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緋の扉  作者: 緋龍
彼女、あるいは彼等のそれなりに通常ではない日常
30/61

27話

こんな結末になるとは、作者も予想していませんでした(汗)

 (女性・・・)


 ライカが驚くのも無理はない。フードの中から現れたのは赤毛の長い髪を左右に分けて結わえている女性だったのだ。全身をすっぽりと覆っている外套で体形まではわからなかったが、顔にうっすらとそばかすがあり、年齢は15,6歳ように見えた。


 ライカは赤毛の女性に見覚えがなかった。一度見た顔は忘れない自信があるので、会ったことはないはず、と彼女は思った。


 (彼女の正体と追ってきた理由を調べるには・・・)


 あまり気はすすまないのですが時間もないですし仕方ありません、とライカは意を決して「黄玉こうぎょく邸」の敷地に足を踏み入れ、屋敷の扉を開いた。





 「すみません、お願いがあるのです」


 屋敷に入るとライカは、中にいる人間に何か言われる前に言葉を発した。今彼女が着用しているのは庶民用の服なうえ、貴族でもなければ、男装中なので侍女でもない。正体を明かすわけにもいかないので、先手を打たないと追い出される可能性が高かった。


 すぐに「黄玉邸」の侍女がライカの傍に来る。


 「何かご用でしょうか。ここ「黄玉邸」は貴族の方々が集う場です。貴方はこの場に相応しい方ではないように見受けますが」


 「承知しています。ですが今入っていかれた赤毛の方にどうしてもお会いしたいのです。僕は外にいますので、どうか彼女を呼んでいただけないでしょうか。お願いします」


 ライカは頭を下げ、少し経って顔を上げると侍女に微笑んだ。ちなみに男装した彼女はかなりの美男となっている。ライカは自分の顔を美しいと思ったことはないが、男装すると女性からの視線を感じることが多かったので、城下などでは前髪で顔の半分を隠していた。しかし、今回はダレスの従者ということもあって、きっちりと髪を後ろで一つに纏めていたのだ。


 そんな顔でしっかりと目を見て微笑みを向けられた侍女は、瞬く間に頬を赤く染めた。


 「えっと、今入ってきたのは伯爵令嬢付きの侍女ね。・・・今回だけは特別に呼んできてあげましょう」


 「ありがとうございます」


 ライカは心の隅で罪の意識を感じつつ、感謝の意を述べた。


 「この事は内密に願います。まだこの職を辞めたくありませんので」


 「もちろんです。では、僕は外で待っています」


 こちらから言おうとしたことを先に侍女に言われたライカは、早々に屋敷から出ることにする。





 「黄玉邸」から少し離れて様子を窺っていたライカは、赤毛の女性が屋敷から歩いてきて敷地を出たのを確認するとそっと背後に忍び寄って声をかけた。


 「何故私を尾行けたのですか」


 「ひぃっ!」


 突然背後から声をかけられた女性は、小さく悲鳴を上げて飛び上がってライカの方に振り向いた。


 「答えて下さい」


 少し言葉を強めると、女性は恐る恐る口を開く。


 「は、はいぃ!・・・そのぅ・・・お嬢様に頼まれたのです」


 「あなたは、伯爵令嬢に仕える侍女でしたね」


 先ほどの「黄玉邸」の侍女の言葉を思い出す。


 「ご存知なんですか?・・・そうなんです。お嬢様に貴方の素性を探ってこいと言われて貴方を追ってたんです」


 「理由は?伯爵令嬢とは面識がないはずです」


 「それが・・・そのぅ・・・来月号に載せたいと仰られまして・・・」


 「・・・は?」


 「お嬢様は昨日偶然城下で貴方が歩いているのを目撃されたのです。それで、彼なら記事にするのに相応しいから取材して来いと言われたんですぅ~!」


 朝から探しまわって漸く見つけたと思ったら、すぐに見失ってしまって・・・と赤毛の女性は半泣き状態でライカに説明をする。


 聞いてるライカは、予想だにしなかった事実に思考停止寸前だ。


 「・・・・・・・・・記事とは?」


 まだ説明を続けている女性に、あまり知りたくないと思いながら聞いてみる。


 「え?ああ、お嬢様は騎士を慕う会の会報担当なんですけど、最近目新しい出来事がなくて書くことがないって困ってたのです。それで色々と考えた結果、城下にいる隠れた逸材を見つけ出して記事にすることを思いつかれたのです」


 貴方はその第一号なんですよーと、女性が話しているがライカにはもはや聞こえていなかった。


 (騎士を慕う会!?あれは伯爵令嬢が書いてたのですね。いえ、今はそんなことよりもこの場を離れなければ・・・!)


 このままこの場所にとどまってもいやな予感しかしないので、早急に王城へ戻る事に決め実行に移した。


 「・・・・・・ですから、お願いです!お嬢様の取材を――――――!?あれ???」


 女性が夢中になって話している隙に、ライカは気配を消して女性の前から去った。


 「どこに行っちゃったんですかぁーー!取材を受けてくださーーーーい!!」


 そうして「黄玉邸」の前には、突然いなくなったライカを探す赤毛の女性の姿だけが残ったのだった。


 



 王城の正門に戻ったライカは、城下で撒いてしまった騎士やフレイエから一体何処にいたんだと問い詰められたが、理由は何も言わずに謝り続けた。


 (今日のことは忘れましょう。・・・しばらくこの姿で城下に行かないようにしなくては)


 そんな事を考えながら謝るライカの姿を、ダレスはじっと見つめていた。



 


 翌日、ライカとダレスが相談して選んだ騎士が二人、ダレスに呼ばれて執務室の中にいた。


 「5日後、ノディークに行ってもらう。詳しい事はこれに書いてある。読んだら返せ」


 『はっ!』


 受け取った用紙に書かれている文字を一文字も漏らさずに読み終えると、騎士たちはすぐにダレスに返した。


 「質問は?」


 『ありません』


 「よし。下がれ」


 『はっ!失礼します』


 今回は少し長かったですが、これで任務終了です、とライカが思っているとおもむろにダレスが口を開いた。


 「ライカ」


 「はい、ダレス様」


 「昨日は・・・どこに行っていた」


 「それは・・・」


 一番聞かれたくない事を聞いてきたダレスに、何と答えるべきかライカは一瞬迷った。


 「申し訳ございません。その質問にはお答えできません・・・至極個人的なことですので」


 やはり真実は話せないと、謝ることにする。


 「・・・そうか」


 「本当に申し訳ございません」


 「いや、いい」


 ダレスの低い声がさらに低くなったような気がした。


 「陛下に今回の件をご報告申し上げねばなりませんので、私はこれで失礼させていただきます」


 「・・・ああ」


 一礼すると、ライカはダレスの執務室を後にした。


 部屋に一人になったダレスは、その後フレイエが呼びに来るまで微動だにしなかったという・・・。


     

 


    

これで第二部は終わりですが、第三部にいく前におまけの話をいれます。

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