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神獣の状態では不利と悟ったのかルゥナさんが人型の形態をとる。
脚に纏っていた雲がいつものキトンの衣装に変形し、首周りの雲は結い紐になり髪を緩くまとめあげる。
いつもの柔らかな笑みはなく、冷たい無感情な表情をしていた。
「うっひょー!めっちゃ美人じゃん!タイプだわ!殺すのが惜しいなー」
人型のルゥナさんを見て唇をペロッと舐める自称勇者。
欲情を含んだ瞳で見ているのが離れた僕でも分かる。
思わず奥歯を噛み締めてしまう。
「ねぇねぇ、今降参して俺のもんになるっていうなら命は助けるよー。
すっごく可愛がるし勇者の女ってことできっと手厚い持て成しを受けられるよ?」
ニヤニヤしながらルゥナさんを見つめる自称勇者を冷めた目で見返すルゥナさん。
「生憎神獣に男や女という性別は存在しない」
右手を空に挙げ
「開け黒の門よ」
青空に黒い穴が開く。
その穴から何かが出てくる。
槍を手にした天使達だ。
13体の天使が槍を突き出し穂先を交わせる。
交わった穂先が光り輝き始める。
「ちょっ、まだ口説いてる途中じゃんか!」
戦闘態勢に入る自称勇者は天使達を見上げ馬鹿にするように笑った。
「まだ学習してないのー?魔法は通じないってことをさ。綺麗な顔をしてても流石魔獣って感じ?」
その言葉にも反応をしないルゥナさん。
確かに何度もルゥナさんの魔法はあの剣で無効化されている。
この魔法は通じるのだろうか?
自ずと手に力が入る。
「いつでもうっでっ!!」
自称勇者の体が揺れて膝をつく。
その首には矢が一本刺さっていた。
「な、なんだよこれ…」
矢の存在に気づいた自称勇者は自分の首に刺さっている矢に触れる。
驚愕の表情を浮かべる自称勇者。
あの矢はどこから飛んできたのか。
飛んできたであろう方向に視線を向けると矢を放った姿勢のまま立っているギルさんがいた。
「ルナエルフ及び知古の魔獣達の神樹への避難完了いたしました。後はルゥナ様及び馬鹿と阿呆がこの場にいるだけであります」
ちらりと僕と百合子さんを見るギルさん。
ゆっくりと弓を降ろしその場に膝まづく。
「更に重ねて報告いたします。ルゥナ様の命令に対し我が身ここに馳せ参じてしまいました。
お叱りは後程受けますので、今だけは共にあることをお許し下さい」
頭を垂れルゥナさんの許しを請うその横顔は、命令違反を犯した後悔などなく寧ろ晴れ晴れとしていた。
ずるいやギルさん。カッコ良すぎだよ。
「許すよギル。君の変わらぬ忠心に感謝する」
ルゥナさんは先程の無表情とうって変わって優しい笑顔を浮かべている。
「俺はぁぁぁ!!勇者様でぇぇぇえ!!」
力任せに矢を引き抜き立ち上がる自称勇者。
「世界を救う救世主になるんだよぉぉぉぉ!!!」
目は血走り、首から噴出する血もお構いなしに剣を握りルゥナさんに向かって走り出す。
再び無表情になったルゥナさんは静かに右手を振り下ろした。
「裁きと浄化の光を受けよ」
天使達の槍の穂から光の奔流が自称勇者に襲い掛かる。
咄嗟に剣を頭上に掲げ凌ぐが圧倒的な力によって徐々に耐え切れず膝をつく自称勇者。
圧し潰すように光の奔流は弱まることなく降り注ぐ。
自称勇者の足は地面にめり込んでいく。
力んでいるせいで首から噴出する血の量が増える。
「嘘だ、うぞだぁ!勇者の…ごの僕がぁぁぁぁ!!!」
光にのまれる自称勇者。
その光景を息を息を飲み僕は立ち尽くす。
徐々に光が弱まっていく。
自称勇者の姿はなくその場には両手剣が転がっているだけだった。
両手剣の周りはぽっかりと深い穴が開いていた。
空を飛んでいた13体の天使達は弧を描きながら黒い穴に戻っていった。
「お見事でごさいます」
ギルさんが称賛の言葉をルゥナさんに述べる。
少し息が上がり疲れを見せつつも笑みを浮かべるルゥナさん。
…勝った。
あのチートみたいな剣を持った自称勇者にルゥナさんは勝ったんだ!
後は連合軍とやらが撤退すればこの戦いは終わる!
「ごめんね」




