その11:前陣防衛戦②
呆気。鎧など、意味を全く持たなかった。
「いやぁぁぁぁぁああぁぁ!!!」
フェインの悲鳴が、戦場に響き渡る。冷静な判断を怠り、キーアの元に駆け寄ってしまう。
そんな、魔術師が前に出て一体何が出来るのだろうか。
無常にも、そんなフェインへ魔物の一撃が入ってしまう。
「かはっ、、、」
正面から何もせずに、駆け寄る敵に対して痛恨の一撃を与えるなどたやすい事。
まともにフェインも、攻撃を貰ってしまう。
連鎖、負の連鎖だった。たった、一発でこうも有利はひっくり返ってしまうのか。
「フェイン!何してるんだ!」
シャンディが駆け寄り、フェインへ攻撃を与えた、憎き敵に攻撃をし返す。
素早く切り付け、フェインを引き寄せる。
何とか、フロストティも追いつき、フェインを前から引っ張り出すことに成功した。
「キーアさん、、!」
展開が目まぐるしく動く、僕はキーアの安否を遠目から確認するものの、ピクリとも動かない。
倒れるキーアの周りに、溜まる鮮血の色と、濁った赤が混ざり合っている所までしか確認出来ない。
「おい!!クライネ!!フェインを頼む!」
フェインにヒールをかける為にも、僕は全力で走る。しかし、横から飛んできたのは、見覚えのある土の弾だった。位置がバレた敵は、既に距離を取っていた。
(あの野郎、、!戦い方を熟知している、、!)
目前まで飛んできた土弾に、僕は魔法を撃つ隙すらも無く、顔を腕で覆う事くらいしか出来なかった。
「深緑の加護よ私に! フォレステッドバリア!!」
目を開けると、僕の前に一枚のシールドが展開されていた、ジェイルからの支援だった、何とか僕は助かった。
「早く、フェインさんを助けてあげて下さい!」
ジェイルからの期待にも応えなければならない、必死に走り、フェインの元にたどり着く。
ここまで近ければ、最大限の治癒魔法の恩恵を受けれるだろう。
(頼む、、っ!!)
僕は、全力のヒールをフェインに対してかける。その間も、シャンディが僕を護衛してくれる。
治癒魔法は、とても便利なものだ。傷など一瞬で塞がり、ある程度の疲労までも取り払ってくれる、ただ、万能と言う訳でもない。
「大地の地脈よ我が手に癒しを、ヒーリング!」
か細い息をしていたフェインの傷は、何とか塞がっていく、間に合ったのだ。
治癒魔法は、かけたにも関わらず傷が塞がらない場合、瀕死状態となっており死亡状態と同様、魔法などみじんも効果が無い。シャンディが致命傷を与えた、魔物についても同じだろう。
「良かった、、次は、キーアを助けに行くぞ!」
前で戦うフロストティと共に、シャンディがキーアの救出へと向かう。
時間の問題だった。ただでさえ、遠目で瀕死かもしれないキーアの命の灯火がどんどん消えていく。
「シャンディさん!魔物の数も、残り数える程になったのですが、あの魔術使いが厄介過ぎます!」
「分かってる!ジェイルは、魔法での防御魔法に徹してくれ!フロストティはそのまま、キーアの救出へ一緒に向かうぞ!」
流石は、陣営の長だ指揮が輝く。僕は、何が出来るだろうかジェイルさんと共に、防御で二人を援護するか、それとも二人に治癒魔法をかけ続けているのが正解なのだろうか、そんな時シャンディが叫ぶ。
「クライネ!お前は!!誰よりも優秀な魔術師だ!私は!お前を信頼している!だから!全力の火球をあの魔術師の元に飛ばしてくれ!」
シャンディは、敵の方向を既に把握していた、指を差して逃げ回る敵の方向を教えてくれる、指の先を見ると確かに小さく敵の魔物が、こちらに攻撃してこようと、詠唱を始めていた。
「お前の全力!!!信じてるぞ!!!」
すると、シャンディは、キーアの元まで走っていく。
「シャンディさん!私の魔術範囲を超えています!その位置は、守れません!」
それは、捨て身の特攻だった、そんなシャンディを救えるのは、僕しかない、彼女は僕を信じて走っているのだ。
「もう!誰も、傷つけさせません!硝煙の施す業火を放て!フロストボール!!!!!」
自分の出せる限りの力を込め、敵に腕を向ける、もし届かなければ敵の詠唱が終わって、シャンディの行く先など容易に想像出来る。
「届いてくれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
身体の傷痕が、眩く光る。手の平に特大の火球が形成される、そんな火球を思いの限り飛ばす。
ボオアアアアアアアァァァァアアァァァア!!!!!!!!!!!
火球はどんどん伸びていき、敵のすぐ近くまで飛んでいく。魔物はシャンディを倒すべく、僕の魔法なんぞ届かないと割り切り、方向を変える事なんてしなかった。まさに、お互い賭けだった。
火球が届くのか、もしくは届かず、最悪の惨劇が待っているのか。
「良くやってくれた、、っ!本当に信じていたぞ、、!」
シャンディがほくそ笑む。火球は、届いたのだ。
全力の火球は、多少の減衰は起こったが距離は何も問題なかった。
火球をまともに受けた、魔物は、倒れ込んだ。
「キーア!!!!!」
シャンディが無事に、キーアの元へたどり着く。肩へと担ぎ上げ、こちらへ戻ってくる。
「シャンディ!こっち!」
フロストティがその間も、戦って切り開いた道を、シャンディに案内する。
「クライネ!!早く、、!早く治癒してくれ!」
「はい!、、、っっっ!」
シャンディが、キーアを下す、ただ、キーアは見るからに頭部を土弾で貫通していた。
正直僕は分かっていた、この状態では、治癒魔法など無力だと。
「大地の地脈よ、、我が、、手に癒しをヒーリング、、」
「おい、、傷塞がってないぞ、、詠唱間違ってるぞ、、」
魔物を残り数体まで倒したフロストティが、安全を確保して戻ってきた。
僕達の状況を見ると、すぐにどうなっているか理解して口を覆う。
「キーア、、っ!」
「おい!キーア!キーア!何してんだよ、、!起きろよ!なぁ、、なぁ、、、」
キーアの身体を、優しく揺さぶる、しかし何も反応はない。
「なぁ、ヒールは確かにかけてるんだよな、傷の治りが遅いだけだよな」
どう言葉を返せば良いか分からない。つい先日、もう誰も死なないでくれと願ったシャンディの前で、キーアが亡くなってしまった。
「シャンディ!もう、良いでしょ、、」
フロストティが、シャンディの肩に手を置く。
「良い事あるもんか!!!!!お前は!!!!!目の前で仲間が死んでいるだぞ!!!!どうしてそう、呑気にしていられるんだ!!!!」
「私だってつらいわよ!!!!!!!!!」
聞いた事も無い、フロストティの声だった。
シャンディも、その声で目を見開いている。
「私だって悲しいよ、辛いよ。貴方も、過去に仲間を失ったんでしょう?それなら、私の気持ちにも気付いてよ、、」
涙をぽろぽろと零すフロストティ、それを見て、シャンディも黙りきってしまう。
そこへ、ジェイルがやってきた。
「後、2体まで減らしてきた、、」
力なく横たわるキーアと僕達の表情を見て、言葉を詰まらせる。
「後、2体って言ったか?」
「えっ、、えぇ、そうだけど、、」
シャンディは、そうジェイルに聞き返すと、剣を持ち立ち上がった。
「お前たち、お前たちを絶対に許さない、、!!!!」
歯ぎしりをして、強く魔物を睨む。そんな魔物に対して、容赦ない斬撃を与える。
魔物は、跡形もなく細切れになっていた。
「お前が!!!!お前らが!!!!!!」
細切れになった後も、シャンディは魔物を殴りつける、返り血を浴びて鎧も赤く染まっていく。
やるせなさと怒りをぶつける先が無かったからだろうか、僕達に当たるのは違うと思ったからだろうか。
「お前ら、、、が、、、うわぁぁぁああああああああ!!!!!」
魔物を駆逐して、僕達は前陣の防衛を完遂させた。作戦は成功。ただ、負けた。
五引を前にして、大切な仲間を失ってしまった。戦力が欠けた事より、居なくなってしまったと言う事の方が残念で、本当に悔しくて。
曇り空の下、シャンディの悲痛の叫びが戦場を轟かせた。
今日も今日とて更新。難しいですね。




