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「それではまた」
そう言って、その場を後にした。背後から視線を感じるが、振り返る事はしない。体が冷えてしまうから、早く家に入りなさい。少なくとも外に居るよりは安心だ。
家に戻ると、大きく溜息を吐いた。気を解す為にソファに横になる。思わず先程の香りが脳裏を掠めた。高い霊力を持つものが放つ、あの特有の匂い。花の蜜を凝縮したように思考を狂わせる。私は本当に平常心を保ったまま、彼女を見守る事が出来るのだろうか..............?
いけない。このままでは私も彼奴らと同列になってしまう。邪な気を祓おうと、簡易版の扇子を探す。しかし見当たらない。確かに先程までは所持していたのに.......。もしかして落としてしまったのだろうか.......。そう青くなっていると、不意に呼び鈴が鳴った。出てきたのは、お隣の少女。手には探していた扇子が握られている。
「あの..............落し物です」
「おや、探していたのです。有難う御座います」
彼女は困ったように扇子を手渡した。放って置くことも出来ただろうに、優しい子だ。
その行為に感謝して笑顔を浮かべた時だった。不意に彼女の右肩辺りに何か良くないものが渦巻いている。それは段々と肥大化し、彼女を包もうとする。
思わず真顔になり、そっと彼女の肩に触れる。淀みが私の手に移り、玉のように凝縮を開始。虫けらのように圧縮した後に、ぷちりと潰した。
この子は大丈夫だろうか。また苦しんではいないだろうか。そう思って見てみると、頬を朱色に染めていた。いきなり触られて恥ずかしかったのだろう。私は誤魔化すように黙って頷いた。
「失礼致しました。虫が着いておりましたので。もう大丈夫」
「はい..............」
崇島さんのモデルとなった神様にも、沢山救われてます。
やっぱりとても優しい。
少なくとも悩んでいる子をほっとくタイプではない気がします。




