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「…分かった。ルゥナ様が育てたというだけで所詮人の子だ。勝手にしろ」
吐き捨てるように言ってギルさんは僕に背を向け歩き出し、他のルナエルフの人達と行ってしまった。
「人の子」という言葉に今までにない心の距離感を感じる。
ギルさんとは15年の付き合いがあり、何だかんだ言いつつも世話を焼いてくれた。
仲良くなったと思ってたのは僕だけだったようだ。
ねえギルさん。
僕小さい頃はギルさんってお父さんみたいだなって思ってたんだよ?
「少し…寂しいな」
自嘲的な笑みが洩れ、思わず前髪をくしゃりと握る。
下を向き、深呼吸を繰り返す。
同時に今後どうするかに思考を切り替える。
まずは使えそうな武器がないか村の中を探す。
あれば良し、なければ魔法でどうにかするしかない。
その次は戦闘することを考慮し、体力を温存しつつ可能な限り早くルゥナさんを追いかける。
追いついた後ルゥナさんが戦っていたら戦闘に参加して一緒に神樹に帰る。
叱られても甘んじて受け入れよう。
よし、この後の行動は決まった。
速やかに行動開始しなければ。
村の中はさっき来たばかりだからどうなっているか分からないが、小走りで村の中を見て回る。
幸い弓の練習場のような場所がすぐ見つかり、弓と矢筒が置いてあった。
矢筒には矢が20本入っており、ないよりはマシだ。
素早く装着し他に武器になるようなものはないか探す。
15分ほど探して見つかったのは弓の他に解体用ナイフと鉈だけだった。
それらを手に僕は村を後にした。
ルゥナさんが飛んで行ったのは村から真東。
魔獣達との追いかけっこのおかげで森の中を進むスピードは速い。
走るごとに僕の心臓は高まっていく。
僕に人が殺せるだろうか。
獣を狩って解体をしたことはある。
だけど獣と人は違う。
言葉を話し意思の疎通が出来る。
助けてくれやめてくれと言われても殺せるのだろうか。
手にしている鉈を握りしめ直す。
僕は何の為に武器を手に取ることを選んだ。
何の為に強くなることを願った。
全てはルゥナさんの為だろうが!!
僕はルゥナさんとまた一緒に神樹に帰りたい。
困ったり照れ隠しの時に眉を少し下げて笑う顔がまた見たい。
またあのひんやり冷たい手で頭を撫でてもらいたい。
また何でもない日常を一緒に過ごしたい。
その為なら僕は…。
僕はいくらでも人を殺してみせる。
返り血を浴びて真っ赤に染め上げられようとも。
今の僕がどれほど強いのは分からない。
でも長老との手合わせに使った雷鳥を筆頭にまだ披露していない魔法がある。
僕の魔力の源に意識を合わせる。
昔はグネグネと蠢いていただけなのに今では早く動き過ぎて一つのブラックホールのようになっていた。
常人離れした魔力の源の活性状態。
ギルさん曰く普通なら魔力暴走で肉体が崩壊しているとのこと。
兎に角この状態のおかげで魔力切れの心配もせずガンガン魔法が使えるので、敵の数を減らしてルゥナさんの負担を減らすことぐらいは出来るはずだ。
前へ前へと。
時には走り、時には木の枝を利用し跳び、時には風魔法で加速をつけ。
僕はルゥナさんを追うのだった。




