その14:失踪
ジェイルとの、魔法修行は今日も続く中、研究室へシャンディが入ってくる。
「よぉ、調子はどうだ」
「あっ、シャンディさん!おはようございます」
「シャンディ、調子はどう?」
「もう、気にする事はない位にはな」
シャンディは、僕達が修行する間、フェインと話をし続けてくれていたみたいだ。
「フェインの方も、大分元に戻ってな。さっき、外に散歩しに行くって、出て行っていったよ」
良い兆しだった。後は、五引を迎え撃つのみ。
ただ、魔道具の件については、未解明のままだった。
すると、そこへ1人の兵が入ってくる。
「失礼します!クライン様へ来客です!」
「僕に、、ですか…?」
門まで行ってみると、そこには男性が立っていた。
「グェーニェさん…?」
「おぉ!帰ってきていたとは聞いてたけど、本当に居るとはな!!」
数年越しの再会、いつも領を巡回して、話しかけてくれていた人が、会いに来てくれていた。
「グェーニェさん!お久しぶりです!」
「だぁ、硬い硬いそんな、俺達知り合いだろ?」
グェーニェは、いつも笑顔だった。子供の時からずっとそうだった。
「お前、立派になったな。五引に立ち向かうんだって?」
「はい、なので今は、知り合いに魔術を教えて貰ってるんです」
「そうかそうか!頑張ってくれたまえよ」
そう言うと、僕をバシバシと肩を叩く。
「あっ。そう言えば」
「ん?どうした?」
「いや、、何でもないです。思い過ごしです」
キーアの事を話そうとしたが、グェーニェは監視の対象だと言うことをすっかりと忘れていた。
「何だよ、怖いなぁ!まぁ、深くは聞くまい」
「ははは、、そうしてもらえると…」
「これから、どうするんだ?」
グェーニェは、これからの僕たちについて聞いてきた。
「もう二日後には、領近辺まで、五引が来ると言われています」
「それを迎え撃つ訳か」
「、、はい」
五引に立ち向かうと聞いて、驚きを隠せないグェーニェ。ただ、やらなければこの領地までもが危ない。
第二の人生の故郷までも、失うなんて到底思いもしたくなった。
「気を付けろよ、五引の腕は相当なもんだ、幼い頃から見てきたやつが無くなる所なんて、見たくもねぇ」
「それは、十分に分かっていますよ。グェーニェさん」
そこへ、シャンディが話しかけてきた。
「やぁ、貴方がグェーニェだね」
「おぉ、貴方は兵長のシャンディさんじゃないか」
僕は、今はシャンディの元で、所属している事をグェーニェに話した。
「おーい、クライネそろそろ戻ってこーい。続き進めるぞ」
ジェイルが、僕を呼び戻しに来てくれた。
「ジェイルさん!今戻ります!じゃぁ、僕はこれで…」
「おぉ、気を付けろよ」
「シャンディさんは?」
「もう少し、グェーニェとお話していこう。先に戻ってていいぞ」
久しい顔を見て、少し気分も良くなった。僕とグェーニェはまたいつか会おうと約束を交わし、その場を後にした。
「すみませんジェイルさん。今、戻りました」
一応、グェーニェはあの日のリストに入ってる1人。
警戒するべき1人ではある。
「ねぇ、クライネ」
部屋に入ると、ジェイルが話しかけてきた。
「君、グェーニェと色々と、話してたよね。もしかして、キーアの事話したりした?」
「いえ、、思い留まりました。交流があったとはいえ、キーアの事は話せませんし…」
「それで良いんだ。よくやった」
とにかく、あのリストの人に情報は流せない。例え、身内であったとしても。
「さ、魔法の練習の続きだ。今日こそ、成長を見せてくれよ」
一方、シャンディは自室へ戻っていた。
五引と、どう戦うか戦略を練る。すると、部屋に一通の手紙が届いた。
「手紙…」
差出人など書いておらず、直接届けられたとしか思えなかった。封を開けるとそこには、一言。
『クライネの命を狙っている者がいる。』
すぐに戸を開け、外を確認するも、既にそこには誰も居なかった。ただ、この手紙が正しければ、クライネとジェイル2人、もしもの事があっては遅い。
シャンディは、急いで向かった。
「ジェイルが一緒に居るはずだから、大丈夫だとは思うが、不安だ…」
領外へと続く道を走っていると、家と家の間の路地に、人影があった。その人影は、シャンディの横から弓を放つ。
「なっっ…」
反応する間もなく、不意打ちにあったシャンディは、弓を受けてしまった。
「これは、、麻痺…それに視界もぼやけ…」
シャンディは、意識を失う。
次の日、クライネはジェイルの部屋で目を覚ました。
「昨日は、遅くまで練習漬けだったからな、、寝ちゃってたか…」
お陰で、クライネの魔術の腕は、メキメキと上達していた。これなら、五引相手でも足を引っ張る事は無いと、意気込んでいた。
「おい!クライネ起きてるか!」
そこへ、ジェイルが駆け込んでくる。
「おはようございます。こんな朝から、どうしたんですか、そんな表情でまるで何かあったような…」
「シャンディが、、シャンディが領内から居なくなった!」
一瞬、何を言ってるか分からなかった。
「家とか、領外とは言っても近くに居るんじゃ?」
「家は開いたままだし、これ…」
ジェイルが、家にあったと二通の手紙を取り出す。
「これって…」
それは、あの一言だけの手紙と、シャンディの置き手紙だった。
『クライネとジェイルが、危ないかもしれない行ってくる。』と
「しかも、私、シャンディの居場所を、聞き回っていたんだ。そうしてたらね、領外に向かっていたって…」
「領外?どうして?僕達領の外になんて、行ってないじゃないですか」
僕の顔を真っ直ぐと見つめ、ジェイルが口を開く。
「シャンディの身に、何かあったかもしれない」
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