その10:前陣防衛戦①
「どういう事なんですか!」
すぐそこまで、魔物の前陣が到達している。とても深刻な問題だった。
「前陣と遭遇するのって明後日の話じゃなかったの、、?」
「知った事か!私は監視兵の方から聞いた情報で動いているのだ!」
フェインとシャンディが、言い争ってる間にも前進しているのが見えていた。
「とにかく!僕達は、ここから降りて今すぐにでも魔物から防衛しなければいけません!」
僕が、二人の間に割って入って、今するべき事を強く言いかけると、二人も落ち着きを取り戻したのか、出発する準備を進めだした。
「でも、なんで、、進軍が遅れるのは理解出来るけど、早まるのは理解出来ない、、」
フェインは、そう言うと一つの懐中時計のような形をした物をポケットから取り出す。
「フェインさん、それって、、」
「これはね、情報を受け取る事が出来る端末なの、一種の魔道具と言った所かしら」
それは、中央部トール領から送信し、現在状況を把握する事が出来る魔道具だった。
「でも、これを見る限り、進軍が早まったなんて情報どこにも、、」
「言ったところで仕方がないだろ!行くぞ!」
シャンディが、馬車に乗り込むよう促す。僕達は急いで降りる事を選んだのだった。
「くそっ。と言う事は、五引の野郎もすぐそこかもしれないな、、」
荷台に拳を振り下ろし、焦りを見せるシャンディ。でも言ってる事に間違いはない、今僕達の情報は、全く役に立たない事がはっきりと、分かってしまったからだ。
「もう少し、早く出来ないのかキーア!」
「分かってる!これが全速なんだ、これ以上早く走らせるとお前たちが乗ってる荷台が、段差でお釈迦になるぞ!」
もう既に、荷台は大きく揺れており、いつもの心地よい馬の足音も轟音に変わっていた。
「あそこ見て!前陣!前陣が居る!」
フロストティが指を差す方向の先に、進軍してくる魔物達を目視した。
ギリギリだった、もう少し遅れていたら、逆に追いかける側になっていただろう。
そうなると、止めるのは容易では無い。
「いいか!くれぐれも油断はするなよ!特にクライネ!落ち着け。お前は私の見込んだ奴なんだ、ガッカリさせてくれるなよ!」
「はい!!もう、皆さんを心配させないよう今ある全ての力をぶつけてみせます!」
魔物の群れを目前に、僕達は馬車を止め、戦いに備える。今、僕達の前陣防衛戦の鐘が鳴った。
魔物の群れは、見ただけでも50は超えていた。ただ、こちらには力強い味方が居る。
フロストティとキーア、シャンディに前を任せて、後ろからフェイン、ジェイルと共に援護すると言った陣形を取る事にした。
けたたましい魔物の足音がどんどんと近付いてくる、向こうも僕達の存在に気付いたようだった。
そこら辺に大きな岩はあるものの、遮蔽と言った物は少なかった。総力戦になる力比べだ。
「でやぁぁぁぁぁぁあぁぁああ!!」
シャンディが、剣を振り上げ、素早いスピードで魔物の群れへ突っ込んでいく。踏み込みの力が強く、その場の土が捲れ返る程で、遅れを取るまいと、フロストティとキーアも付いていく。
僕達が出来る事は、後ろからの攻撃魔法と治癒魔法を飛ばす事、もちろん無傷の戦いなんてありえない。
シャンディの剣は、魔物に着実なダメージを与えていくものの、自分の身体にも痛々しく傷が入っていく。
「シャンディちゃん!危ない!ライズボルト!」
シャンディの横から、一体の魔物が飛び掛かってきた所を間一髪で、フェインが雷の範囲魔法で対処する。
「ほら!魔物達よ!こっちにも来ないか!」
キーアの拳が、魔物の顔を正確に捉えていく、一体また一体と数を減らしていく。
(僕も皆を守らないと、、っ)
「勝機の雷よ!我の手中に!ライトニングコマンド!」
空を切る一筋の雷が、魔物へと命中した、そいつは地に倒れ動かなくなる。
「おい!!良くやった!その調子だどんどんやってしまえ!」
シャンディは、自分が戦いながら、傷付きながら、僕の魔術を誉めてくれた。
俄然として、僕の中の自信が強くなっていく。
「いける、、いける、、!」
戦況がこちらに良い方向に向いていると、フェインが皆を鼓舞する。
魔物の数も40を切った所だろうか。ダメージ自体もこちら側はほどんど無く、僕とフェインの治癒魔法のみで、全回復出来るくらいには戦況は、良いものだった。
しかし、問題が起こってしまった。
目にも止まらぬ速さで、一体の魔物が突っ込んでくる。その飛び蹴りは、シャンディの脇腹へと突き刺さる。
「、、がっっ、、!」
シャンディが蹴りを受けた脇腹の鎧に、小さな穴が開くほどの威力。吹き飛ぶシャンディ、地面を転がり、剣を落としてしまう。
急いで僕は、シャンディに対して、治癒魔法を届ける。
「大地の地脈よ我が手に癒しを、ヒーリング!」
身体の傷は癒えようと鎧の穴は開いたままだった。
「知恵持ちの魔物、、っ!」
知恵持ちの魔物、話には聞いていた、剣を掴み上げ立ち上がるシャンディの顔へ、一発の弾丸が飛んでいた。
「何してるの!」
フロストティが間一髪、剣を間に差し込み弾丸を弾く。それは、土で出来た魔弾だった。
弾の飛んできた方向を見ると、杖を持った魔物が立っていたのだ。魔術を扱う魔物と武術を操る魔物。厄介な奴らだった。
「ふっ、、!」
踏み込み、先程の蹴りのお返しだろうか、シャンディが突っ込んでいく。
ガギンッッッッ!!
腕の防具に剣が止められる、その隙を見逃すまいとその魔物は、膝をシャンディの腹へと目掛け突き上げる。
「なっ!」
素早く、身を下げ膝を躱す、一進一退の攻防だった。
しかし、シャンディもただものでは無かった。
「もう、見切ってる。お前は私には勝てん!」
そう言うと、同じように剣を振り上げる、魔物は先程のパターンと同じだった為、腕を上げ止める構えをする。
「そうだよなぁ!知恵があるからこそ学習するってもんだよなぁ!」
いや、違う先程とは違うのだ。シャンディが振り上げた腕は一本だったのだ。
彼女が振り上げた手に持っていたのは、鞘だった。剣を脇の空いた穴に差し込み、隠し持っていたのだ。
「ありがとよぉ!賢くあってくれてよぉ!」
シャンディの剣が、魔物の身体に深い傷を入れる。
「くそっ!片手だったから、力が伝わりきらなかったか、、っ!でも、致命傷は与えれた!これで、、!」
その時、急に視界が悪くなる。原因は一つの眩い光だった。
「ちくしょう!視界がぼやける、、っ!」
魔術使いと戦っていた、キーアが一撃をお見舞いした際に、放たれた魔術だった。
「ライトブリンク、、!?」
それは、魔本に書いていた魔術だった。魔物は魔本から知識すら、得る事も可能だったのだ。
僕達は、相手に最大のチャンスを与えてしまった。
「ファントムダーク!!」
これはまずいと思った僕は、自分の視界が見えない中でも、相手の視界を奪う魔法を放ったがこの魔法は、対象が明確に向けた方向に居ないと、かける事の出来ない魔術、賭けだった。
視界が見える様になると、そこに魔術魔物も武闘魔物も姿が消えていた。
「皆さん!大丈b、、、」
安否を確認しようと、皆に声をかけようとした時、調整魔法で範囲の小さく威力の高い火柱が、飛んでいた。そう、キーアの頭部を穿通して。
遂に10話到達です。ありがとうございます。
でも相変わらず難しいですね。




