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その7:陣営問題

二日後、別れの日の朝、とは言っても領内に兵舎はあるから、会えなくなる訳ではない。

会おうと思えばすぐ会える。でも、魔術師の兵士となれば、遠征などもあるだろう。


朝から、わざわざシャンディさんが、迎えに来てくれていた。


「時間がある時は、帰ってくるのよ」

「分かってますよ。母さん」


セリアスは、これが別れではないと、握手で済ませた。

でも、握手する手は、力がこもっていた。離したくないと言う思いが、ひしひしと伝わる。


「元気でな、大きくなった姿見せてくれよ」

「ありがとうございます、父さん、いつか父さんの背も越してみせます!」


ジーアスは、背中を力一杯の張り手で叩き、笑顔で僕を送り出してくれた。

背中がひりひりする、愛のムチだ。


「いいか、済んだか?それじゃ行くぞ、こっちに着いてこい!」


シャンディに連れられ、僕は中央へと続く馬車へと乗り込む。


育ってきた家が、小さくなっていく、二人が手を振っている。

僕は、家が見えなくなってもしばしの間、手を振り続けた。


「さて、君には、早速だが寄り道に付いてきてもらおう」


「寄り道、、ですか?」


嫌な予感がする、絶対ろくなことでは無い。


「お前、兵舎に来るのは決まったとして、陣営が決まってないだろ」

「陣営ですか?」


てっきり、僕はシャンディさんが面倒見てもらえるものだと思ってた。


「巡回兵を除いて、毎年成績上位3名しか卒業出来ない学び舎を経て、振り分けが行われるんだ」

「少なすぎませんか、、?」

「それだけ優秀って事だな、だから陣営と言っても3人か4人くらいで、一陣営だぞ。それが、5つ」


兵士を志す者は少なくない、との事だった。

そんな中に入る、僕の実力は見合っているのだろうか、、?


「でも、君の様な場合は、一旦、中央部の城まで来てもらって、直接振り分けてもらうんだ」

「直接って、誰にですか?」

「誰ってそりゃぁ、トール領の長だろうよ」


(さも、当たり前のように言うんじゃねぇよ!急に領長に会うのか?僕が?)


「そんな簡単に、僕が会っていいんですか?」

「もう昨日、話は通してあるぞ、着いたらすぐに、話をする事になるだろう」

「え、僕シャンディさんの陣営ではないんですか?」


取り敢えず、聞いてみた。するとシャンディは、急に笑い出す。


「はっはっ!!そんな訳無いだろう?生憎、私は面倒見が悪いんだ!引き抜きまでだな!」

「そういう物なんですか、、」


馬車で話しているうちに、中央部トールへ着いていた。城の前に立つと、門番にシャンディが叫ぶ。


「私だ!シャンディ・ルカだ!例の者を連れてきた!」


城の門がゆっくりと開いていく、城に入り、大玄関を抜けると、二階に繋がる階段があった。

階段をシャンディと上り、領長室へ繋がる道を進む。


何やら、シャンディがぶつぶつと呟いていた。

(気が進まないとかなんとか、言ってたような、、)


「失礼いたします!シャンディ・ルカです!」


(あのシャンディが敬語を使っているだと、、)

勝手に彼女は、敬語は使わない者だと思っていた、ただ、そういう所はちゃんとしているようだ。


「シャンディちゃぁん!入って入ってー!!」

「げっっ、、」


シャンディの顔を見ると、死んでた、顔の生気が消えていた。

それでも、入らなくてはならない、彼女は顔を歪ませながら、僕と一緒に領長室へと入る。


「待ってたわぁ!!ちょっとこのお茶、飲んでみて!美味しい茶葉入ったの!!」

ドアが開いた瞬間から、ティーカップを二つ持った女性が突っ込んできた。


「まっ、分かった!分かりましたから!ちょっと待て!!」

「ちぇー、つれないの、、」


べたべたする二人に、完璧に置いてけぼりになっている、しかも、いつものシャンディに戻っていた。

僕を見た領長は、獲物を切り替えたようだ。


「あら!君?噂の子って言うのは」

「そうだ、こいつだ。」


すると、顔をキリっと戻し、足早に椅子へと戻っていく。


「よく来た!私の名前はフェイン・ロゼ、ここの領長兼フェイン陣営の陣営長だ!」


あのやり取りの後に、それは無理があるだろう。

シャンディも、私が思う事が分かったのだろう。


「ロゼ、流石に無理があるぞ、、、」

「たはぁ、、流石に?」


どうやら、面白そうな人だ。でも、領長がこれって、、よくやっていけたものだ。


「そうそう、それで、今日は振り分けのお話だった?」

「いかにも、どこの陣営に付けるんだ、こいつを」


すると、フェインは、私に話しかけてくる。


「ねぇ、君、どうやら傷の事で悩んでいるんでしょ?」

「はい、自己治癒能力も使えないですし、受けた治癒魔法も傷を通して効果が薄まってしまうのです」

「変な事もあるもんだねぇ、そうだ、傷を持ってる他の子を、探してるんでしょ?」


僕はフェインに、ここに来た理由を事細かに話した。

傷痕の事、洞窟に捨てられていた事、そして、同じ傷を持った子の事。


「聞いているとは思うけど、その子は遠征中でね、二月くらいは帰ってこないんだ」

「はい、存じてます、なので帰ってくるまでは、魔物の討伐と自己研鑽をしようかと」


ここに来る時、魔本をジーアスから、厳重に鍵のかかった箱から譲り受けていた。

〝俺には使いこなせなかったが、クライネなら出来るぞ〟、とか言ってたな。


「ふーん、で、君はどこの陣営に行きたいの?」


「それが、陣営の事を良く知らないのです、そもそもここに来るの今日知りましたし、、」

「フェイン陣営、シャンディ陣営、コクル陣営、セルスファー陣営、アリス陣営の五つなんだけど、、」


指を折りながら陣営を数えると、フェインは横目にシャンディをチラッと見る。

シャンディも、嫌な予感を感じ取ったようだ、視線を逸らす。


「私は、やらないぞ。引き抜きはするが、面倒見るのが苦手なのは一番ロゼが知っているだろう?」

「でもこの子関わりって、シャンディくらいなんでしょ?知ってる人が一人くらい居た方が良いわ!」


押し問答が続くやる、やらない。いる、いらないだの。


「でしたら、無理矢理も申し訳ないので、別に他の所でも良いんですよ?」

僕が、その場を収めようとするが、寧ろ、状況を悪化させてしまった。


「いーや!!良いのよ!!クライネ君!!シャンディ!領長!!領長命令よ!!」

「お前!それは卑怯だろ!立場を振りかざすんじゃない!!!」


(おーおー、ティーカップまで宙を舞ってる)


「分かったわ、、なら、取引をしましょう、、」

「ほう、取引とな、、内容次第だな、、」


ごそごそと、何かを取り出すフェイン。そこには、一つの箱を手に持っていた。

箱を開けると、そこには一枚の紙があった。


「これは貴方が以前、私に渡した前陣防衛の参加表明のやつよ、嫌々言ってたでしょう?それを、うちの陣営に引き継がせる、って言うのはどう?」

「行かなくて良いのか!?乗った!」


今までの言い合いが嘘かの様に、終結した。あれ?でもおかしい。


「すみません、僕、遠征して魔物討伐したい為に、来たんですけど、、」

本来の目的を見失う所だった。


「あっ!!そうだったわね、、それなら今回の遠征、私達に付いてくる?」


所属はシャンディ陣営、でも今回の遠征は、フェイン陣営に付いていく。そういう内容で決まった。

これも、そこそこの特権を持つフェインが居たからこそだった、様々だ。


「よろしくねぇ!クライン君!」

肩をポンと叩いてくるフェイン、すると、耳打ちをしてくる。


(シャンディちゃんね、多分着いてくるわよ。あの子、ああ見えて面倒見とっても良いの)

(そうなんですか?)

(どうせ、陣営の他の人はお休みになるだろうし、間違いないわ、、、!)


何だか、シャンディから鋭い視線を感じるが、気にしないでおくとする。


そんなやり取りをして、僕とシャンディは、その場を後にする。

兵舎に戻ると、〝一応面倒見る事になったから〟と、シャンディから部屋の鍵を譲り受けた。


部屋は、個室だった。かなり待遇が良い。荷解きも程々に僕は、早速遠征に向けての準備を進めた。

遠征は三日後で、隣国から来る魔物の前陣からの防衛を行うらしい。

前陣との事もあり、フェインが言うには〝余裕〟との事。


「その三日後には、五引が来るのか、、」


五引強襲の際は、二陣営で引き留めると話してくれた。

残りの二陣営に関しては、アリス陣営とコクル陣営は領内での警戒、例の女の子はセルスファー陣営だった。

遠方にて、五引の動きの観察と、周辺魔物の討伐と言う役目を請け負ってるらしい。


「初めての、戦闘、、それまでにはこの魔本を覚えなきゃな、、」


僕は魔本とバッグを抱え、夜の練習場へと向かうのだった。

個人的には、フェイン陣営に行きたいです。

相も変わらず難しいです。


どうやらブックマーク機能と言う物があるみたいなので

これからも更新していきますので、気になる方は是非よろしくお願い致します

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