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結星門の巫女  作者: 安田座


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28/29

28:黒戦士との面談

 

 わたしとふみちゃんは、闇の聖殿探しからの帰還後すぐに結星門を抜けて帰宅した。

 田中さんは、投降した黒戦士さんを待つことになった。彼は、ほぼ駐在員みたいになっている気がするなぁ。


 神殿内の取り調べ室みたいな部屋。

 テーブルを挟んで黒戦士さんと田中さんが向き合っている。他には誰も居ません。大丈夫?

「俺は、勝った方に就きたいと思っている」

 黒戦士は、田中さんにそう告げた。

「それは、現状こちらに勝算があるということですか?」

「さてな、だが、向こうに居ると戦わねばならない。

 こちらに居れば、向こうが勝った時にも捕虜として解放される。

 どちらが勝っても生き残れる」

「なるほど、で、それ本気で言ってます?」

「半分はな」

「では、もう半分は?」

「あの女が気に入った」

「どの娘ですか?」

 田中さん、どういう聞き方よ。

「巫女だ」

 え? 流れ的にガンドレルちゃんかと……。

「もう一度聞きます。本当のこと話す気あります?」

「本当のことを答えてはいるが、全部ではないかもな」

「であれば、不便な状況が続きますよ」

「今は、それでもかまわないさ。

 ただ、巫女と会う機会を設けてもらえないか?」

「自爆しない保証が取れないと近づけられないと思います。

 確かに、先日はそうしなかったのはわかります。

 ですが、既に事態は私の手を離れていますので、責任を取りたくない者たちが許可を出してくれるとは思えないのです」

「自爆といっても他者を巻き込めるほどではないぞ、結果を見たのならわかると思うが頭が吹っ飛んでるくらいで、上半身も残っていただろう?

 飛び散る骨や肉の破片にもさほど殺傷能力は無いと思うが」

「そういう問題では……ふむ、防弾ガラス越しならあるいは……いや、それよりも……」

 田中さんは、少し考えを巡らせた。

「じゃぁ、その責任を取りたくないやつに合わせてくれ、と言ってもそんなやつはもっと会ってくれんか」

「ははは、まぁそうです。 確認ですが、話をするだけではだめですか?」

「どういうことだ? いや、地球ではできるか……」

「会うのは無理でも話をする方法はあるということです」

 田中さんは、席を立つと部屋を出ていった。



 今わたしは、神殿のわたしの私室に居ます。 で、テーブルにノートパソコンが置かれていてその前に座っているという状況です。ノートパソコンからはケーブルが部屋の外まで続いています。

 これから会議するシステムを使うのだ。ちなみにわたしだってオンラインの授業で使ったことはありますぜ。ちょっと画面の雰囲気が違うけど。

 それと、カメラには映らない位置に田中さんが立っています。

 おっと、始まった?

 映った相手は先日お世話になった黒戦士さんだ。 彼と会話をするように田中さんにお願いされたので特に驚くことでは無いです。 でも、なんで?というのは教えてくれていません。

 ただ、この方法は説明するよりいきなりやった方が早いと思ったそうです。

 黒戦士さんは兜を外していているのですが、素顔を初めて見たけど地球人とどこが違うかわかりません。

「こんにちは。

 先日は、ガンドレルちゃんを助けてくれてありがとうございました」

 お礼込みで挨拶してみる。

「巫女さんが見える。今はここまで綺麗な画面で出来る様になったのだな。すごいな未来の技術だ」

 ん?今はって?

「ははは、そうですよね。 わたしも未だになんかすごいと思ってますから」

 これは本心、わたしってパソコンどころかスマホもたぶん使いこなせてない。

「いきなりだが、あんたは俺を覚えていないか?」

 え?どういうこと?

「先日のこと……では無いですよね?

 ごめんなさい」

 知らないと思う。だって別な星の人で、しかも敵なのよ?でも、何か意図があるよね?

「まぁ、そうだろうな。

 俺は、七つの時に川で行方不明になった男だよ。

 あんたとはクラスも違うどころか話もしたことがなかった、それでも俺はあんたに憧れていた。

 海で君を見た時にすぐにわかったよ高橋舞子さん」

「え? あの? はい? あ、ごめんなさい、あなたのこと覚えてなくて……そして……ありがとうございます」

 その時、田中さんが、インカムから今の情報について調べる様に指示を出していた。その際にやはり地球人でしたみたいにも伝えてた。

「いや、言いたかっただけだから気にしなくていい。

 それに君に何かをお願いするとかは無いから安心して欲しい。

 君は俺に地球への道筋を示してくれた。それで十分だ」

「っていうか、地球人……なのですか?」

 ちょっと混乱中、わたしには情報量が多すぎる。

「そう言ったつもりだが?」

「あ、あぁ、えぇと……それでも、生きていてくれてありがとうございます」

 涙が溢れてきた。なんだろう、これまで生死のともなう場面を見てきた、それは慣れるものでは無いのだろうけど、やはり彼の境遇には心がざわめく。

「すまん先に話しておいて申し訳ないが、今は落ち着いてくれないか」

「はい、すいません」

 さっき未来って言ったのって自分が地球に存在した時間からなんだ。十数年前ならパソコンについても多少の知識は持っているのかも。

 田中さんがわたしてくれたティッシュペーパーで涙を拭ってから画面に向かう。

「話を続けるぞ。

 あの日、川で溺れた俺は、気づけば知らない家に居た。

 助けてくれたであろう人物やその者達の使う言葉だけでなく全てがわからなかった。

 ただ、大気が体に合わないのはすぐにわかった。息ができないとか苦しいとかでは無いが、なんと言うか気持ち悪かった。

 そうだ、俺は星を移動したらしい。

 その後、俺を救ってくれた者たちへの感謝、その思いで戦士となった。

 あとは適当に想像してくれ。今は必要ない。

 話を少し戻すが、星を移動したのは、おそらく”門”があるのだと思う。

 俺が発見された場所に何度か訪れてみた。ただの森の中であるのに、干からびた魚が落ちていたり、雨も降っていないのに地面が濡れている時があった。

 あるタイミングで川の中と繋がるのだと想像したが、結局それを見つけることはできていない」

「帰りたかったのですね」

「ああ、もちろんだ」

「そして、今更ですけど思い出しました。それでもよくは覚えて無いですけど、先生たちが説明していたことがあったと思います」

「小学生の頃の記憶なんてそんなレベルだろう。だけど、思い出してくれてありがとう」

 今、黒戦士さんが少し笑ったような気がした。



 わたしが黒戦士さんとモニター越しの話をしている頃の砦。

 今、指揮官室には颯矢さんとランデット様の二人が居ます。

「一度仕掛けてみてもいいか?」

 颯矢さんがデスクに座るランデット様に進言する。

「焦るな、あの三人でさえたった一人を相手に深手を負ったのだぞ。

 門から離れた部隊が全部とは到底思えない、抜け穴をいくつか確認してはいるがやはり中の確認はできない。

 封印神殿内にあとどれほどの手練れが居るかも分からない状況なんだ」

「それを知るためだ。今の俺が仕掛ければ、そういうのが出てくるしかないだろう?

 動きが見れればすぐに戻ってくる。無ければ、俺がマイサの代わりをやる」

「この件はドレッド様との会話で決着しただろう?

 向こうが仕掛けてこないのは、あいつが倒された状況が不明なためだ。

 だから、最強レベルの駒を失い、うかつに動くのを躊躇しているという想定が最有力だ。

 こちらの仕掛けがお前一人だと、戦力の推測によっては藪蛇になる可能性もある」

「そんなことは承知している。

 だが、時間を掛けていると敵の増援が来てしまうのではないのか?

 そのための作戦を仕掛けるはずだったのだろ?」

「状況が変わった。 それも含めて神殿で策を練っているはずだ。

 頼む、今は我慢してくれ」

「しかし……」

「お前の焦りは、巫女様の傍を離れているためか?」

「焦ってなどいないさ。

 だが、彼女を守るための最善を考えている」

「お前なぁ……わかったよ。

 お前は神殿に戻れ、そして、巫女様の警護を再会しろ。 勝手に動かれる方がよっぽど困るしな」

「兄貴面しやがって」

「さっきも言った様に敵は攻めて来ない。

 神殿の策を待つ、だからここには戦力は必要無い。それだけだ。

 早く行け、代わりの副官はすぐに見つけておく」

「すまない。 状況がわかったら戻ってくる」

 颯矢さんは、言うなり出口へ向かった。



 わたしは画面越しに見える者を今はもう敵と認識していなかった。それよりも旧友に会った様な感じを覚えていたのかもしれない。

「お名前を聞いてもいいですか?」

「ヤマモト、タカヤだ」

「ありがとうございます。

 高橋舞子です。ご存知の様ですけど……」

「ああ、君のことを覚えていてよかった。

 では、俺の知っている星の話をしようか」

 黒戦士さんの表情が心なしか険しくなった気がします。

「ぜひお願いします。

 でも、どうして話す気に?」

 田中さんが待ってたと言う感じで割り込んできた。そのまま席を譲る。

「巫女さんが、俺が覚えている彼女だと確信できた。

 この場を用意してくれたことへの礼だ」

「なるほど」

「さて、星の名前はガイゼと言う。文明はこちらの星と似たようなもんだ。地球の様な技術の発展はほぼ無い。たぶん気づいてると思うが、エネルギーの利用が非常に困難な様だ。

 数百年前、突然に星全体の自然環境が悪化し始めたらしい。当然理由を知る方法は無い。

 そのあたりでこの星と繋がる門が発見された。

 そこで攻め込んだんだろう。

 あの星には人間と数は少ないがもう一つの種族が存在している。

 その種族は、俺の知識では爬虫類的と思える。

 そいつらは人間よりはるかに能力が高く、星を支配していた。当然人間種は支配される側さ。

 だからこの星の人間と対話など考えもせず、ただ人間を兵士として送り込んでいた。

 そんな中、数十年前に人を強化する場所が発見された。

 そこで強化された者を、黒戦士、白戦士と呼んでいる。

 黒戦士は人間、白戦士は爬虫類人で素の能力が高い上に能力の向上比も大きい。

 これまでの敗北の要因、聖騎士の存在に対抗できると考えられている。

 環境悪化が進んだこともあり今回は必勝を期して臨むため白戦士の参戦を決めた。

 そして、今の進軍はまだ下準備だ。

 戦力などの情報収集もあるが、一番は混乱させることが目的だ。

 次に門が開くと白戦士も多く来る。一気に攻め落とすつもりでな。

 こんなんでいいか?」

「ありがとうございます。

 質問をしても?」

「どうぞ」

「白戦士は、爬虫類人と言っていましたが、こちらに居た一人はどういう立場なのです?」

「あの人は、簡単に言うと良い人ってやつだろう。

 他の白戦士と違って人間にも普通に接する様なやつだった。

 だから、先行させられたんだろうと勝手に思っている」

「あぁなるほど、爬虫類人たちの中にもいろいろありそうですね」

「そうなんだろうと思う」

「次に、あなた方はなんで自爆するのですか?」

「捕まれば死んだ方がましだと刷り込まれてるんだ。俺は巫女さんを見た時にそんなのは消えた」

「自爆は言葉通りですが自分の意思でするのですよね?」

「ああ」

「ふいに間違って自爆したりは無いのですか?」

「よくは知らないが、意識してなんていうか力をそこに集める必要がある。だからそうそう無いんじゃないか」

「その力、不思議なんですよね」

「俺も黒戦士や白戦士の力は不思議だと思うが聖騎士さんたちも同じ様な力を使うよな?」

「そうですね。 確かにまったくわかりません」

「ただ、白戦士は外部から爆発させる方法を知っている。

 もっとも、実力差があり過ぎて、そんなことしなくてもただ斬れば済むから、脅しにでも利用するのだろう」

「なるほど。

 後日またお聞きすることもあるかと思いますが、色々お話いただきましたので、こちらも誠意を示したいと思います。

 的外れだったら申し訳ありません」

「聞かせてもらおう」

「数日前に黒戦士が一人地球に侵入してきました。

 なんとか捕らえることに成功しまして、いろいろと調べさせてもらったのですが、その際に爆弾を取り除く方法も確立しています。

 地球側へお連れする条件にもなりますが、まずは爆弾を処理させていただけないでしょうか?

 そのうえでご希望があればご家族にもお引き合わせできると思います。

 既に、所在地も特定しておりますので」

 え?あの人ずっと寝てるって……う~ん、まぁいいけどさ。

「そんなことができるのか?

 地球、どれほどに進歩したのだ。

 他の条件は?」

「まずは健康診断ですかね。未知のウィルス等を持ち込むわけには行きませんので。

 もっとも、先行者には特に異常はありませんでしたけどね。

 そして教育、現在の地球の常識や法律などなどもそうですが、年齢なりの知識をそれなりに学習していただきます。

 その間、向こうの話をもっとお聞きすると思います。

 それと、ご家族側の同意というか納得です。こればっかりは聞いてみないとですけど、現状を説明するわけには行きませんので、適当な設定を作りますが、あなたには完璧に覚えていただく必要があります」

 おお、すばらしい。ちゃんと考えてるのね。

「なるほど、了解した。そして感謝する。

では、早速進めていただいてもいいか?」

「もちろんです。

 では、神殿長にも相談いたしますので、今しばらくお待ち下さい。

 地球人と確認できた以上、強行することもできますが筋は通しておきませんとね」

「あんたに任せるよ。

 名前を教えてもらっても?」

「田中です。 軍属ですが、今は階級等はご容赦を」

「ありがとう田中さん」

「あの、またお話ししましょうね」

 田中さんが席を譲ってくれたので月並みで申し訳ないけど挨拶をば。

「ありがとう高橋さん」

 こんな感じでパソコン会議は終わった。


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