その23:宛先不明
僕と、ジェイルは無事、ヘレイ草を入手し、シャンディの目覚めを見守るのみとなった。
トール領へ戻ると、門の前で立ち止まっている女の子が居た。
「クライネ、帰ってきたのね」
エレットだった。彼女は、物資補給も終わり、また、この地を後にするらしい。
「エレット、また来てくれたんですね」
「一応、同じ境遇だし挨拶くらいはね、もう私も領外に行かないといけないから」
「次帰ってくるのは、いつ頃なんですか?」
「多分、3週間もすれば戻る。物資補給で帰ってきただけだから、大方任務は終わってるし」
そう言い残すと、彼女は一枚の紙を渡してくれた。そこには陣営名と名前と番号が書かれていた。
「これは?」
「え、もしかして知らないの?クライネ、連絡の魔道具持ってないの?」
「知ってはいるんですけどね、、道具自体は持ってないですよ」
僕は、今まで横で連絡を見ているシャンディを見ていたが、魔道具自体は所持した事が無い。
「そうか、クライネ君魔道具持ってないのか。少し待っててくれ、元々シャンディが渡すつもりだったみたいだからな、持ってくる」
話を聞いていたジェイルが、城の中へと戻って行く。事案が立て続けに起こったが為に、渡せなかったみたいだ。
「クライネ、今までどうやって連絡してたの、、陣営の人なら、欲しい人誰でも貰えるよ…?」
「僕ですか?常に誰か伝いに聞いてましたよ。全く知りませんでした。周りは、フロストティかシャンディしか持ってませんでしたし」
僕の、連絡事情に呆れていたエレットだった。まさか、持っていないとは思っていなかったみたいだった。
「おーーい!持ってきたぞー!」
そこへ、ジェイルが端末を掲げて戻ってきた。貰った端末は、シャンディの好きな赤色で作られていた。
端末を開くと、現代で言う連絡帳の様な欄が出て来た。
「クライネ君の端末には、中央部からの知らせは来る設定になっているよ。シャンディの陣営は、フロストティと、シャンディしか見れないし、何なら私は、そもそも端末自体持ってないしな」
「えっ、、と、、ジェイルさんでしたよね、、貴方も持っていないんですか、、?不便では…」
「あぁ、昔から私は、こう言う端末に不慣れでね、紙で残すのが一番良いと思ってる人なんだ。そうだ、君も後で、フェインと連絡先を交換すると良いさ」
「そうなんですね、、分かりました、時間出来た時に交換しておきますね」
僕は、貰った情報をもとに、エレットと連絡が出来るようになった。ただ、現代の様に電話の機能は無く、チャット形式で連絡を取り合う事しか出来なかった。
「何かあったら、連絡して。シャンディさんとも私、ちゃんとお話してみたいし」
「分かりました!では、エレット。ご武運を」
「言われなくても分かってる。貴方こそね、ちゃんと次会えるように元気でね」
エレットは、走って領外に続く門への道を進んでいった。次は、三週間後か、、。
「さ、戻って治療をしよう。シャンディが待っている」
「ですね、行きましょう。ジェイルさん」
その頃、フロストティは、馬車に乗り、ピース領へと向かっていた。
「いきなり休めって、何事なんだ、、働き過ぎは良くないって、確かにここ最近陣営色々あったし、働き詰めだったけど、やりたい事あったんだけどな。ま、今日は久しく呑もう」
馬車で揺られながら、笑顔で領へと向かうフロストティ。休みの日はあったものの、仕事を影でコソコソとやっていた事もあり、純粋な休みを取るのは、領に帰ってそれっきりだった。
「フロストティさん、着きましたよ。ピースです」
「んあ。着いた?ありがとう、寝てしまっていたか」
馬車の揺れの心地が良く、眠っていた。気付けば辺りの景色は変わり、生活用品や酒屋で民衆が賑わっている。
「さ、んーーーーー。どの酒屋に行こうかな、、」
馬車から降り、大きく背伸びをする。フロストティは、どこの酒屋に行くか悩んでいた。
「ここから、一番近い酒屋でも良いけど、、こういう機会だし、ちょっと遠くの気に入ってる酒屋まで足を延ばすか」
酒屋への道中、石畳の階段を上っていた。脳内は、既に何を呑もうか考えていた。
「げっ、あれって、、」
正面から、知ってる顔が近付いてくる。階段は一本道で、もうすれ違う事が確定していた。
「えぇ、、顔見られないように、、」
正面の人から、顔を見られない様に壁側へ顔を背け、着ていた服を一枚脱ぎ、フードの様に頭から被るフロストティ。
「ん?あれ?フロストティ!!!!フロストティだよな!!!」
「うげ、、見つかったし…」
対策虚しく、男性から声をかけられてしまう。思わず、顔が歪む。
「久しぶりじゃないか!!何だい、呑みに来たのかい?」
「なぁ、もう他人だって前言ったよな?久々の休暇を腐らせないでくれよ、、」
「固いこと言うなよ!昔、付き合ってた仲だろ?」
「そう言う所、ドラグのそう言う所が無理」
昔、付き合っていたものの、彼の散財癖に嫌気がさしたフロストティは、トールへ所属する事を機に、別れを告げていた。
「ドラグが居る事をすっかり忘れていたわ、、不覚すぎる…」
「呑みに行くんだろ?一緒行こうぜ!俺もさ、反省して今はお金持ってるからさ!奢る!!奢るから!」
「もう、ほんっと嫌。逃げてもどうせ着いてくるんでしょ?」
「断られたら、その時さ。もう一度誘うまでだよ」
フロストティは諦めた。多分このまま話していても、時間だけが過ぎていくだけだし、貴重な休日が消えてしまう。
「一回だけ、一軒だけ。分かった?」
「いぇい!ありがとう!流石は、フロストティ!」
「何で、過去の私こいつの事、好きだったんだろ、、」
二人は、フロストティが行く予定だった酒屋へ、行く事になった。
先を歩く、ドラグ。その背中を見て、顔がずっと歪んでいるフロストティ。その空間は地獄そのものだった。
「ここだろ?知ってるからな!フロストティの好きな物は!!」
「何で覚えてるのよ、、気持ちわる…」
「そりゃぁ、過去付き合ってたからに決まってるじゃないか。さ、入ろう」
店へ入ると、二人は酒を頼む。正直、フロストティは気が進まなかった。一杯だけ呑んだら、分かれて店を変えよう。
「最近はどう?中央で頑張ってるのかい?俺ずっと心配してたんだよ」
「陣営の事で、手一杯。やれる事をやってる感じね」
「流石!もう、エリートだね!中央でもさぞ、活躍してるんだろうね!」
「ま、まぁ、、ね」
一方的に話を進められる、もう早く切り上げたい一心だった。自分のペースに、話を戻さなければ。
「最近、もう変な事ばかりよ。疲れるだけ、だから休暇を取ったら、ドラグが居るんだもの最悪よ」
「そんな事言わないでくれよ、あ、変な事って、最近暗躍してる兵が居るってやつ?俺も耳にしたけど、奇妙だよなぁ」
「ちょっと、その話、聞かせてくれない?」
「え、この話じゃなかった?なら、、ただでとは言えないなぁ…」
ドラグが、揺さぶってきた。でも、もしかしたらこの話が、私達の追い求めているものかもしれない。
「分かった。何すれば良いのよ」
「なぁに、簡単さ。この後、俺と一日付き合ってくれよ」
こんな嫌な奴と、一日居る事になるなんて。休暇とは一体何だろうか。
「はぁ、、分かった。で、何?その話って」
「物分かり良いねぇ!!流石は、フロストティ!でな、その話なんだけどな、、この酒呑んでからな!」
「は?じゃぁ、この酒、一緒に飲み干してよ。それじゃないと呑まない」
「しっかたないなぁ、、ほれ、呑むぞ?」
二人同時に、酒を飲み干す。生憎、私は、昔から酒は強い。
「それで、話続けてよ。その兵について」
「そうだなぁ、、俺な、聞いた話だけどよぉどうやら、フィレアス領で最近変な噂が回っててな?」
それからと言うものの、ドラグはフロストティに酒を勧めてくるが、華麗に同時のみを促し、ドラグから話を聞き出した。
「で、フィレアス領で変な張り紙が、貼り付けられていたと。それで、内容はトール領が狙われているから?怪しい事は無かったかと尋ねる張り紙ぃ?」
「そ!!!!それでな!!!誰が貼ったかも分からないし、でも掲示板に貼られていたから信頼した一部の人が、その掲示されてた紙に、書きこんじゃったとよ!!」
「誰か見当も付かないの?見てた人くらい居るでしょ」
「その日、巡回担当だった人は知らないけど、その日はこの店で、グェーニェと会ってよ!!ずっとその後は、朝まで飲み明かしたってもんだ!!」
その後も、話を聞き出していたが、向こうも相当酔っているのか、同じ事ばかり話し出すし、ここらが切り上げ時だろうか。しかも、大分飲んだ、ちょっと視界がふらつく。ただ、良い事を聞き出せた。このまま、帰らなくては。
「もう、良いわよね。私帰る。帰らなくちゃ」
「えええええ!!もう帰るのかい?じゃぁ!!!最後!!最後に!!!」
「はぁ?また?何?」
「手の甲!!!手の甲で良いから!!!キスしてくれ!!!お前に会いたくて、俺ずっと待ってて!!」
ドラグが泣き出してしまった。昔から、こうだった。酒を呑んでは、泣いて。私はそれを介抱して。
私もそう、酒を呑んで泣かれると、情に訴えられると、緩くなってしまう。
「分かったら!!!泣かないでよ!!これで良いんでしょ?」
フロストティは、頬にキスをすると、ドラグが、店先で待っててくれと言うので、最後の気力で、店から出る。お会計は任せろとの事。
「こんな事、付き合ってる時、一度も無かったのになぁ、、」
店から、ドラグが出てくる。店員が、頭を下げてドラグを見送る。
望んだ、ドラグとの別れの時が来た。
「へへへへ、、じゃぁよ!!また、ここで待ってるからよ!!情報仕入れておくわ!!!」
「嫌!!もう帰ってきません!!!」
ふらつく足元で、フロストティは呼んだ馬車へと乗り込む。見送るドラグであったが、腰のポケットから、一通の手紙を取り出す。封筒の中には、銀貨が詰まっている。
「家に届いた手紙で、教えてもらった通りにしたけどよぉ、、これで金貰えるって簡単だなぁ!ただ酒も飲めるなんてよ!」
宛先不明。そんな手紙をドラグは、ポケットに仕舞い直した。
更新です。難しいです。本当に。




