その27:その先の絶望へ
「おい!森の入り口も、そろそろだぞ!」
フェインらが、馬車を護衛しながら進む中、クライネとロアも森の入り口まで辿り着いていた。
時間にして、三十分強程の差。
「ロアさん!ありがとうございます!目的地までは、僕が護衛しますので、警戒しながら進めて下さい!」
「了解した!なら、私は、馬車の運転に集中すれば良いんだな?」
「そうなります!目的地まで、もう少しだけお願いします!」
フェイン達と同じように、馬車を護衛する形で、僕は、ゆっくりと進める作戦を取る事にした。
「フェイン達も、セルスファー達の場所の特定が出来たみたいだな、車輪の後が目的地まで続いているぞ」
「と言う事は、道自体はこれで合ってるみたいですね、、フェインさん達が制圧してくれてるお陰か、数も思ったより少ないですし…」
クライネは、ここの森に向かう道中ある事を後悔していた。それは、ジェイルからこの端末を貰った時の事だ。
「ジェイルさんに、フェインさんと連絡先交換しておけって言われてたのにな、、交換しておけば…」
僕は、あの時後からでも大丈夫と思っていた為に、急に出発したフェインを、呼び止める事が出来なかったのだ。連絡先を交換出来ていれば、合流も出来たかもしれない。
(ただ、あの時は、時間に急いでいた、、馬車を止める様な時間は残されていなかった、、と思いたい)
ジェイルとの、魔法の訓練が功を奏して、馬車を襲う魔物の数は、クライネ一人で、対処出来る程まで少なくなっていた。
「これなら、追い付くのも時間の問題かもな!流石は、シャンディ期待の子と言った所だ!」
「ロアさん、もしこのペースで進めたとしたら、地図のあの場所までにどれくらい差を縮めれそうですか?」
「そうだなぁ、二十分弱くらいには抑えれるんじゃないか?」
「その間、フェインさん達が耐えてくれれば、、頼みますよ、、フェインさん…」
フェインらが、作ってくれた道を突き進んでいく。道端に討伐された魔物の、死体が転がっていた。
その頃、フェインは、目的に近付くほど増える敵の個体数に、若干の苦戦をしていた。
「ジェイル~、ちょっと私、そろそろ障壁を展開する程の魔力が無くなるかも、、」
「目的地まで後、二百メートル切ってるんです。もう少しだけ耐えて下さい!」
「鬼だわ、、鬼が居るわ…」
だが、確かにこの障壁のお陰で、直接的な被害が抑えられてるのは事実だった。治癒で、攻撃を受けながらと言うプランも出来るが、出来るならその択は取りたくない。
「フェインって、馬術習った事無いのか?」
「えぇ!?もうそんなの、思い出す事も出来ないくらい前よ?しかも、特別上手い事は無いからね?」
「私がジェイルと変われば、ジェイルが代わりに障壁を出して、私が攻撃担当になれば良いだろ?」
フェインは、過去の事を覚えているかとても心配だったが、渋々運転を、フロストティと入れ替わる事になった。操作を変わった馬車は、フェインが操作を思い出していないせいか、スピードが少し上がってしまう。
「ちょっと!フェイン!速度落として!落として!」
「えっと、、えっと、、こういう時は…」
「手綱を!ゆっくりと控えて!」
フロストティの助言もあって、馬は落ち着きを取り戻す。
「そう、で、控えた馬は口を痛めるかもしれないから、手綱を譲ってあげて」
「そ、そうね、、そうだわ、、思い出してきたわ、ありがとう…」
「フロストティ!忙しいところすまない!魔物の掃討をお願いして良いか!」
フロストティは、フェインから記憶を引っ張り出すと、正面に戻り、剣を引き抜いた。
ジェイルが障壁を展開する。
「久しくの、戦闘だからな!ちょっとわくわくしてくるな!」
「油断だけはするなよ!」
剣を的確に、魔物へと命中させていく。ジェイルの衝撃波に比べ、直接倒す事が出来る為、討伐の速度が上がった。ただ、接近戦の為に、被傷のリスクも上がる。
「フロストティは、そのまま戦って貰って構わない!私が、同時に治癒させるから!」
「そんな事したら、魔力の消費半端ないだろ?大丈夫か!」
「良いんだ!それよりも、目の前の敵に集中してくれ!」
治癒魔法と障壁魔法を、同時に発動するジェイルを心配してフェインが声をかける。
「私が、治癒魔法出しても良いのよ?もう、ある程度馬の操作も思い出してきたわ」
「フェインは、今は、魔力の回復に努めて下さい!もう、目的地はすぐそこなので、それまで耐えれば、その後は、私は後ろで、援護しますから!」
フロストティの剣士の腕もあり、目的地も見える距離に居た。その時、場所の更新がセルスファー陣営から、送られてくる。
「ジェイル!場所は更新しても移動していない!やっぱりそこで間違いないわ!」
「分かりました!このまま突き進みます!」
遂に、目的地の出口側に到着する。そこには、フェインの想像通り、セルスファーを逃がすまいと、魔物がまとまっていたのだ。
「ここで、馬車は止めていきましょう。私も、戦闘に加わります!」
フェインは、馬車を止めると、運転席から飛び降りる。道中の魔物を倒し切り、フロストティも出口の魔物の群れに身体を向ける。
「私達で、可能な限りの魔物を相手するから!一旦ジェイルは、後ろに居てほしいの」
「はは、助かります。丁度、私も魔力切れかけてたので、、すぐに回復させるのでちょっと頼みました…」
「えぇ、本当に助かったわ。ありがと、ジェイル」
ジェイルは、安全になった来た道の、二人が見える位置で馬車の影に座り込む。
「じゃぁ、こんな数、十分もしないで倒していくわよ!フロストティ!」
「数は、四、五十と言った所か、分かってるよ!行くぞ!!!」
セルスファー陣営が一ヶ所に抑え込まれる程の数と考えると、ここの魔物数なんて比にならないだろう。
ここをすぐに突破して、救出に向かわなければならない。こんな所で足止めを喰らう訳にはいかない。
「そこをどけぇぇぇ!!」
フロストティの剣が、豪快に敵をまとめて薙ぎ払う。その間に受けた傷は、フェインが治し、仕留め損ねた魔物に、攻撃魔法を当てていく。そのコンビネーションは、まさに理想そのものだった。
「後ろ!硝煙の施す業火を放て!フロストボール!」
敵を足止めするくらいなら、入門魔法でも十分だった。みるみる敵の数は、数を減らしていく。
このままなら、本当に五分もあれば突破出来そうだった。
しかし、敵を減らす中で、フェインの目に絶望的な状況が視界に映ってしまう。
「あれって、、何あの数の魔物の群れは…」
「多分、あの中央にセルスファーは居るんだよな、、?」
そこには、この出口側の魔物の数と比べると、十倍、それすらも超えそうな数の魔物が居たのだ。
その魔物らは、一本の木を包囲する様に集まっている。
「多分、あの大木の中、、に居るはず、、エレットが入り口を魔法で塞いでいるか、はたまた物理的に入り口を塞いでいるのか、、まだ、ここからじゃ何も見えない数だわ…」
「今は、ここの残りに集中しよう!幸い、こっちには向かってきていない!」
「えぇ、分かったわ!」
二人の奮闘もあり、出口側の安全を確保する事に成功した。とは言え、この五十体程の数でダメージも馬鹿にならない、治癒魔法こそあるものの、あの数を相手にした時それを上回る、もしくは、回復する前に致命傷すら負ってしまう可能性すらあった。それ程の数だった。
「これ、どうすれば良いの、、もう、作戦もへったくれもない…!」
「徐々に引き剥がして、討伐していく事も出来なさそうですね」
「ジェイル!もう、大丈夫なの?」
「えぇ、二人のお陰で魔力も十分に回復しました。ただ、この数、三人だと骨が折れそうですね」
だが、目の前のセルスファーを見捨てる訳にもいかない。フェインは、究極の選択に迫られていた。
「私が、囮を引き受ける!数を可能な限り、群れから引き剝がしてお二人の攻撃範囲に引き込むから、そこを叩いてくれ!」
「お前は馬鹿か!そんな事したら、一歩ミスれば、魔物の群れに飲み込まれるだけだぞ!威力が多少落ちたって構わない。私が、超広範囲に雷の魔法を落とせば、多少は、倒しやすくなるはずだ!」
「でも、そんな広範囲だと、ジェイルの回復したての、魔力がすぐに枯渇するでしょ?魔術が使えなくなったら、ただの人、その先なんて誰でも想像出来る、そうでしょ?」
三人は、知恵を出し合うが、どれも失敗した時の結末は、死ただ一つ。
「あ、、フロストティ、、私、、私、目、合ったかもしれない…」
フェインが、そう口にした時、魔物の群れが雄たけびを上げる。声が重なり合い過ぎて、もはや一つの地鳴りの様な、塊のような声、それは彼女らにとって、絶望の声だった。
更新です。難しい。本当に毎回言っていますが、とても難しいです。
気合いです。でも、楽しいです。




