだもん。誰かに聞かれたら大変なのに。
フランチェスカさんは彼氏さんの商会を任されるようになって忙しそうだったけど体育館裏には毎日来てくれたなぁ。忙しいんだから休んでねって言ったらここに来てるから頑張れるんだって。体育館裏だよ?何でだろうね。
ファルちゃんには神級魔法も教えちゃったから国からの接待が凄かった。
貴族家の為もあるから頑張って応じてたみたいだけど、直ぐに頭を撫でてと私のところに来た。
可愛くてこっちが癒やされた。
クラリッサさんも新しく開発された能力アップ効果のある食事の為に国からの接待が凄かった。忙しいのに毎日お弁当を作って体育館裏に来てくれた。凄く美味しかったしとっても嬉しかった。
ルドヴィカ姐さんは裏社会のドンにビンタをかまして根性を叩き直しちゃってた。お陰で裏社会は悪で悪を裁く健全な組織になっていった。たまに体育館裏に舎弟の人がルドヴィカ姐さんを探しに来るけど「ここに来るんじゃねぇって言っただろ!」ってぶっ飛ばされてたよ。呼びに来ただけなのに何でだろうね。
みんなともっと一緒に過ごしたかったな。親友ってこんな感じなのかな。
極刑………病気の時よりも痛いのかな
元の世界では病気と闘っていてベッドの上が殆どだった。唯一の楽しみがゲームだったから神様がゲームが現実になった世界に転生させてくれたのかな。
きっとそうだ。
元気な身体は嬉しかったよ。神様ありがとうね。
悪役令嬢だったけど、それでも出来た5人の友だち。
大っぴらに遊ぶ事は出来なかったけど、体育館裏に集まった時は楽しかった。
みんなの笑顔と優しさはずっと忘れないよ。
最後に5人の友だちにお別れを言わなくちゃ。
ふわふわして地面に足が着いてるのかさえ分からない。
私は頑張って後ろを向く。
「あり……が……とう」
言葉になったのか口が動いただけなのか全然分からなかった。
視界は涙で滲んで何も見えなくなっていた。
痛みもよく分からなくなってるから刑を執行されるのにはいいのかもしれない……。
私、何考えてるんだろ。
ふわふわしてなんか暖かくなってきた。
両手を引っ張られていた感覚も感じなくなってる?
なんか息が苦しくなってきた気がする。
もう極刑にかけられてるのかな。
あれっ?誰かが涙を拭いてくれている?
パッチリ!
意識して目を開くと目の前には涙ぐんだソフィアの顔があった。
ソフィアの胸にはさまれて息が出来なかったのか。
「ぐっ………ぐるじぃ」
「もう大丈夫でずがらでぇ~オリビアざまぁぁぁぁ!」
優しさがいっぱい詰まった胸からの脱出。
「ぷはぁ!」
私を抱きしめながらソフィアも泣いていた。
「ソフィア?」
私の声を聞いてホッとしたからか分からないが、ソフィアは私の頬にキスをした。
私が驚いた顔をしていると、泣き笑いだったソフィアはキッとなって顔を上げた。
「貴方たち下がりなさい!」
「オリビア様に近づいたらまたぶん殴るぞ!」
「貴方たち何をしたか分かってるんでしょうね!」
「師匠の敵は私の敵。こんな国滅ぼしてやる!」
「貴方たちとの縁もこれまでね!」
みんな?
私を連行していた男子学生たちはみんな顔を押さえながら転がっていた。
あっ、あのグーの跡はルドヴィカ姐さんのだ。
ゲームにこんなシーンは無かったけど……。
この3年で大聖女にまで成長したソフィアが声を荒げている。
「この国は私に剣を向けた!国王!分かっているのよね!」
大聖女は神のような存在で国民全員から慕われている。そんなに怒鳴ったらみんなどうしていいか分からなくなっちゃうよソフィア。
この卒業式には国王と第一王子それと国の首脳陣が大勢参列しているが、ホール中が萎縮している。
「オリビア様は私の全てよ!その方に対するこの仕打ち!覚悟は出来ているんでしょうね!」
ファルちゃんは火、土、闇の三つの神級魔法を空中に浮かべている。すっごく練習したもんね、偉いよファルちゃん。でもみんなが怖がってるからもう少し小さくしてあげてもいいかもよ。
「こんな国、滅ぼしてやる!」
レオニダス王太子たち5人の男子生徒は自分たちが原因なのは分かるが、愛する者をいじめていた女を断罪しただけなのに何故こうなってしまったのか全く分からず、ただただ震えていた。
国王が前に出て跪く。
「大聖女ソフィア様、大商人フランチェスカ殿、大魔法使いファルファラ殿、大料理人クラリッサ殿、裏社会のビッグボス・ルドヴィカ殿。このたびはバカ者どもが大変申し訳なかった」
国王が迷わず頭を下げた。
みんな私の事はよく知らないみたいだけど、ソフィアたちの事はよく知っているのね。そりゃそうか。
伝説の大聖女。全ての商人の頂点に立つ大商人。歴代最高の実力を持つ大魔法使い。料理で能力をアップする新技術を開発した大料理人。初めて裏社会をまとめ上げたビッグボス。
その5人が激怒したのだ。誰もが国の存続を心配していた。
「5人の男子生徒たちはこの場を持って廃嫡とするが、それで許してもらえないだろうか」
「無理ね、オリビア様にこんな事をするような国にはもう居たくないわ。私たちはオリビア様と共にこの国を出て行きます!」
「そこをなんとか大聖女ソフィア様。学園内でのその者の悪行は私も聞いているのですが何故こんな者を庇われるのですか?」
女子5人は顔を見あわせて頷いた。
「「「「「私たちの恩人だからですよ!」」」」」
「私が大聖女にまでなれたのはオリビア様の助言のお陰なのです」
「私が商人会を一つにまとめられたのもオリビア様のお陰です」
「私に魔法を教えてくれたのは師匠!」
「料理での新技術をアドバイスしてくださったのもオリビア様です」
「アタイが裏社会をまとめられたのもオリビア様のお陰だね!」
今明かされる真実にホールは静まり返っていた。
「そして何よりも、オリビア様は最初から嫌われ役を演じていらっしゃったのです」
「いじめは私たちと協力して行った芝居だったんだよ。オリビア様には必要みたいだったからみんな協力したんだ」
「オリ……ビアは何故その様な事をしたのだ?」
「………」
ソフィアの表情が厳しくなる。
「オリビア様、少々拝借いたします」
そう小声で言うと、ソフィアは私の懐から扇子を抜き取った。
一度開いた扇子を閉じて、国王を指す。
パチン!
ビシッ!!
「国王よ!先ほどからオリビア様をこんな者とか呼び捨てとか無礼である!オリビア様と呼びなさい!」
みんなと一緒だからだいぶ頭が落ち着いて来たけど、今ソフィアが国王様に無礼者って言っちゃったけど私は様なんてついて無くても気にしないよ?そこに跪いてるの国王様だよね?
「大聖女ソフィア様並びにオリビア様、大変失礼いたしました」
跪いたままの国王が後ろの騎士に視線を送ると、男子5人が速攻で連行されていった。
ゲームのメインキャラなんだけど……。
「それでオリビア様は今後のようにされたいのですか?」
国王様に聞かれた私は、3年間の願いを伝える。
「修道院に入りたいわ」
「修道院?……分かりました」
国王は疑問だらけの様子だったが、国に居てくれるのだからと質問を飲み込んですぐに手配してくれた。
私の念願が叶ったからなのだろう、ソフィアたち5人は嬉しそうに微笑んでくれていた。
大騒ぎとなった卒業式は無事終了した。
私が修道院に入るなら友だち5人もこの国に残るから、国王や首脳陣たちは胸をなで下ろしていたね。
ふと思ったんだけど、国王様に希望を聞かれた時、修道院じゃなくても大丈夫だったのかもしれない。
いや贅沢は言うまい。ゆっくり修道院で過ごせるんだから良しとしておこう。
その後、国の要職に就いて権力を手に入れたソフィアだち5人は、何故か国の中心を修道院の隣に置き私とお茶ばかり飲んでいる。
国の仕事は?私のせいなのか?
暫くするとソフィアたちと一緒に第一王子がやって来るようになった。
いつものように修道院の庭でみんなとお茶をする。
ソフィアたちはいいのだが何故に第一王子が来ている?
ゲームに顔は出てこなかったし卒業式の時も余裕が無くて気がつかなかったけど、笑顔が優しそうで中々のイケメンだわ。
ゲーム内ではその後国王に就任したと語られてたけど、もう国王になったのかな?
第一王子がチラチラ見てる?
………前髪変じゃないよね。
私が髪型や服装を気にしていると、ソフィアたちが嬉しそうに微笑んでいた。
なんだ?この雰囲気は………なんか恥ずかしいぞ。
「国王に就任する話しが来たのだが、私に妃がいないのが問題になってしまってね、いやぁ~困った困った」
なんだ?目が泳いでるうえに棒読みの下手な演技は。
こんなイケメンなら選び放題だと思うんだけど。何故ここでその話しをする。
演技?…………えっ?
やっぱりソフィアたち5人はニヤニヤしている。
………解せぬ。
おしまい♡




