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痛いほど分かった。病院に行っても何も分からない苦しさを。長らく耳鳴りと頭痛に苦しめられ、幾度となく病院を転々としても理解不明。その苦しみが、私の胸を抉る。今崇島さんも同じ状態なんだ。
「私、昔から耳鳴りが酷いんです。最悪頭痛が起きて動かなくなるほど。病院にも何件も行きました。でも何も分からなくて.......。だから、体質で苦しむ崇島さんの気持ちがよく分かります」
崇島さんは一度口を開きかけ、またぎゅっと引き結んだ。禁句を言いかけて、それを押し止めたように。でも表情は、表情だけは痛烈に物語っていた。本当の事を話せない苦しみ。それを表した双眸が、苦しげに私を見る。私も思わず口を噤む。これ以上、彼の心に踏み込む事は出来なかった。
「不思議ですよね。でも崇島さんが越してきてからは落ち着きました」
何年も耳鳴りに悩まされ、頭痛を患い、他者と関係を遠ざけていた私にとって、この人は唯一の希望と言っても過言では無かった。私を蔑ろにせず、大切に扱ってくれた。でも、その一抹の希望を与えてくれた人が、今凄く苦しそうな顔をして、頭を抱えている。
「ご心配、有難う御座います。でも悪戯とは言え、隣人の貴方まで被害を受けたら、私は.......」
そう言って、崇島さんは立ち上がった。体に触れようとして躊躇ったように手を引っ込める。自分の事だけでなく、周りにも気を割いている。とりあえず、早く家に戻ろう。私に気を配り過ぎて、休めなかったら意味が無い。
「体、お大事にして下さい.......」
「ごめんなさい。出来ればお送りしたかったのですけど.......」
目と鼻の先にある家にだって、彼は警戒心を解かなかった。
本当の事言いたいんだろうなって思います。
そして受け入れて欲しいんだろうなって。
でも過去が過去だけに、拒絶されるのは彼にとってトラウマだと思います。だから言えないんですよ。
余談です。
昨日更新した短編に、正論について書きましたが、正論ってなんでしょうね?
世界中の人が全員納得する論理なんて存在しないと思うんですよ。
だから最低限、自分が納得する理論で物語を書いてます。




