↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/33

その8:過去と決意

昨晩は、寝る事が出来なかった。果たして、自分の腕が魔物に通用するのか。

心強い味方が居るものの、足を引っ張る事は無いだろうか、本当に不安だったのだ。


フェインの仲間と門の前で合流し、出発前の挨拶をする事になった。

剣術を扱い、フェインから厚い信頼を得ているフロストティ、武術の腕も確かで、移動において欠かせない馬車の操作を行うキーア、僕と同じ魔術を操るジェイル。


「この子達は、本当に凄いのよ!あの巨大ウィップを倒した経歴もあるの!」

「ウィップ、、ですか、、?」

「見た事無い?ドラゴンよドラゴン!」


あぁ、ドラゴンの事か、それなら理解する事が出来る。


「魔獣型、人型、妖精型、色々な魔物が外にはうようよと居るの」

「うぇ、僕本当に大丈夫なんですか?」


話を聞いて、何だか少し怖気づいてきた。指輪をぎゅっと握りしめる。


「大丈夫だ、お前は私が見込んでるからな」


聞き覚えのある声が、後ろから聞こえた。


「シャンディさん!」

「と言う事で、彼女には着いてきてもらいます」


やっぱり着いてきてくれた、彼女は僕達との同行を選択してくれた。


役者は揃った、シャンディから激励され僕は前を向けた、両親の為にも、僕は引き下がれないのだ。

皆の期待に応える為にも、僕は進み続けなければならない。


「さっ、時間よ。皆いい?出発よ!シャンディもほら、士気高めないと!」

「そうだな、良いか!この陣営には、私とフェインが居る!大船に乗ったつもりで居ろ!行くぞ!」


皆で拳を突き上げ、心を揃える、即席の複合パーティーの完成だ。


(待っててください、父さん、母さん、僕はやり遂げて見せます!僕の事が分かった時、元気な姿を見せに行きます!)


そう誓い、キーアの馬車によって、僕は領を後にする。


領地の外は、思ったよりも自然豊かだった、緑で生い茂げ、動物すら居た。


「あの、魔物ってそこら中に居る訳ではないんですか?」

「はは!うようよ居るは言い過ぎたかもしれないわね」


フェインは、近くにある洞窟に指を差す。そこには、見覚えのある魔物が居た。


「あれが、グラ。ここら辺の魔物は基本あの子達しか居なくて、特に脅威も無いの」


(襲われたんだよな、あいつ等にさ)


あの時の事は、未だに覚えている、僕も母の様に人を救えるような人になりたい。


「まぁ、脅威ある場合は、すぐに私たちが向かって討伐するし、脅威と言う魔物は、もう少し先かな」

「なぁ、一度実践させてみるのはどうだ、グラなんて敵程ではないかもしれないが」


シャンディが提案をしてきた、練習こそしてきたものの、対魔物戦闘は未経験、いい機会だ。


「そうね、一度私達に魔術を見せてくれないかしら!」

「はい、やってみます!」


馬車から一度降り、近くのグラと対峙した、練習とは違う緊張感が僕を襲う。


「グルルルルル、、グガァ、、」

低く唸る、グラ。僕はゆっくりと、腕を前に突き出す。いつもの様に、練習通りに。


「音すら置き去る、操られし炎を刮目せよ!ウェーブドライb、、」


ジーアスから貰った魔本の事を思い出す、呪文を詠唱していた、その時だった。


「おい!ちゃんと、前見ろ!来てるぞ!!」


シャンディの声が聞こえた、しまった。目を開けるとすぐそこまで、グラが飛び掛かっていた。


集中する為、目を閉じて詠唱してしまっていたのだ、練習の時は、目を開けずとも何も襲ってこない。

しかし、ここは命を張る戦場、相手もこちらの命を刈り取ろうとしている。大事な事を、失念していた。


後ろへとよろめき倒れ込み、腕が上へと反れてしまう。若干途切れた炎が、グラの頭をかすめた。


「ちっ!あいつ何やってんだ!!」


シャンディが、食料として持ってきていた、リンゴを手に掴み、フルスイングでグラへ投げつける。


「ギャン!!!!」


それは見事、グラの頭部へ命中、横へ吹っ飛ぶ。すかさず、シャンディが僕に叫ぶ。


「おい!!!!!詠唱をやめるんじゃない!!!!」


立ち上がった僕は、腕を再度構え、技だけ唱える。


「、、っ!ウェーブドライブ!!!」


波打つ炎が、すばやくグラへと飛んでいく、元々は大きな波状の炎でまとめて焼き尽くす技。


「何か、私が知ってるウェーブドライブじゃないんだけど、、」

ジェイルが呟く、そう僕は、一本の炎を撃ち出していたのだ。


見事に、とはいかないが、僕はグラを討伐する事が出来た。

シャンディが、こちらに駆け寄ってくる。


「お前、、、、まぁ、良い。怪我は無いか」


シャンディの顔は、怒っていた。自分は、ここで命を落としていたかもしれなかった。

前もって戦闘していて、良かったかもしれない。

ミスをしてはいけない思いと、実践と言う事に浮ついて、気が緩んでいた。


「すみません、こけた時に少し、膝だけなので、、」

「はっ、はっ、クライネ君、無事、、?」


遅れて、フェインも駆け寄ってくる、後ろから馬車もこちらに来ていた。


「心配かけてしまいました、本当にすみませんでした」

頭を下げる、陣営の皆を心配させてしまった。やはり、僕にはまだ早かったのだろうか。


「良いの、寧ろ今まで実践をさせてこなかった、私に非があるわ。ごめんね」

「とっ、とんでもないです、、僕が気を付けていたら、、」


フェインが膝の怪我に気付いた。彼女は、すぐに僕に治癒魔法をかけてくれた。

しかし、傷痕が光り出す。


「本当に、自己治癒が出来ないのね、、しかも、治癒魔法まで発散してる、、治りが遅い、、」


馬車から降りてきたキーアが、話しかけてくる。

「でも、本当に良かったぜ、シャンディさん貴方、投擲手も出来んだろ?」

「過去に少しだけ、な。でも、まさか経験が生きる時が来るとは思わなかったよ」


そこで安心したのか、シャンディはその場に座り込んでしまった。

更に、下を向いて話し始める。


「私な、過去に剣士の知り合いを亡くしてんだ。投擲手はな、敵の気を引き付けたり、視界を奪ったりと便利な役職だけどな、直接ピンチをどうこう出来る訳じゃないんだ」


「シャンディ、、」

フェインが心配そうに、声を漏らす。


「もう、私が魔物に麻痺する球を投げる頃には、そいつは吹っ飛ばされてた。でっかいセクタートでな、多分、当たっていたとしてもその攻撃は、防げなかっただろうよ」


僕は、シャンディの顔から涙が落ちる所を見てしまった。


「吹っ飛ばされたって言うか、もう鎌で腕が切れて身体が弾き飛ばされた感じだった。その時、私が前線に立って戦っていれば、とか思っちゃってな。無理言って役職を、剣士に変えてもらったんだ」


そんな過去があっただなんて、面倒見が良いシャンディだったがそれは、過去の後悔から来ていた。


「だからよ、もうさ、私の前で誰も死なないでくれ。頼む」


馬車へと戻り、先へと進む。沈黙が馬車の中を包んだ。


初めての対魔物戦闘は、この様な結果で終わってしまったが、一緒に決意へと変わった。

僕は決めた、絶対に、もう皆を悲しませない、救ってみせると。

その8です。ついにブックマークを頂けました。本当に嬉しいありがとうございます。


相も変わらず、難しいです。初戦闘頑張れ、クライネ君。なるべく泣かせないでくれクライネ君。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。