その3:試練と成長
目が覚めると、セリアスは小刻みにステップを踏みながら、意気揚々と買い物の準備をしていた。
「何を買ってあげようかしら!まずは、服よね!ピース領に行って、、ワインズ領、、」
ぶつぶつと、今日のスケジュールを立てるセリアス、顎に手を当て、真剣な顔だ。
「ちょっと良いか?セリアス」
そこへ、ジーアスがやってきた。彼の手は、紙とペンを握っていた。
「クライネがこの領、フィレアス領に来て時間が経つだろう?名前、そろそろ決めてあげたいんだ」
セリアスは待ってましたとばかりに声を上げる。
「そうそう!名前、私色々と考えてたのよ!」
彼女は、複数個の名前を紙に書き連ねる。
(色々と考えてくれてたんだな、本当にこの家に拾われてラッキーだ)
「クライン、アルクス、ヴィネアル、、、一通り書き出してみたけど、どうかしら」
「うん。いいね。でも、俺も一つだけ考えていた名前があるんだ、、エレイネって言うんだ」
さらさらと、ジーアスが名前を紙に書き出す。
名前決めもかなり煮詰まってきた、二人とも必死に、僕の名前を考えてくれた。
「一つ提案なんだけど、私、クラインって中々に気に入ってるのよ。」
「うん、俺もクラインって名前、好きだぞ。それで提案ってなんだ?」
「合わせるのよ!クラインとエレイネを合わせて、クライネ!」
良い名前だった。僕の名前は、その時からクライネになった。クライネ・トダンの誕生だった。
そこからは早かった、領地の繁華街へ繰り出し、服や家具まで買ってくれた。
(買って貰えるのは嬉しいけど、服の時はまるで着せ替え人形だったぞ、、)
本当に愛してくれていたのだろう、洞窟に居た。見ず知らずの男の子。
そんな子を、愛してくれていた。それは、生前の僕が一番欲していたものだった。
気付けば泣いていた、周りから見ると赤子がただ、無邪気に泣いているようだったが。
僕は、その温かさに自然と涙が出ていたのだ。
家へと戻り、早速服を着せ替えてもらった、セリアスは僕を抱え上げ、姿見の前に立つ。
そこには、純白の服に包まれた僕が居た。自分でも言うのもなんだが可愛かった。
「可愛いわねぇ、、、クライネェ、、、」
口元が緩みまくるセリアス、後ろでそれを見守るジーアス。
「でもこの子の傷痕、結局治らなかったわね、、」
「そうなんだよな、ワインズ領で、腕っぷしの治癒師に連れて行ったんだがな」
僕は、買い物のついでに、傷痕を治しに行ってもらっていた。
ただ、その人が言うには、まるでこの子の傷痕、生まれる前からあるみたいな痕だ、だそう。
「先天性の傷痕とかあるのかしら」
「この子の、性質なんだろう、気にする事無いさ。現に、こんなに元気じゃないか」
僕は空気を読んで、笑顔で応える。
「あぁうぁぁ!」
ジーアスは、相変わらず冷静に物事を俯瞰していた。
でも、僕は知ってる、本当の顔を。
それは、セリアスが風呂へと入ってる時に来る。
「居ないな、、」
辺りを見渡す男が一人。ジーアスだった。
「おぉぉ、、可愛いなぁ、、お前はよぉ、、」
まさかだった、まさかジーアスも僕に溺愛していたのだ。
(また来たぁぁ!!いつも、隙を見て僕に駆け寄ってくる、、まぁ、悪い気はしないけどな)
セリアスが風呂から出るギリギリまで、ジーアスは僕を堪能していた。
頬を指先で優しく突いたり、僕を抱え上げて、優しくくるくると回ったり色々だ。
(なんだ、可愛い所あるじゃないか、ジーアス。)
「きゃはは!はだぁ!!!」
ここまでしてもらっては、喜んでお返ししてあげるほかない。
「そっか!!そっか!!嬉しいかぁ!!!」
僕は、二人から愛されながら一日を過ごす。
幸せだった。それ以上なかった。
そんな人生を歩みながら、とある夏をほのかに感じる暖かい日。
身体も大きくなり、元気にすくすくと育っていた。
一人の男性が、トダン家にやってきた。
その男は、グェーニェと名乗っていた。若干服は汚れており、背はジーアスよりも若干高い。
顎髭を生やして、渋い声と笑い声が特徴的だった。
「ガッガッハッハッ!!!そうか、捨てられていた子を助けたのか!流石はトダンさんだ!」
「それで、グェーニェさん今日は、また巡回ですかい?」
父と話すグェーニェは、ここらへんの巡回兵だった。その地の安全を守り、揉め事を解決する。
ここらでの信頼は厚かった。
「良いか、坊や。ここはな良い所だ。俺は、異動して二年、ここは一番良い領だ!ガッガッ!!!!」
僕の頭を、大きい手で撫で繰り回す。取れる、首取れるって。
一通りグェーニェと話して、巡回へと帰った彼を見送ると、ジーアスは僕に話しかけてきた。
「いいか、クライネ。お前には一つ試練を課そう」
父は、こちらをじっと眺め、神妙な顔で僕の目を見つめていた。
最近寝る前にその日書き留めていた事を、お話にする日課が始まりました。
楽しいです、難しい事には変わりないです。難しいです。




