その7.5防衛戦前夜に這い寄る影
遠征の前日、僕は、机に向かい筆を取っていた。
「魔本は、一通り覚える事は出来たけど、、」
どうしても、自身に治癒魔法やバフを付与しても、傷を通して効果がすり抜けてしまう。
ただでさえ、自己治癒能力が発現しないのに、このままでは、もしもの時が怖い。
「取りあえず、こんなもんで、、良いかな」
僕は、ここに来てから自分の事について、カルテの様な物を付ける様にしていた。
自分が今出来る事、出来ない事をはっきりさせておく為だ、出来ない事は少しずつ克服していこう。
しかし、今日まで本当に展開が目まぐるしい日々だった、魔術を使えたかと思えば、潜在的な物を認められて、親元を離れてここに居る。
「しかも、遠征と来たもんだからなぁ。やっぱり治癒関連についてひっかかるな、、」
撃ち出す魔法については、適切な量の発散を予め、行ってくれる為とても重宝出来る。
ホースの先端を握る様に、範囲を絞ったり、威力を合わせて調整出来た。
ただ、受ける治癒能力については傷が出口となってしまい、効果の減衰が著しい。
「でも、明日も早いし、、今日はここらで寝よう、、くあぁ、、」
欠伸をして、寝る準備をする、電気を消す為にベッド脇の電気を消そうとする。
窓に目を移すと、そこには〝シャンディが立っていた。〟
「ううわああぁぁあああぁあああああ!!!!!!」
急に窓を挟んで人が居るのだ、叫ばないやつがいないだろう。
「お前、、!!!私を見て叫ぶんじゃない!!!!」
「いや、シャンディさん!!無理ありますって!!今のは、、っ、心臓に来ます、、」
窓を挟んでても、はっきり聞こえる声、入り口に移動して来たシャンディを中へ入れた。
「やぁ、来たぞ、明日から遠征らしいじゃないか」
「そうですね、、息を整えさせて下さい、、」
「む、すまんな、丁度そこに窓があったから覗き込んでしまっただけだ」
覗き込むジェスチャーをする、シャンディを横目に、僕はベッドへと入る。
「おいおいおい、私だぞ、一応長だぞ、もう少し出迎えてくれたって良いじゃないかー」
「僕、明日とても早いんですって、寝なきゃパフォーマンスが出ません」
ベッドの近くに寄って、シャンディは僕の身体を揺らしてくる、近寄ってきて気付いた
「んっ、、シャンディさん、、貴方お酒飲んでますね、、?」
「ちょーーーーっとな、んで、飲み終わりに知り合いの窓を覗き込んだ、って感じだ」
しまった、酒癖悪いタイプなのか。若干おかしいとか思ったものの、元が元だから
何も警戒せずに、家に入れてしまった。
「しっかりして下さい!シャンディさん!朝早いって言ってるじゃないですか!」
家から押し出そうと思っても、僕の今の力では、押し負けるに決まってる。
食料棚をごそごそ物色するシャンディを、半ばあきらめモードに入った僕は起き上がり、相手をしてあげる事にした。
「おっ、来てくれたかぁ!嬉しいなぁ!ささ、座れ!!座れ!!」
「もう座ってますし、ここ僕の家です」
「あっ、そっかぁ!」
中々の状態が出来上がっていた、するとシャンディが机の上の本に気付いた。
さっき書いた、今の僕の事をまとめた紙だった。
「んー?何だこれ」
「あ!それは!!ダメです見ないでください!!」
上に紙を掲げて、読み進めるシャンディ
「え?君、バフ効果も治癒魔法も軽減されるの?」
ちくしょう!見られた!一番面倒な状況な人に見られた!
「ちょ!返してください!!色々と書き留めてるんですって!」
「へぇぇ、面白い身体ねぇ、、やっぱり」
急にシャンディが、上の服をめくってくる。僕のお腹の傷痕があらわになる。
しかも、傷痕に触れてきたのだ、マメだらけの手が肌の上を走る。
「ひょぉわぁ!すみませんシャンディさん!」
手を払いのけて、その勢いで後ろに距離を取る。それを逃がすまいと距離を詰めるシャンディ。
じりじりと距離を取り合う、謎の読み合いが始まってしまった。
(それは夜更けまで続いた、壮絶な攻防だった。知らないうちにステータスがあれば上がってそうだ)
動き疲れたシャンディは、地面に突っ伏して、眠ってしまった。
僕も、それに乗じる様にベッドに身体を投げ込む。
翌日、結局準備の時間を入れると朝から起きなくてなならなく、三時間も寝れなかった。
「あぁぁ、、っと、、クライネ君、、その何があった感じなの、、?」
時刻通り着いたフェインが、家を覗くとそこには、地面に倒れるシャンディと、散らばる服や家具、目の下が若干黒い僕が、荷物を持って突っ立っていると言う、まさしく家は混沌とした状態だった。
訳を話すと、フェインは、ずかずかと僕の家に乗り込み、シャンディを叩き起こす。
「んがっ!いてぇ!!なんだお前!」
僕が、叩き起こしたと思ったのだろう、飛び起きたシャンディの顔は、まさに傑作だった。
「クライネ君に、昨晩はひじょうぅぅにお世話になったそうで」
ニコっと笑うフェイン、いや、目が、目が笑ってない。
「あっ、、あぁ、、んんん、、良く寝た、、なぁ、、」
家から出て行こうとする、シャンディの肩を掴み、引き寄せるフェイン。
「何か言う事、無いの?」
「すまん!!!クライネすまん!!!!」
手を合わせ、頭を深々と下げるシャンディ、その後ろで目をぎらつかせるフェイン。
話を聞くと、酒癖の悪さは、陣営長の中でも随一なようで、申し訳なかったと伝えてくれた。
「と言う事で、彼女には着いてきてもらいます」
速やかに準備を済ませ、シャンディは今回の遠征に罪滅ぼしとして同行する事になった。
「まぁ、元から同行しようと思ってたんだ、フェインに子守は、あまりにも心配過ぎる」
「ふぅぅん????」
ギロっと、シャンディに眼光を飛ばすフェイン、逃げる様に目線を逸らすシャンディ。
仲良いんだか、悪いんだか、よく分かんないな。
すると、僕の横にフェインが来る。
「ね、なんだかんだ着いてきたでしょ、シャンディちゃん」
「思ってた理由と違いましたけどね、、」
「ふふっ、彼女は、ああ言う所あるけど、優しいのよ本当に」
まぁ、でも頼りがいはあるし、二人のやり取りを見ているのも楽しい。
「さっ!行きましょ!私の仲間も、もう着いてるはずよ!」
外へ繋がる門の前へと着くと、そこにはフェインの仲間と思わしき3人が居た。
フロストティ、キーア、ジェイル、それぞれ剣術、武闘兼機動職、魔術使いと紹介を受けた。
簡単な挨拶も終え、僕達は魔物の前陣からの防衛を行う、そんな戦いへと赴く。
初めての対魔物戦闘、今日までの特訓の成果を見せようと張り切る僕。
シャンディ、頭が痛いと言ってるが大丈夫だろうか
「すまん!!!ちょっと、、っ、うぷっ!!!」
地獄のような、馬車の道しるべを残して行くのであった。
先に7.5が出来上がってしまったのでめちゃくちゃ緩い話になってます
その8から前陣防衛戦編始まります
相変わらず、難しいです




