その28:正面突破
轟音の足音を鳴らし、魔物の大群が押し寄せてくる。セルスファー陣営を取り囲む魔物は、逃がすまいと大木を取り囲んだまま。フェインらは、とある決断をする。
「来た道を、一度引き返します。私達まで、倒れてしまっては、助けに来た意味がありません」
「おい!フェイン!セルスファー達を見殺しにしろってか!?」
「見殺しにするとは、一言も言っていません!必ず、助けます!」
苦渋の決断だった。目の前に、救うべき相手が居ると言うのに、この場を去らねばならない。
「ごめんなさい、、本当にごめんなさい、、セルスファー、必ず後で…!」
すると、後ろの方から、馬の足音が近付いてくる。馬が嘶き、フェイン達の前で止まる。
「すみません!!!お待たせしました!!」
「クライネ君!どうしてここに?」
居るはずのない人が駆け付け驚くフェイン。荷台から、飛び出したクライネは、目の前の光景を見て絶句する。
「何ですか、この大群は、、!」
「説明は後!こんなの相手にしていられない!一回引き下がるわ!」
クライネの手を引いて、フェインは、その場から離れようとする。だが、クライネはその手を優しく払いのける。
「すみません、僕にここは任せて下さい、、!」
「何をしてるんだ!行くぞ!死にたいのか!」
ジェイルも、引こうとしないクライネに言葉を飛ばす。クライネは、一度深呼吸をする。
「満天を業火で満たし、果てなき大地を灰塵へと帰せ!火の神の名の下を以て、この世界を焼き尽くせ!プロメテウスディザスター、、!」
広範囲の炎の魔術は、押し寄せる魔物の大群を押し返す上に、炎で陣営との分断に成功する。周囲の木が、所々クライネの放った魔法によって燃えている。見ただけでも、倒した数は、一撃で五十体は超えていた。
「僕の全力を、取り敢えずぶつけました、、!時間はかなり稼げるはずなので、炎越しに攻撃魔法をぶつけてやりましょう」
「えっ、、えぇ!そうね!皆、削れるだけ削ってしまいましょう!」
「セルスファーさん達は!?」
「あの大木の中!あそこ!穴が塞がれてるでしょ?あの中にいるはずよ!」
セルスファーらの場所を聞きつけたクライネは、救出する為のプランを考える。
「この炎も、数分もすれば乗り越えれる程の、高さになってしまいます。ここまでの数は、想定していませんでしたが、ここに来るまでに、作戦を考えていたんです!」
クライネは、その作戦を決行する為、ジェイルにとあるお願いをする。その内容はとてもシンプルだったが、ジェイルにとっては、不安が残る内容だった。
「良いですか、ジェイルさん。僕が、地面に水を差し込んで、魔物の足を止めます。そこからは、頼みました!」
「分かった。やってみる。不安で仕方ないが、今は弟子を信じるしかないからな」
クライネは、そう言うと地面に両手を当て、魔物の足元に向けて、水を注入しだす。動けない事に気付いた魔物は、身体を震わせ引き抜こうとするものの、ぬかるんだ地面は、動けば動くほどその身体は、沈んで行ってしまう。
「ジェイルさん!今、お願いします!」
「全力をぶつけるが、貫通出来なかった時は、頼んだ!ミストラル!!」
ジェイルは、近くになる木の内、一番太い木に対して、風によるカッターをぶつける。
そのカッターは、木を貫通する事は無かったが、ギリギリまでの深い傷を負わせる。
「ごめん、クライネ!貫通には、至らなかった!」
「大丈夫です!フロストティさん!僕が護衛するので、あの、傷付いた木を魔物に向けて、思いっきり突進して下さい!」
「そう言う事か!分かった!はぁぁぁぁぁあああ!!」
木まで走るフロストティに対して、飛び掛かろうとする魔物を、火球で弾き飛ばす。
護衛の中、木の近くまで駆け寄る事に成功した。
「この機にぶつかれば良いんだな!」
『ドゴォォォオオォォオン!!!』
フロストティの身体が、木にぶつかるととても鈍い音がした後、軋む音を立てながら、倒れ込んでいく。
下敷きになった魔物は、叫ぶ間もなく姿を木の下へ、消していく。
「やった!やりました!作戦通りです!理想通りで怖いくらいですけど、、」
「私達の力にこだわってたけど、これで良かったのね、、そうね、木を倒すなんて…」
直前でかわした個体が居たものの、これで大部分の駆逐に成功した。
「いってぇ、、結構重かったぞ…でもこれで良かったんだよな?」
「えぇ!大成功です!」
二人で、親指を立て笑顔を見せ合う。ぶつけた肩の箇所を怪我していたので、急いでクライネが治癒する。そこへ、フェインが駆け寄ってくる。
「クライネ君、本当に魔法の腕上がったわ。ヒーローに、助けられちゃったわね」
陣営の長として手を握り、感謝を伝える。その目は、恐怖からかうるんでいた。
確かに、フェイらも陣営の中でも強い。ただ、彼女も一人の人間、死を前にして震えない方がおかしい。
「すみません、連絡先を知らなくて、後を追う形になってしまいました」
「ううん。良いの。何となく、そんな気がしてたわ。来てるって、後から来るって」
足止めの広範囲の炎も火力は落ち、残党と、セルスファーらを取り囲む大木の周りにいる魔物のみとなった。
「一旦、目の前の残った魔物を排除しましょう!この数なら、四人で対処出来ます!」
「俄然やる気が出て来た!やるぞ!!」
フロストファーが前に飛び出す。それに続く様に三人が追いかける。
「かかってこい!!魔物ども!!はぁぁ!!」
剣が薙ぎ払う様に、魔物を駆逐していく。後ろから、魔法の援護を付けつつ、一体また一体と数を減らして遂に、突破口を作る事に成功した。
「セルスファーさん!!この声が聞こえますか!助けに来ました!フェインです!」
「魔物ども!大木から離れろ!!私が相手してやる!」
剣をブンブンと振り回しながら、魔物に近付いていく。百体は居るものの、先程の数百体に比べれば、対応可能だった。フェイン達に、追い詰められた魔物らは、大木の包囲を外し、襲い掛かってくる。
「すみません、助かりました」
「エレット!無事でしたか!今、こいつらを倒して助けますから!」
「この包囲が解けたなら、私だけでも、どうにか出来たわ」
大木の穴を塞ぐ岩が、砕かれたかと思うと、中からエレットが出てくる。彼女の身体は、怪我しておらず、自己治癒でどうにかなるレベルみたいだ。
「私が、閉じ込めますからまとめて一掃、お願い!グレイシアケージ!!」
エレットが放つ魔法は、氷の檻を出現させ、魔物の周りを取り囲む。魔物が氷に体当たりするが、砕ける様子は一切ない。
「流石はエレット、クライネと同等、、いや、それ以上か…」
クライネも、十分強い魔術師に進化しつつあるが、傷一つ付かない氷の純度に、ジェイルは驚きを隠せない。
「助かります!そこに火力をぶつければ良いんですね!フロストボール!!」
クライネの放った火球は、檻の中を覆い隠すように炎が広がっていく。
火が収まると、檻の中は、駆逐したか、瀕死の状態の魔物だけが残されていた。
「クライネ、流石ね。ごめん、助けてもらって」
「良いんですよ。エレット、僕もすぐ駆けつけてあげられなくてすみません」
二人で頭を下げて、謝り合う。エレットの誘導の下大木の元へ、皆で行く事になった。
大木の中には、セルスファー陣営の仲間が入っており、陣営4人中、二人はもう瀕死状態で治癒魔法すら反応が無かった。
「うん、、多分。もう、時間の問題かもしれない」
「そうよね。何となく分かってた。また、、」
「君が、クライネ君か」
大木の奥から、瀕死の二人を守っていたセルスファーが歩いてくる。鎧は所々凹んだり、穴が空いていたり、金髪の頭は、髪が乱れており、壮絶な環境だったと物語っていた。
「フェイン陣営の皆さん。今回は、本当に助かりました。あのままだと、ずっと閉じ込められたままだったかもしれません」
セルスファーは、深々と頭を下げ感謝を述べる。逃げる際中、襲撃を受けキーアと同じく、機動職がやられ、安全な行動が出来ないままで居たそうだ。
「今回の恩は、一生をかけて返して行きます。改めて本当に助かった。ありがとう」
「良いのよ、セルスファー。私達がピンチの時、今度は助けに来てね。それよりも、二人を馬車に移しましょう」
瀕死に二人を、フェイン達の馬車に乗せると、荷台に隠れていたロアの存在に気付く。
「え!?ロア!?」
「フェインさん!そうだ!ロアだ!」
「久しぶりじゃないですか!ここまでクライネを?」
「そうだ、凄いな彼は。場所まで突き止めて、私を完璧に案内してくれたんだ。流石は、シャンディの紹介だな!」
シャンディの名前を聞いた時、クライネは、ふと思い出す。
「そう言えば、シャンディさん後で必ず行くと言ってましたが、本当なんでしょうか、、」
「え、シャンディここに来るつもりだったの!?」
「そう言ってたので、多分来るかと、、エレットが居たおかげで、解決しちゃいましたね」
帰る支度を終わらせ、帰路に着く。道中、何事も無く安全に領へと戻ると、門にはアリスが立っていた。
「おかえり、、皆さん、、」
「アリスさん!それに、、シャンディさん!」
「行くって、、言う事聞かないから、、行った所で、、危ないだけだし、、私が全力で、、引き留めた、、」
「それで正しいです。シャンディ、どうしてその身体で来ようとしたんですか」
フェインが、シャンディに詰め寄る。病み上がりの身体で、駆け付けようとした事に、心配と怒りをぶつける。
「だって、お前たちが怪我でもしたら、もう私には何も残らないだろ。本当に心配だったんだ」
「それは、私達もです。貴方を失ったりでもしたら、何も残りません。貴方は、これ以上悲しむ必要は無いんです」
「すまない、そう思っていてくれるだけで嬉しい。ありがとう」
「僕もですよ、シャンディさんが居ない世界なんて考えたくないですよ」
そういった時、何か告白してるみたいになってしまい、恥ずかしくなってしまった。
「そうか、クライネにも心配かけてしまったな」
優しく、頭を撫でるシャンディ。お互いに怪我無くて安堵する。
「それでね、、シャンディ、、実はね、、」
そんな中アリスが、シャンディに耳打ちする。話を聞いたシャンディは、僕の身体を凝視する。
「な、、なんですか、シャンディさん…」
シャンディは、僕の首元を見た後、バッグを奪い取ると中身を漁る。
中身を確認したシャンディは、僕を見て、声を震わせながら確認する。
「ク、、クライネ、、お前、手形は、、?」
更新です、いつもより少し長めです。難しいですね。




