その18:休息と傷跡と
第一位フィーゲルの力もあり、ペルゲンガーの撃破に成功し、シャンディの救出にも成功した。
しかし、シャンディはあれから数週間経過するが、目を覚まさない。
「クライネ、そばに居てあげるのも良いけど、自己研鑽も怠らない様にね。研究室で、待ってるからさ」
「ありがとうございます。ただ、今は、こうして起きたいんです」
治療室で眠るシャンディの横に座り、目覚めの時を今か今かと待つ日々。強い麻痺薬による、作用だろうと診断を受けている。
「シャンディさん、領、守れましたよ。いつでも帰りを待ってますから」
そう言い残すと、僕は研究室へと向かう。
ドアの前まで行くと、ジェイルとアリスが居た。
「あれから、、シャンディの様子、、どうなの、、?」
「まだかな、私も麻痺薬の効果を、打ち消す治癒魔法を探してるんだけど、もう少しかかりそうなの」
「治癒魔法、、外傷的なものしか、、効果、、無いもんね、、」
「初めてだよ、昏睡状態になる程強い麻痺だなんて」
「あっ、、クライネ、、来たの、、?」
アリスに気付かれた僕は、2人の元へ歩み寄った。
「クライネは、、怪我、、無い、、?」
「えぇ、皆さんが守って頂けたお陰で、もう元気です!」
僕はその場で、屈伸運動をしてみせた。
「君が、元気そうで良かったよ。さ、魔術の腕を、今日も鍛えようか」
「師匠!お願いします!」
「師匠、、?ジェイル、、弟子は取らないって、、」
「もう、過去の事よ。時代は、移り変っていくもの。私の気分も一緒」
(弟子を取らない話って、本当だったんだなぁ、、)
「そうだ、折角なら、アリスも一緒に魔術練習していく?」
「私、、武闘家だよ、、?」
「良いのよ、ほら、武闘家も魔術を練って使う事くらいあるよね?」
「あるけど、、魔法は使えないよ、、」
「じゃ、決まりね。クライネ相手してもらいなさい」
「え。」
急に陣営の長と、対決が決まってしまった。
腕を磨くには、これ以上の事は無いが、実力差は明らかだと思う。
「ま、ままま待って下さい。僕、今から陣営長と、タイマンするんですか?」
「だから、言ってるでしょ。相手してもらいなさいって」
「私で、、相手が務まる、、かな、、」
アリスが、格下と勘違いしたのか、身体をプルプルと震わせ出す。
「だぁ!そんな事ないですって!僕!僕の方ですから!命の危機を感じてるだけですから!!」
「こう言ってるけど、この子、強いから本気でやっていいからね」
「違います!語弊です!どうか、、お手柔らかにお願いします、、」
僕は深々と土下座をして、命を乞ったのだった。
「さ、私はここで見てるから、1回全力でぶつかってみてよ」
「クライネ、、行く、、よ!」
踏み出しが速すぎる、でも、以前の僕とは違う。
ジェイルさんが、魔術を使うにも関わらず、接近して教えていたのは、この為だったのか。
「フリーズショット!!」
僕は、アリスの足元を凍らせる。でも、構わず近付いてくるアリス。凍っては、砕き。凍っては、砕き。
まるで減速していない。
「それに、、私も、、幻影術、、使える、、」
「想定通りです!武闘家が主に使う技と、師匠から聞いてましたから!」
僕は、地面に手を置く。
「ウィンドトリック使う気なの?ここには生憎、砂埃起こせるような物なんて、、」
「あるんです、、!これが狙いです!ウィンドトリック!」
僕は、地面に、強い風を吹き起こした。
すると、空中にキラキラと光る物が、そこにはあった。
「氷、、私が砕いた、、」
「そうです!!氷は、足を止める狙いじゃないんです!」
「でも、、ペルゲンガーの時と、、同じように、、力加減を強くして、、実体と同じ位、、氷を動かせば、、見分け、、つかない、、!」
アリスは、ペルゲンガーが起こした反省を活かして 、実体と同等の氷の欠片が動く様に、力加減を調整して、揺らぎを作っていく。
「そこでです!僕が編み出した答えが、これです!!」
僕は、広範囲に魔法を展開する。
「これは、、治癒魔法じゃないか!対戦相手をヒールして何をして、、」
「これで、良いんです!そこです!」
僕は、小さな火球をアリスに命中させ、弾かれるように、優しく転倒する。
「え、、何で、、当てれたの、、」
「へへ、、」
「なるほど、へぇ、面白いね。治癒魔法を攻撃手段に使うなんて」
「待って、、私、、理解してない、 、」
アリスが椅子に座り、引きずりながらジェイルに詰め寄る。
「範囲魔法で、治癒魔法を使ったのよ。ヒールされた相手は、光るじゃない。緑色にさ」
「えぇ、範囲魔法なので、効果が微弱で若干光る程度ですが、十分に実体を見分けられます」
「そんな、、方法あったんだ、、」
アリスは、目を光らせる。自分の幻影術を見破られたと言うのに、ワクワクしている。この向上心が、彼女の強さの秘訣なのかもしれない。
「クライネ、、ありがとう、、私も、、その、、対抗策、、考えてくるね、、」
僕の手を取り、ぶんぶんと振る。身体が力に負けて、引っ張られる。
「おいおいおい、アリス、クライネが振り回されてるよ」
「はは、大丈夫です。何とか、、」
「ごめん、、ごめん、、つい、、」
アリスは、自分の鍛錬を行ってくると、その場を後にする。研究室には、僕とジェイルが残された。
「君は、本当に強くなったよ。まだまだだけどね。その場の危機を乗り越える力がある。中々な事さ」
「いえ、皆さんが居てくれるからです、、」
「あーあ。そんな事言うんだ。いっつも君は、周りを立てるんだから、なら、シャンディの治癒魔法も、私頑張らないとなぁ」
ジェイルは、机に山積みの紙を置いた。
「ジェイルさん、これって、、」
「今までの、研究の記録さ。もう少し、時間はかかるだろうけど、完成は出来そうだよ」
「本当ですか!流石はジェイルさんです!」
「止めろやい」
二人で戯れていると、そこへ、フロストティが立ち寄った。フェインも、一緒に居る。
「おーおー、楽しそうじゃないか、ジェイル。お気に入りだなぁ」
「楽しそうで、何よりです。ジェイルさん」
ニヤニヤとニコニコが止まらない2人。
「ちょ、ちょっと。止めてくれ。楽しくないと言ったら嘘になるから困るだろ」
「正直じゃないんだから!もう」
ジェイルが、自分の空気が悪いと感じたのだろうか。
「で、何の用なの?ここに来るって、目的があるでしょ?」
「もう少し、お話し続けたかったけどな、、」
フェインが、物足りなさそうな顔をしている。
「用があるのは、クライン君。貴方なの」
「僕ですか、、?」
「フロストティちゃん、お願いね」
「ちゃん、、?えぇ、まぁ良いでしょう。実は、傷の女の子と話したい、とか言ってただろ?」
「えぇ、でもあとひと月位は、帰って来れないと聞いてます」
「物資補給で、1度戻ってくるらしいぞ」
思っても無い事だった。念願が、遂に叶う時が来たのだ。
「それっていつですか、、!?」
「詳しくは、まだ分からないからさ。帰ってきたら、教えるよ」
僕と、同じく傷跡のある子が、この世界には存在する。
向こうも、傷跡の事を、謎に思っているのだろうか。
自分の事を、もっと知りたいと思っているのだろうか。
更新です。ペルゲンガー編はおしまいですが。
まだまだ、続きます。身体の謎を解き明かすまで、難しいと言い続けてるんでしょうね。
難しいです。




