その30:罪の宣告
「おはよう、、クライネ、、夜は眠れた、、?」
「いえ、一睡も出来ませんよ。おはようございます」
「この後、、時間は、、ある?」
朝、僕はあのまま、夜を過ごした。命を救う為とはいえ、守るべき事を破ってしまった。
そして、どういう処分を受ける事になるのか。
「出来るなら、その時まで一人になりたいです」
「違うの、、もう、、処分が決まったみたい、、ギリエルが、、呼んでる、、」
もちろん、死にたくは無い。ただ、このシャンディからの約束を破った罪悪感から、早く解放されたかった。
「分かりました、その前に少し喉が乾きました。少しだけ待ってて下さい」
僕は、夜に飲み残した、机の上のカップに入った紅茶を飲み干す。その後、一息入れ、アリスに声をかけた。
「お待たせしました。行きましょう」
「クライネ、、手が、、震えてる、、」
「正直、怖いです。日常が急に壊れてしまう事が。ある日を境に、人生が終わってしまうかもしれない事が」
アリスは、部屋に向かう道中、何も言わずにただ、黙って僕の話を聞いていた。2人は部屋の前に着いた。
「ギリエルさん、クライネを、、連れてきました、、」
「入れ」
ドアを開けると、あの日と同じような姿勢で、ギリエルが脚を組み、椅子に座っていた。
「僕の処分が決まったと聞いて、アリスさんに連れて来てもらいました。処分を聞かせて頂いても、よろしいでしょうか」
「まぁ、慌てるな。その様子だと、眠れていないようだな」
「早く、聞かせて下さい」
こっちは、多少なりとも覚悟をしているにも関わらず、話を伸ばそうとするギリエルに、苛立ちを覚える僕。
「そうか、なら仕方あるまい。クライネ・トダン。貴様には、手形の不所持による、魔術使用と言った、重大な魔術違反を犯した」
「、、 、」
ギリエルの話を手を握り、何かを抑えるように聞き続けるアリス。その目は、ギリエルを睨み続けていた。
「セルスファー陣営の救出には、多大なる貢献と、人名の救助に徹してくれたものの、この重大な違反においては、擁護しきれない」
遂に、処分を告げられる。
「よって、クライネ・トダンを本日付けでシャンディ陣営より、除名処分とする」
「そんな、、っ、、」
アリスは、ギリエルの処分に驚きを隠せない。
僕は、その処分を聞く事しか出来なかった。死なないだけマシ。そう思える程、僕は追い詰められていた。
「ギリエル、、本当に、、その処分は妥当なの、、」
「アリスよ。もう決まった事だ。何だお前も、違反行為の肩を持つのか?」
「それは、、」
陣営の長という立場上、権利こそあるものの、失うものも大きい。アリスは、それ以上話す事は無かった。
「これで、クライネ・トダンへの処分通達は以上。兵舎の荷物においても、本日中に持ち出すように」
そう告げると、ギリエルは、二人に部屋から出るよう促した。僕達は、それに従うしかない。
兵舎に戻るまで、会話など一切無かった。重い。
「おい、クライネ!処分通達があったと聞いたぞ!どうだったんだ!」
部屋の前で、シャンディが立って僕を待っていた。
僕は、処分の内容を事細かに伝えた。
「そんな、、お前は良いのか?その処分で」
「良いのかって、、極刑もある罪の中で、これで済んだのは、良い方じゃないですか」
シャンディの手が、僕の頬を叩いた。赤くなる頬を抑え、僕は、シャンディに視線を向ける。
「お前の覚悟は、その程度かよ、、お前は!自分を知る為にここに来たんだろ!?生きる意味を見つける為に来たんだろ!?それなのに、何でそんな終わったような顔をしているんだよ!これからだろ!」
胸ぐらを掴むシャンディに、僕は口をつむぐ。確かに目的は、シャンディの言ってる通りだ。ただ、これは自分が犯した事によるもの。当然の報い。
「シャンディ、、落ち着いて、、」
「落ち着くもくそもあるか!私が、信じてると言い続けてたやつが目の前から消えようとしてるんだぞ!?自分の来た意味を、失おうとしてるんだぞ!?放っておけるか!」
止めに入るアリスを突き飛ばして、床に倒れ込むアリスに、言葉を浴びせる。
「私一人でも、またギリエルと話をしてくる。クライネは、本当にこれでいいか、今一度考えろ」
シャンディは、ギリエルの待つ部屋へと、一人歩いて行った。
「クライネ、、行った方が、、」
「いえ、大丈夫です。部屋を出る準備をします」
「クライネ、、」
僕は、アリスを廊下に残し、荷物をまとめる為、部屋に入る。もう、この状況を覆す事は出来ない。そう、心のどこかで思っていた。
「おい!!!ギリエル!居るか!」
「シャンディか。クライネの件についてだろう。もう、処分は決まっている。諦めろ」
「、、、失礼する」
シャンディは、無断でギリエルの部屋へと入って行く。
一歩一歩、力強く彼の机へと近付く。
「処分は決まっている。言っているだろう」
「私が、納得していない」
「シャンディには、関係あるまい」
「彼は、私の陣営の者だ。関係ある」
引き下がろうとしないシャンディに、ギリエルが諭す。
「彼は、違反を犯したんだ。例え命の前でも、ルールはルールだ。それは、一番君が理解しているだろう?」
「だとしても、彼を今失ったら、陣営はおろか、領までもが、危険に晒されるがそれでも良いのか?セルスファー陣営も、今回で二名の戦力を失ったのだ」
「それについては、学び舎よりすぐ補填する。心配するな。フェイン陣営についても、キーアの代わりを直ぐに入れようじゃないか」
シャンディは、思いのままをギリエルに伝えるが、彼は姿勢を崩さなかった。
「ギリエル、、お前は、命をなんだと思ってるのだ、、」
「そりゃぁ、大事なものさ。ただ、それよりも守るべきものはある。生きていく上で、一生を付きまとうもの、それがルールさ」
「それが、貴方のルールなのですね。ギリエルさん」
大きな音を立て、ドアが開く。そこに立っていたのは、クライネとアリスだった。




