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「満輝さん、少しお時間宜しいでしょうか?」
「はい.......」
案内されたのは以前と同じ本の部屋。しっとりと重厚な空気が上から包んでくる。しかし前と違うことが。テーブルの上に置かれた香炉だ。以前は無かったはず。新たに購入したのかもしれない。その香炉からはふわりと甘い桜餅のような香りを漂わせ、緊張感をゆっくりと解してくれる。
先に口を開いのは崇島さんの方だった。
「満輝さん。今はあまり私に近寄らない方が良い」
物凄く憂いを帯びた目だった。仄暗く、悲しげな双眸は私を捉える事はない。ただ憂鬱そうな気だるい表情をして、ざんばら髪を人撫でした。
出来れば近寄って背を摩ってあげたい。何か言葉をかけるよりも、そっちの方がずっと力になると思ったからだ。でも今、近寄るなと宣言されてしまった。だから問いかける事しか出来ない。
「.......訳を聞かせていただきたいです.......」
「最近は少し危ないのです。どうか..............理解して戴きたい..............」
言い終わると、ふぅっと長く吐息を漏らした。頭を支える事が難しいのか、肘を着いて、こめかみを押さえる。何となく、頭痛がしているのでは無いかと悟る。
「体調不良ですか? なら病院にでも.......」
立ち上がって顔を覗き込むと、不意を突かれたような顔をして、急いで距離を取られた。思わず近づいてしまった。今彼の口から離れるように、と言われたばかりじゃないか.......。それから彼は黙って口元を押さえ、ぽそりと一言。
「そういう体質なのです」
どっちにとっても滅茶苦茶しんどいシーン。
すれ違い辛いです。




