その13:陰謀と研鑽魔術師
夜も明け、僕は五引の対策を行いながら、ジェイルと共に真相究明に乗り出す事にした。
「魔道具の件については私に任せて、君は五引の襲来に向けて準備を進めて欲しい」
「頼みました、お願いします」
何故、魔道具の情報は更新されなかったのか、ジェイルが確かめてくれるとの事だった。
「後、君にはフロストティと共に中央部の医療室に向かってほしい」
「もしかして、フェインさん気が付いたんですか?」
「あぁ、昨日の夜目が覚めたらしい」
話を聞くと、やはりキーアの件で気が滅入っているらしい。フロストティと共に、一度お話をしに行くとしよう。
「シャンディさん、僕少し外へ行きますからね。何かあったらすぐに来ますから」
「、、待て。私も付いていこう。フェインと話がしたい」
ジェイルがそんなシャンディを見て、声をかける。
「もう、大丈夫なのかい?」
「あぁ、クライネのお陰だ、昨日の食事は本当に美味しかった。もし、一人だったら変な気を起こしてたかもしれん」
「うん。大丈夫そうだね。どうかフェインの事を頼んだ」
僕達は、トール領の医療室へ来た。入るとそこには、窓の外を見ながら、ベッドに座るフェインが居た。
「あら、来てくれたのね」
顔色は決して良いとは言えない。ただ、回復したフェインの姿を見て僕は、安堵した。
「話は聞いているよな」
「えぇ、もちろん。目が覚めて、受け入れがたい現実がすぐ来て、気が動転してしまったわ」
フェインは、小さくため息をつく。キーアを、大切な仲間が目を覚ました時に居なかったら、誰だってそうなるだろう。
「フェイン、体調の方は大丈夫?」
「フロストティ、、えぇ、お陰様でね。でも、もう少しだけ気持ちの整理がしたい、、かな。貴方こそ大丈夫なの?」
「んー。まだ、正直受け入れられてないかもしれないわね」
今だけのこの時間、お互いの気持ちを話し合う。大事な時間だった。
「ねぇ、ジェイルは?」
「ジェイルさんなら、魔道具の件で、こことは違う所に居ますよ」
「そう、私も気になっていたから助かるわ。ありがとうって伝えておいて」
そうだった、魔道具の件、話に進展はあっただろうか。
気になった僕は、フロストティをフェインの所に残し、シャンディと一緒にジェイルと合流しに向かう。
中央部の情報室の扉の前に立つと、顔はいつものシャンディに変わっていた。
「失礼する。シャンディ・ルカだ。ジェイルに会いに来た」
「シャンディ!丁度良かった」
ジェイルが、扉を開け出迎えてくれた。
「一つ、気になる事を見つけたんだ。ちょっとこれを見てくれ」
そこには、あの日、送信した情報の履歴がずらっと並んだ紙があった。
色々な情報がそこにはあったが、あの時間に、情報が更新された履歴が無かったのだ。
「情報部は、監視兵から前陣の情報が入った事実もなかったらしい」
「それって、監視兵は認知した上で、わざと情報を送らなかったって事?」
「その可能性が高いって事だけは分かったね」
しかし、もしかしたら本当に進軍してる事を認識していなかっただけかもしれない、かといってここで核心の無いまま、直接当日の監視兵に話を聞くと、事実を消されてしまうかもしれない。
「どこかしらから、あの日、あった事を引っ張ってこないといけないんだ」
ジェイルは簡単に言っていたが、その証明がどれだけ難しい事か。
「取り敢えず、あの日の担当していた監視兵の名簿を貰って来たよ」
「ありがとう、ちょっとここに広げてくれないか」
ジェイルが、机の上に名簿を広げ、それを皆で覗き込む。名前が5名、書き込まれていた。
そこには、見覚えのある名前が一つあった。
「グェーニェ・アンフェ、、」
「知り合いか?」
「はい、僕が住んでいた所の巡回兵です。あの日の監視兵だったんですね」
そもそも、内部に敵が居るとは限らない、前も言ったように認識してなかっただけかもしれない。
「今日の話は、口外してはいけない、皆もちろん分かっているな」
とにかく、僕達はその名簿の人たちをマークするしかなかった。
五引も来ている以上今は、脅威を排除する必要がある。
「三日後に五引ペルゲンガーが領近辺まで来る。この情報は今、情報室から貰ったものだから間違いない」
「ジェイル、一つ頼みがある。クライネの事についてなんだが」
「ん?どうしたの?」
「生憎、私は魔術が苦手でだな、今日から二日間、クライネに魔術の特訓をお願いしたいんだ」
僕も、実践をして分かった。今の僕は、人を守れない。
「良いよ。ただ、私の特訓は大変だけど大丈夫?」
「あぁ、こいつはな、もっと上に行ける。信じているからな」
「私は、弟子は取らないと決めてるんだ、だからあくまでも〝教え子〟だからな」
「それでいい、認めてくれた時にでも、弟子にしてあげてくれ」
シャンディは、僕の頭に手を置いて、髪の毛をわしゃわしゃとしてくる。
「そうと決まれば、早速こっちに来てくれ」
シャンディに背中を叩かれ、ジェイルの元へ押し出される。
ジェイルに、奥へ案内されると、一室に到着する。
「ここは私の研究室、実際に、魔法を撃ったりする専用スペースも完備している」
研究室には、魔本が沢山乱雑に置かれていた。ドアで隔てられてる先に広いスペースがあった。
実際に魔法を撃って、データを集める場所らしい。
「取り敢えず、今の君の魔力を測りたい。好きな魔法で良い、奥に的があるだろ?そこにいつも通り撃ってくれ」
「こ、、こうですか、、?」
いつも通りと言われたので、何も特に意識せずに、僕は火球魔法を放つ。
「硝煙の施す業火を放て!フロストボール!」
火球は、勢いよく放たれ、的に命中する。それを見たジェイルは、頷いていた。
「やっぱり、君の魔法には、拡散がほどんど見当たらないね。そうだなぁ、君に足りないのは、ずばり戦況の分析力だね」
間違いない、僕はあの時命令された事をやっただけであって、実際に戦おうとした時には頭が真っ白になって何も考える事が出来なかった。
「だからね、ちょっと手荒かもしれないけどさ、戦おうか。私と」
「はい?」
習うより慣れろだと。威力申し分ないから、多少痛い思いをしてでも、魔術師としての戦いのイロハを叩きこみたい、との事だった。
「君には自己治癒能力がない、だから致命的な攻撃はしないさ。だけど、覚悟はしてね」
「ちょっと言ってる事が怖いですよジェイルさん!」
向かい側に、ジェイルが立つ。対峙してみると分かる、隙が無い。
「フロストボール!」
先に仕掛けたのは僕だった。確かに、確かに撃ったのは僕が先だった。
「えっ、、?」
僕の視界には、何故かジェイルが居ない。気付けば、杖が僕の喉元に突き立てられていた。
「あ、、あ、、、」
「ダメだね、もう一回撃ってごらんよ」
僕は改めて、火球を思いの限り撃ち込む。でも、結果は同じだった。
「ファントムシェード、幻影の分身、相手が武闘を使ってくる場合、近づかれたらおしまいだよ」
すると、ジェイルは杖を首元から離したと思うと、腹部に杖先を変え小さな火球を撃ち込んできた。
「げぅっっっ」
その場にのたうち回る、全身の血の気が引いていくのを感じる。
「かはっ、はっ、、何するんですか、、」
「だから、言ったでしょ。覚悟はしてねって、痛みで覚えようね」
その時のジェイルは、言い表せない恐怖をまとっていた。
それからと言うものの、僕はジェイルに魔法を撃ちこむたびに、いなされ、防がれ、反撃される。
僕の身体は、生々しい傷がどんどんと出来る。
「君は、自分の火力を全くと言ったように使いこなせていない、ただ撃ち込むだけが魔法じゃないぞ」
そう言うと、杖をこちらに向ける。
「今までは、私は受けの番だった。今度は、攻めの番だ。防御魔法を出してみてよ」
「分かりました、、深緑の加護よ私に! フォレステッドバリア!」
展開される防御壁に向けて攻撃を放とうと、ジェイルが火球を放つ。
知ってる魔法だった。調整魔法だ。
「えっ?」
防御壁は、火球に触れた途端に崩れる、肩をかすめて後ろへ飛んでいく。
防御魔法も、人より自信があるつもりだった。そんな魔法が、一瞬にして崩れ去る。
「こう言う事だよ。魔法には、魔力のぶれがある箇所がある。そこに的確に撃ち込む事で勝手に相手の魔法を、無力化する事が出来る」
「とは言っても、どうやって、、」
「ほら、もう一度展開してみてごらんよ」
僕は、疑いつつももう一度防御壁を展開する。
「ここ、ここだよ」
ジェイルが指さす所は、防御壁の模様が、若干歪んでる箇所が存在した。
確かにその箇所は、他の所に比べ、厚さが明らかに薄い。
「魔術師は、後ろで基本戦う事になる。前衛より、局面を俯瞰出来るのさ」
ジェイルの実力を思い知った。到底かなうものではないと、その時理解したのだ。
漠然とした恐怖は、それだったのだ。
「君には、まだまだ粗削りな所がある五引が来るまで、叩きこむよ」
「はい!」
そんな、二人を眺める人が一人。
「強くなれよ」
シャンディはそう言い残すと、開けかけの扉を閉め、自分の部屋へと戻っていくのだった。
今日も更新です。クライネの強化パートですね。強くなってね、クライネ。




