その26:停滞と進行
機動兵の馬車に乗り込み、僕はフェインの後を追う。
彼女達も、セルスファー陣営を救う為に、全速力で向かっているはずだ。
ただ、僕の馬車と、彼女の馬車には決定的な違いがある。
(馬車の運転、、確か、フロストティが請け負ってたはず、、彼女は馬車の操作は出来るものの、機動職では無い。もしかしたら、技術の差で距離を縮めれるかもしれない)
「運転手さん、今更ですがお名前聞いてなかったですね。お聞きしても?」
「私ですか?私は、ロア、機動職のロアだ」
「ロアさんですか。良いお名前ですね。僕はクライネ、シャンディさんの陣営に所属しています」
「あぁ、聞いてるさ。絶対に傷付けるなよ、だってさ。本当にお気に入りなんだな」
彼は、シャンディの知り合いらしく、連絡を受け彼女の頼みならと、危険を顧みず僕を安全に送ってくれる約束を交わしたと言う。白髭を生やして老いぼれているが、実力は確かだと出発する時に、シャンディが教えてくれた。
「機動職であるからには、君を安全に送り届ける。安心してくれ」
機動職は、地形に富んでいる。荒れた所を避ける技術、馬の素質を最大限引き出す力。
そして、彼らの職の守りとして、運ぶものを安全に送り届けると言う誓いがある。
現に、揺れは一切なく、凹凸を感じないレベルだった。
「実は、追いかけてるフェインさんの馬車、運転手が機動職じゃないんです」
「なんと!誰が運転を?」
「フロストティさんです、彼女が今は手綱を握ってます、なので、そこまでの速度が出せないはずです」
「なら納得だ!あやつ、荒っぽいが操作は、出来るんだよな、操作は」
ロアは、追いかける相手がフロストティだと分かると、なびく髭を軽く触り整える。
「ちょっと、速度を上げるぞ、、!なーに、荷台でゆっくりしておれ。気付けば追い付いてるはずさ」
馬の速度が加速する、周りの風景も早く流れる、なのにそれでも揺れが無い。
キーアの時も揺れは少なかったが、ロアに比べると、かすれて見える程だった。
「距離は縮めれるが、追い付く事は出来ない事を予め知ってて欲しい。一時間と言うのは、かなりの差だからの」
「分かりました。僕もシャンディさんを信じているので、その人の紹介なら、全面的に信用してます」
「おぉ、良いぞ。信じておれ!」
その時、前の馬車では、フェイン達が救出の為の準備を進めていた。
「セルスファー達は、今現在この奥の森で、撤退を魔物から阻止されている状態だと言う報告を受けているわ」
「フェイン、多分、、」
「えぇ、恐らくはここ。ここの大木で囲われた所」
フェインが、地図に指を差す。そこには、森の中にまるで、壁の様に生えている箇所が存在した。
「ここは、馬車が通れないような細い場所が入り組んでて、ただでさえ、道が少ないのに魔物に塞がれたら、それは出る事が出来ないに決まってるわ」
「で、、ここが遠征の目的の場所…」
「そう、探索が不十分で行ってもらってたのよ。もしかしたら、新しい地脈があるかもしれない、なんて報告も上がってたし」
以前より、この森には地脈の噂が立っており、魔物が居なければ、生活の場所を広げる事が出来る。
「だけど、もう既に魔物が住み着いていたって事?」
「今回の襲撃を考えると、そう考えるのが一番自然ね。それで、逃げ道を塞がれた、、」
「ちょっと地図を貸して、フェイン。むむ、、」
ジェイルが、地図からどこら辺に居るか、情報から正確に絞り込もうとする。
救助要請を出した場所は分かるが、もしかしたら敵に追われて、移動している可能性があるからだ。
「フェイン。あれから、場所の更新は来てない?」
「間隔的に来てるけど、向こうも必死なのかその間隔も、広がりつつあるわ」
「それでも、更新には大きな意味がある、、ちょっとフロストティ!もう少し揺れどうにかならないの?」
「だぁ!これでも気を付けてる方なの!スピード出してるから仕方ないじゃない!」
筆記具を取り出して、荷台で広げた地図に、おおよその位置関係を書き出す。
フェインが知る限りの馬車の通れない道、救難信号の場所、これから答えをはじき出す。
「フェインは、情報が来る度に私に教えて欲しい」
「任せて!来たら、すぐに伝えるからね!」
「フロストティは、ごめん、急ぐ気持ちからきつい言い方をしてしまった。可能な限り飛ばして欲しい」
「え、えぇ、私こそ、そっちの事情考えずに申し訳ない。出来る限りの事はするから」
二台の馬車は、救出の決戦の場でもある、森へと近付いていく。すると、フェインの端末へ、位置信号が送られてくる。
「居た!ここよ!」
地図と位置を照らし合わせて、ジェイルも地図に丸を付ける。
「間違いないね、ここ、、」
同時に、その情報は端末を所持した、クライネにも届く。彼もまた、その信号から場所を確信する。
「ここは、、」
その場所には、森のやや右側にある、馬車が通れる出入り口が二か所しかない場所だった。前回の更新から、場所が変化していない。今までは、少しずつでも森を抜けようと進んでいたものの、初めてここで停滞した。
「片方から入ったとすれば、もし、もう片方を塞がれたとしたら、この更新にも納得出来る、、」
「どこだ!どこに向かえばいい!」
「すみません!ロアさん!ここです!見えますか!」
クライネが、持ってきた地図から、絞り込んだ場所を指でグルグルと丸をする。
「分かった!ここに向かえば良いんだな!任せなさい!」
「頼みました!僕は、救出の為の作戦を考えますので!」
場所を絞り込んだ一行は、馬を走らせる。停滞したセルスファー陣営を救う為に。
フェイン達は、目的地である森の近くまで接近していた。森に近付くにつれ、魔物を良く目視するようになった。
「駄目ね。直接は、目的の場所へは行けない。都度馬車を降りて、倒していきましょう」
「私もそう思う。私達まで、追われる側になったら何の為に来たか分からない。気を付けて行こう」
フロストティは、馬車の速度を落とし、周りを警戒しながら馬を進める。
それを、馬車から降りたフェイン、ジェイルが護衛する形で進める事になった。
「私は、障壁展開させながら歩くから、ジェイルはその内部から、近寄る敵を一掃して欲しいの」
「分かった。頼んだよ」
話をしている傍から、馬車に向かって、魔物が飛び掛かってくる。グラとは違い、黒く、ユラユラと影めいたものだった。でも、確かに四足。
「今回の魔物は、魔獣のタイプ、、群れで動く厄介者ならこれが…!大地に辿る道を悪しきもの伝えよ!フォースパルス!!」
内部から攻撃魔法を放つと、私達にも影響が出るかもしれないと踏み、衝撃波を相手に伝える魔法を唱えるジェイル。放たれた魔法は、魔獣達を弾いていく。敵が伸びた所を、火球で燃やしていく。
「さっすが!ジェイル!その調子で頼むわ!」
「今の所は、この繰り返しでどうにかなりそうだけど、進む度に、魔獣が増えるのを実感してる。もしかしたら、馬車を一度、置いていくのも視野に入れた方が良いかもしれない」
「私も、戦った方が良いって事ね。分かったわ!その時は呼んで!」
フェイン達は、その後もセルスファー達を救う為にも、馬車と共に、歩みを進めた。
「待ってて、セルスファー達、、!私達が今向かってるから…!」
更新です。難しいです。難しい。




