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74話 寄進

あけましておめでとうございます。本年も尼子の姫をよろしくお願いします。


 永禄3年(1560年)9月 出雲 月山富田城



「ふぅ、どうやら今年の凶作は免れたみたいだね」


「収穫は、ほぼ一昨年並みの水準に戻りそうですので良かったですね」


「うん、これで一安心できるよ」



 一昨年並みの収穫量ということは、出雲で約22万石まで回復するということだ。他の尼子領内は、もう少し上積みが見込めるかも知れませんね。一昨年の春の時点での尼子の石高は約64万石でしたが、それから領土は増えているのです。計算してみますと、

 出雲22万5千石、玉姫式で+0.5。伯耆16万2千石、玉姫式が完全に浸透して+2.7。美作18万7千石、後藤の領地を併呑して+4.1。備中8万6千石、三村配下の領地を除く高梁川以東を加えて+3.8。備後5万3千石、玉姫式で+0.8。

 石見4万8千石、玉姫式で+0.5。隠岐7千石、+0.1。それに、新規の領地である因幡が9万8千石。備前は21万2千石。


 これらを合わせれば、約108万石。およよ? あっさりと100万石を突破してしまいましたね。


 来年以降は、既存の領地である出雲や伯耆とかでは玉姫式での上がり目は、ほぼ頭打ちでしょうか? 因幡や備前に期待しましょう。あとは、新田開発ですね。

 飢饉によって尼子領内には、最終的に流民が5千人以上は流入してきましたので、その流民を使って新田開発をするのです。自分たちの食べる米は自分たちで作ってもらいましょう。という、人的資源の有効活用ともいいます。


 これは、もしかしたら現時点では、尼子が一番の大大名ですかね? 毛利も70万か頑張って80万石程度ですしね。四国と畿内に根を張る三好も関東の北条も、直接の支配地は100万石には届いていないと思われます。多分ですけど。

 三好が支配する国の表面上の石高を合わせれば、100万石は優に超えるのですけど、三好の支配する畿内は寺社領とかが多すぎるのです。複雑に支配権も入り組んでますし、わけわかめな状態なのが畿内という土地なのであります。


 大友が豊前、豊後、筑前、筑後、肥前と北肥後を完全に掌握していれば、余裕で100万石を超えて尼子よりも大きかったのですが、豊前の北半分と筑前の半分ぐらいは、毛利方の国人領主に押さえられていますしね。


 オマケに肥前の小覇王である龍造寺も、大友に従っているとは言い難い状況なのです。あー、でも、それらを踏まえても少しだけ、大友のほうが石高は上かも知れませんね。


 でも、確実に、尼子が日の本で五本の指に入る大大名であるということについては、議論の余地はないでしょうね。



「最低でも、あと二年か三年は領内の開発と整備に力を注ぎたいところだよね」


「近年は戦が多かったですもんね」


「因幡と備前も取っちゃったしね」



 そのおかげで、尼子の奉行衆と官僚機構は阿鼻叫喚の悲鳴を上げております。まあ、不可抗力であったとしても、取ってしまったモノのの面倒は見ないといけませんので。

 でも、この局面は尼子の役人を官僚機構を、育て上げるチャンスでもあるのですよね。ピンチはチャンス。経験に勝るナントカはなしとかの格言もありますしね。


 百聞は一見に如かず。百見は一考に如かず。百考は一行に如かず。百行は一果に如かず。聞いて見て考えて行動して、初めて良い結果を出せるのです。机上の空論、畳の上の水練ではダメなのですから。

 たろさも源五郎兄ぃも鹿之介も、ここに叩きこんだので毎日絞られています。そのなんだ、まあ、頑張れ。私も頑張る。でも、この経験が糧となり、将来は人の上に立つに相応しい、立派な武将になっていることでしょう。



「おひいさまが、考え無しに兵を動かすからですよ」


「私の所為じゃないもん!」



 私から戦は仕掛けてませんよ? 相手が勝手に戦を仕掛けてきたのですから。よって、私が戦に巻き込まれた哀れな被害者なのは、誰が見ても誰がどう言おうとも、確定的に明らかなのであります。

 私は領土防衛の為に、仕方なく、本当に仕方なく、戦っただけなのですから。その結果、私が知らないうちに領土が勝手に増えていただけなのです。つまり、アイアム無罪であります!



「はいはい。おひいさまは悪くありませんとも」



 ぐぬぬ、春姉の言葉には、心がこもってない気がするのですけど。それに、『はい』は、一回が正しい言葉の使い方だと思います。



「そういえば、杵築大社のおひいさま宛てに寄進が届いてましたよ」


「寄進? 大名である私にじゃなくて、巫女である私にたいして寄進ってこと?」



 ふーん、わざわざ春姉が報告するぐらいですから、50貫とか100貫とかそこそこ大口の寄進でもあったのでしょうね。でも、杵築大社ならば、わざわざ私を名指ししなくても寄進できるのに、どういうことでしょうか?

 巫女名義の寄進の多さを競って、奉納の舞の位置や順番を決めるなんてイベントをやった記憶はないのですが…… でも、この案は金儲けには良さげな気もしますね! まあ、そんな阿漕な商売はやらないけどさ。



「はい、尾張の織田上総介殿の名義で、5千貫の寄進がありました」


「ブーーーッ!!」


「おひいさま、汚いですってば!」


「な、なんで、信長が5千貫も寄越すのさ!」


「今川との戦において、おひいさまが織田殿に知恵を授けたお礼ではないでしょうか?」



 知恵を授けたね…… あー、確かに言ったさ、確かにね。でも、アレが授けたことになるのか?



「私はただひと言、桶狭間って言っただけじゃん」


「その桶狭間で今川義元を討ち取ったのですから、おひいさまの手柄でもあると思って織田殿は寄進したのでしょうね」



 まあ、ヒントにはなったかも知れないけどさぁ。そこから、必死になって知恵を振り絞って、その結果で戦に勝てたのだから、この成果は信長の実績だと思うのですがね。まさか、私が信長からお礼を貰うことになるとは思いもしなかったよ。



「桶狭間 たったひとことで 五千貫」


「濡れ手で粟の ぼろ儲けなり」



 むむむ、ちゃんと私に合わせてついてくるとは、なかなか春姉もやりますね。しかし、月山富田城の私にではなくて、巫女である杵築大社の私に宛ててお礼をするだなんて、信長も大概捻くれていますよね。

 まあ、世間体もありますので、これはこれで仕方がなかったのかも知れません。尾張の織田が出雲の尼子に対して、意味もなく5千貫もの大金をあげるだなんて、おかしいって、うがった見方をするのが世間というモノですし。


 その点でいうと、杵築大社に寄進をするのならば、信心深い篤実な人間。篤志家ということで宗教を隠れ蓑にして、ある程度は世間の目も誤魔化せますしね。いやー、宗教って便利ですね!



「ちゃんと礼状を添えてお礼を返さなくちゃね」


「なにを認めましょうか?」



 うーん、ナニにしましょうかね? 出雲の名産品の詰め合わせセットがベターだとは思いますが。ベタだけにベターなんちゃって。


 冗談はさておき、


 そば粉に蕎麦の食べ方のレシピを添えて10石。赤酒の2斗樽を20樽。蒸留酒を10升。こんなもんかな?

 でも、信長って確か下戸のはずだったよね? 甘いモノのほうが喜んでくれるかも知れないから、冬になったら干し柿を追加で送ってあげましょうかね。それと、適当な茶器や書画を数点に、刀を数本と火縄銃を5挺ほど付け加えておきましょうか。


 ああ、あと、木綿の栽培を知多半島で行うように助言しておきましょうかね? 知多半島は未来においても、木曽川から水を引いてくる愛知用水が完成するまでは、水の便が悪くて米を作るのには不向きな土地だったのです。

 でも、それをしたら織田の力が強くなりすぎてしまいそうだから悩みますね……


 しかしこうやって、贈り物を選ぶのは悩みますけど、贈った相手が喜ぶかと思えば、存外に楽しいものだと思い至らされますよね。これを、仮の目録にして、



「これで、良しっと」


「おひいさま、お返しが多すぎやしませんか?」


「そうかな? 返礼は一割か二割が妥当じゃないの? 尼子がケチと思われるのも癪だしさ」


「まあ、それもそうですね」



 信長とは極力仲良くやる方向で行こうかと思ってます。いのちだいじに。これ、乱世を生き抜くには必要な言葉ですよね。


 ガンガンいこうぜ! これは、チキンな私には厳しいのであります。











 誰だ、マンチキンと思ったヤツは? けして、マンチキンではありませんので。



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― 新着の感想 ―
[一言] 玉、5000貫貰えたということは天照の大神子だった説笑。
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