演説
「おいおい、今度はどこだ……」
「なんだこの人の量は!」
三人の前にはたくさんの人々が集まっていた。その人々の視線の先には1人の黒人男性が立ち、演説を行っていた。ここの言葉もまた、エドワードの母国語である英語だった。
「エドワード、何て言ってる?」
今回は耳を峙てずにも聞き取ることができた。力強い、はっきりとした声を。
「絶望の谷間でもがくことをやめよう。友よ、今日私は皆さんに言っておきたい。われわれは今日も明日も困難に直面するが、それでも私には夢がある。それは、アメリカの夢に深く根ざした夢である。」
三人の周りの群衆も、この演説に聞き入っていた。
「私には夢がある。それは、いつの日か、この国が立ち上がり、『すべての人間は平等に作られているということは、自明の真実であると考える』というこの国の信条を、真の意味で実現させるという夢である。」
群衆からは歓声があがった。
「私には夢がある。それは、いつの日か、ジョージア州の赤土の丘で、かつての奴隷の息子たちとかつての奴隷所有者の息子たちが、兄弟として同じテーブルにつくという夢である。」
男たちはエドワードの翻訳を聞きながら、その黒人を見つめた。その黒人の眼差しは強く、優しく、希望に満ちていた。
「私には夢がある。それは、いつの日か、不正と抑圧の炎熱で焼けつかんばかりのミシシッピ州でさえ、自由と正義のオアシスに変身するという夢である。」
エドワードはこの男性の演説に感動していた。
「私には夢がある。それは、いつの日か、私の4人の幼い子どもたちが、肌の色によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である。」
子どもがいるナカムラは、エドワードの翻訳を聞いて、深く共感していた。
「今日、私には夢がある。」
このフレーズが辺りに響く度に、エドワードは鳥肌が立つのを感じた。
「私には夢がある。それは、邪悪な人種差別主義者たちのいる、州権優位や連邦法実施拒否を主張する州知事のいるアラバマ州でさえも、いつの日か、そのアラバマでさえ、黒人の少年少女が白人の少年少女と兄弟姉妹として手をつなげるようになるという夢である。」
アレックスは母親から聞いた黒人差別の話を思い出していた。黒人には近寄るなと。しかし、アレックスは今日、その話は間違っていることに気付いた。目の前の人物は、自分なんかよりもよっぽど立派で、自分たちと同じ人間だった。そして、自分自身が恥ずかしくなった。
「今日、私には夢がある。」
エドワードはこの数分で、「I have a dream」
「私には夢がある」というフレーズと、希望的演説が脳裏に刻み込まれた。
「私には夢がある。それは、いつの日か、あらゆる谷が高められ、あらゆる丘と山は低められ、でこぼこした所は平らにならされ、曲がった道がまっすぐにされ、そして神の栄光が啓示され、生きとし生けるものがその栄光を共に見ることになるという夢である。」
二人が真剣にエドワードの翻訳を聞き入っているなか、再び三人を閃光が包んだ。




