その20:もう一人の傷
あれからと言うものの、僕はシャンディのそばに付きっ切りで看病し続けた。
「本当に、麻痺の根本を傷痕が発光して治せるだなんてねぇ」
ジェイルが、物珍しい物を見る様に、覗き込んでくる。
まだ、シャンディに反応は無いが、治っていく感覚がした。
「シャンディの治療法、見つかったって本当か!?」
「大きい声を出すんじゃないよ。私達しか居ないとはいえ、治療室だぞ」
「はは、ごめんごめん。本当だったらとても嬉しい知らせだったからつい、、」
治療室の扉を、フロストティが勢い良く開けて入ってきた。
「本当だよ、、シャンディ、、治るかもしれないよ、、」
「良かったぁ、、」
へなへなと、安堵しながら、床に座り込んでしまった。相当気にしてて、気も張りつめていたんだろう。
「それで、どれくらいかかりそうなんだい?」
「正確な時間は分かりませんが、これを続けていれば治ると言う事だけは」
「そうか、それが聞けただけでも良かったよ。私、仕事の途中で抜けて来たんだ。またな!」
そう言い残すと、フロストティは自分の事を消化する為に、場所へ戻っていった。
忙しい中来てくれるとは、シャンディの人望が伺える。
「これからどうするのかい、クライネ」
「これからですか?急になんですか」
「ほら、傷痕のある女の子に会いに行くんだろう?」
ジェイルは、セルスファー陣営の事を切り出す。もうすぐ、物資補給の為に戻ってくる。
「私の方から、、お話通してくる、、?いいよ、、」
「そうしてもらえると、助かるかもしれないね。急に、話を通しても向こうもやる事あるかもしれないから」
「あの!前から気になっていたんですけど、その女の子の名前ってどう言うんですか?僕、今の今まで聞いてないなって」
「名前は、えぇっとなんだったっけな、、」
ジェイルが思い出そうと唸っていると、アリスが口を開く。
「確か、、エレット、、えっと、、あっ、、エレット・フォントネット、、」
「そうそう、エレット!そんな名前だった気がするぞ」
エレット・フォントネット。それが、彼女の名前だった。
「領内に居たんですよね。そこを保護されて、腕を買われて陣営に入ったって聞いてたんですけど、、」
「ちょっと、、違う、、あの子、、両親が居るけど、、複雑な理由で、、」
「複雑な理由、、ですか?」
何と、親が居たとは。僕と全く同じ境遇じゃないか。
「親から、傷の事で忌み嫌われてたみたいでね」
「え、自分の子供なんですよね?」
「そうなんだよ、それで家に誰も居ないからって、領内をさ迷ってて帰ってくるのも遅いし、もしかしたら帰ってこないかも、何て言うからさ、私達で保護するしかないじゃないか」
複雑な家庭事情で、傷痕を周りに見られる事を嫌って、育児を辞めてしまっていたみたいだった。
もちろん、僕も傷痕があったが、周りから変な目で見られる事なんてなかったし、逆に傷痕がきっかけで、話しかけられるなんて事もあったくらいだからな。
「それで、今のセルスファーさんに保護されたって事なんですね」
「どうやら、魔術のセンスがずば抜けてて、加入してから、陣営誰一人負傷して、帰還した報告を受けていないらしい」
それを聞いた時、少し胸が痛くなった。もし、あの時僕じゃなくて、エレットだったら、なんて考えがよぎってしまった。
「あ、、クライネ、、今、、気にしたでしょ、、」
「えぇ、やっぱりそういう話を聞くと、気にしちゃいますね」
「いやいや、クライネが居たからこその、今があるんだ。現に、シャンディを助けれるのは君だけだからな」
ジェイルが、しまったと言う顔をして、僕のフォローをしてくれる。
「大丈夫です。ジェイルさん、僕もそう思ってますから」
「それでだね、そのエレットって言う子に会って、何を話すつもりなんだい?」
「それは、、まだ、何とも言えませんが。贅沢は言わないので、知ってる事を教えてもらおうかなって」
「会ってからじゃないと、話せる事も話せないからな。分かった、アリスと私の方で、向こうには話を通しておこう」
言葉を濁したが、エレットに会ったら、僕は、正直に前世の事を話そうと思っている。
彼女からは、同じ匂いがした。どこか直感で、繋がっている気がしたからだった。
日が過ぎ、僕は、ずっと治療室に足を運び、手をかざし麻痺を拡散させる。
そんな日々を過ごしていた。
「おい!クライネ、帰ってきたぞ!」
「ジェイルさん、こんにちは。それで、帰って来たって誰がですか?」
「前に言ってた、、セルスファー陣営が、、帰ってきたんだよ、、」
ひょこっと、ジェイルの後ろからアリスが出て来た。どうやら、もう既に、エレットが治療室まで来ているらしい。
「準備は良いかい?私達も、居ても良いかい?」
「えぇ、居て頂いて構いませんよ。僕は、この日を待ち望んでました。今更、準備出来てないなんて言わせませんよ」
「そうか、じゃぁ、エレット入って来てくれ!」
ゆっくり、治療室の扉が開く。
「失礼します。初めまして、エレット・フォントネットと言います」
目の前に、エレットが居る。透き通ってて、向こうが見えるんじゃないかと思う程の、白い髪の毛。
身体も細く、アリスと良い対決をしている。
「それで、お話の相手はどなたでしょうか?」
「あぁ、そこに居る子だよ。彼こそが、お話していた傷痕のある子だよ」
「僕です。クライネ・トダンと言います」
僕は、手を上げ、一旦治療を中断する。エレットの方に駆け寄っていくと、更に、髪の毛の透明感に驚いた。
「貴方ですね、傷痕のあるって言う子は」
「そうです、早速ですが、聞きたい事を聞きますね」
「なんでしょう。私に答えれる事なら」
「貴方の出身を聞いても良いですか?」
敢えて、エレットには、少し遠回しに聞く。少しずつ、周りを固めていこう。
「出身ですか?私は、この領で育ってきましたよ」
「いや、その、何か、、」
えぇい、少しずつは無理だ!
「前世の記憶はあるかい!?」
「前世、、ですか、、?いえ、それは、覚えていません。すみません」
軽く頭を倒すエレット。言い方的にも、隠している感じはしない。気のせいだったのだろうか。
「そっ、そう?ごめん、変な事を聞いたね。忘れて」
「でも、多少の違和感を抱えながら、生きてきたのは確かです。覚えてないだけで、もしかしたら、前世があったかもしれないです」
「、、僕も!僕もです!それを知りたくて、自分の事を知る為の、修行をしています!」
エレットは、多分仲良くなっていた方が良い、そう思う。
「それで、エレットさん。貴方の傷痕は、どこにあるんですか?」
エレットは、くるっと回ると、トントンと背中を叩く。
「ここ。ジェイルさん、私の服後ろめくって下さい」
「う、うん。良いけど、エレットは見せても良いのかい?」
「もう慣れました。彼も、傷痕があるそうですし。見せておこうかなと」
エレットは、前を抑え、ジェイルが背中の服をめくる。
傷痕を見た時、その場の全員が、息を吞んだ。
「これが、私の傷痕。どう?」
そこには、僕の腹部の傷痕の範囲など、比にならない。背中を覆い隠す程の、大きな傷跡があった。
昨日は更新出来ず、おでこをすりすり地面に擦り付けながらの更新です。
本当に、難しいです




