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「グルァァァァ!」
僕が必死にルゥナさんの後を追いかけていると黒い影が並走してくる。
チラッと見ると百合子さんだった。
僕の移動速度に余裕の表情でついてきている百合子さん。
「いつもの追いかっこじゃないんだよ。これから人間と戦うことになるんだ。
危ないから神樹に戻って百合子さん」
そう窘めると長い尻尾が顔面に飛んできた。
鞭のようにしなった尻尾の情け容赦ない威力は僕の足をもつれさせ前方に転がる。
痛みに涙目になりつつ起き上がろうとして顔面を踏みつけられる。
「ちょ、百合子さん!遊んでる場合じゃないんだって!」
踏みつけてくる前脚を掴みどけるといつものように鼻で笑われた。
≪周りが見えてなさすぎよ。そんなんじゃ即行黄昏の向こうに行くだけで終わるわよ≫
頭の中に直接声が響く。
ハスキーな少し掠れた…オネエ声。
「え?この声って…」
まさかなと思いつつも百合子さんを見上げると目が合った。
≪何よー。視野が狭まったお子ちゃまの為にわざわざ念話使ってあげたアタシの優しさが分からないの?
念話使うと毛艶が悪くなるから本当はあんまり使いたくないのよ?≫
「百合子さんは雄だったの!?」
≪お黙り!小僧が生意気なこと言うんじゃないわよ!!≫
まさかの百合子さん雄でした。
でもゴールデンなボールはついてなかったはず。
「あのー、雄である証しのお玉さんはどこに?」
≪アタシレベルの玄人になるとそんなもん気合で引っ込めて隠せんのよ!何事も気合よ気合!そんなことよりこれからのことを話すわよ≫
色々衝撃な出来事が続いて混乱していた僕だったが、百合子さんのおかげで本来の目的を思い出す。
気を引き締め百合子さんの言葉に耳を傾ける。
≪あんた足遅すぎ。そんなんじゃ敵の良い的。アタシの背中に乗せてあげるからそこから魔法をぶっ放しなさい。
鈍間なあんたが駆け回るよりアタシの背に乗ってが動き回った方が効率的だわ≫
What?
≪さっさと背中に乗りなさい!このブス!≫
そう言うや否や百合子さんの体が徐々に大きくなった。
普通の黒豹だったのが馬ぐらいの大きさに変化した百合子さん。
というかブスって酷くない?
確かに僕はイケエル代表ギルさんや美の塊ルゥナさんと比べたらパッとしないだろうけどさ、ブスはないでしょブスは。
あ、でも僕一度も鏡で自分の顔を見たことがなかった…。
この戦いが終わったら鏡で自分の顔を見てみようそうしよう。
ブス発言や百合子さんオネエ発覚事件は置いといて今はルゥナさんだ。
「もしかしなくても人間との戦いだから危険だよ?それでも百合子さんは一緒に戦ってくれるの?」
最終確認をしておく。
≪アタシね、ずっと昔からこういう戦いが起こるたびに神獣様と一緒に戦いたかったの。
でも毎度毎度みーんな神獣様の言い付けを守って大人しく戦いが終わるのを待っててさ、神獣様と一緒に戦いたいなんて言い出せる雰囲気じゃなくて黙ってたの。
これでいいのかしら?ってモヤモヤしてた所にこの森一番のヒヨッコが飛び出てったって聞いたら居ても立っても居られなくなっちゃったわ。
神獣様に守ってもらうだけなんてアタシはもう嫌!死んでもいいから神獣様と戦いたいのよ!≫
毛が逆立ち闘争心に燃えているのが分かる。
もう何を聞いても意味はない。
そう思い僕は百合子さんの背に跨る。
≪さっさと行くわよ!振り落とされないように首元にしがみ付いてなさい!≫
その言葉と共に景色が目まぐるしく変わっていく。
早い!早すぎて目を開けてたら酔う!!
目を瞑り首元に必死にしがみつく。
百合子さんが追いかけっこの時に手加減していたことを今この時初めて知った。




