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魔王魔法と英雄格闘技でダークエルフを躾ける(?)

「悪い悪い、でも、メサがかわいいからいけないんだぞ? かわいいダークエルフはつい、いぢめたくなるからな? 俺が出会ったダークエルフの中で、おまえが文句なしにナンバーワンのかわいさだ。マジかわいい」


「う、うるさいうるさい! かわいいとか連呼するな! おまえのような外道にかわいいと言われても嬉しくもなんとも思わんわ!」


 とかなんとか言いつつメサは頬を赤らめている。

 耳も、ピコピコと照れているように動いていた。


 どうやら、こいつは――チョロインのようだ。

 知らない人のために解説するとチョロインとはチョロいヒロインの略である。


 まぁ、敵側だからヒロインとは言えないかもしれないが、かわいいので問題ない。

 世界最強の俺は、心がとっても広いのだ。敵だろうと、どんな種族だろうとウェルカム。


「俺の前では自分をさらけ出していいんだぞ? あの催眠魔法はおまえの心の奥底に秘められた願望や欲求を素直に表現することができるものだ。だから、おまえは、本当はお兄ちゃん的な存在に甘えたいんだ」


 まぁ、おぢさんでもオッケーだったみたいだが。

 とにかく、年上に甘えたい願望があるのは間違いない。


「で、デタラメを言うなっ! わ、我にそんな願望なんてありはせぬわ!」


 メサは怒ったようにエルフ耳を逆立てて、抗議してくる。そんなふうに強がられると、年上のお兄さん(あるいは変なおぢさん)としては屈服させてやりたくなる。


「ほぉら、かわいいメサちゃん。俺と楽しいことをしようか~」


 俺は両手をワキワキさせながら、メサに迫る。


「く、来るなぁーーーーーー!」


 メサは怒声を発しながら、両手からバンバン魔法矢を放ってきた。怒りだけでなく恐怖も人のリミッターを外すキッカケになりうるのだ。

 そんな凶悪な威力と速度の攻撃を、俺はワキワキさせた両手で『吸収』していく。


「なぁっ――!?」


 これまでの弾いたり相殺するとは違う次元の魔法に、メサは驚愕の声を上げた。


「驚いたか? これは『魔法吸収』の魔法だ。これを使うと相手の魔法を防ぐだけでなく自分の魔力回復に役立てることができる」


「そ、それは魔王様が使う魔法ではないかっ!?」


 そのとおり。過去百回魔王を倒すうちに、俺は、本来、魔王しか使えないはずの『魔王魔法』をも習得しているのだ。


 そりゃ、最初の何回かは原理がまるでわからなかったが――何度も対戦しているうちに、なんとなく習得できたのである。


「俺は史上最強の魔法使いだからな。おまえがどんなに魔法を鍛えようとも俺の域に到達することは不可能だぞ?」


「くっ――! な、ならっ、この手でおまえの息の根を止めるまでだ!」


 あろうことかメサは俺に向かって、素手で襲いかかってきた。

 爪を立てて、俺の首を掻っ切るつもりらしい。エルフらしからぬ戦い方だ。


「ああ、あと俺は魔剣のエキスパートでもあるが――もちろん、素手だって、最強レベルだ」


 剣を振るうにあたって、肉体の鍛錬は不可欠。

 剣術ほど熱心にはやっていないが、格闘技だって修練を積んでいる。


「ちょいなっ」


 俺はメサの左腕を掴むと、太極拳と合気道を融合したような動きで投げた。


「ぬぁあっ!?」


 メサは、背中から盛大に地面に叩きつけられることになる。

 その表情は、なにが起こったかわからないといった感じだ。


「俺はこれまで百回世界を救ううちに、ありとあらゆるジョブを試してきた。あらゆる格闘技や武道、古武術を習得済だ」


 まぁ、魔法と剣ほどは極め尽くしていないが。


「と、いうわけで――おまえは、俺に対してどんな分野でも敵わない。弓矢だって俺は英雄クラスを余裕で超えてるしな」


「…………くっ、殺せ……」


 俺との圧倒的な力の差を見せつけられて――メサは、忌々しげに吐き捨てる。


「なんだおまえ、オークに捕まった女騎士みたいな奴だな……」

「おまえなぞ生殖行為しか頭にないオークみたいなものだろう!?」


 これは心外だ。


「違うぞ。俺は清く正しく美しいジェントルマンだ。かわいいものを愛でたりおちょくったりすることは好きだが、それ以上の行為は望んでいない。そうだな、ペットの猫をかわいがるのと同じ感覚だ」


「わ、我をペット扱いするとはっ、なんたる屈辱……」

「いや、最大級の賛辞だぞ? 俺は猫とか犬とか大好きだからな。エルフも好きだけど。というわけでペットにしてやってもいいぞ?」


 こうやって仰向けになってなにもかもを諦めた無防備なダークエルフを見ると、保護欲が強くなる。マジでペットにしたい。


「……生き恥をさらすぐらいなら、我は自ら死を選ぶ! 誇り高きダークエルフを舐めるなっ」

「その気位の高いところ、ますます気に入ったぞ。なかなか懐かない猫みたいだしな」


「ぐぬぅ、だから我をペット扱いするなと言っておろうがっ!」


 メサは右手に魔力を発動させると、俺の喉笛を狙って魔法矢を放ってきた。

 完全にこちらの不意を突いたつもりだろうが――。


「うん、無駄だ」


 俺が目でメサの動きを捉えたときには――すでに防御魔法が発動している。

 魔法矢は、俺の喉に触れる前に霧消していた。


「くっ、なんという反応速度と魔法展開だ……」

「まったく、油断も隙もあったもんじゃないな」


 これはデレるまで、ずいぶんと時間がかかるだろう。


 催眠魔法を使えばいつでもデレさせることはできるのだが、正気の状態でも俺への好感度MAXに持っていきたいところだ。


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