26話
中途半端で申し訳ありません。
それから3日間は何事もなく城下での訓練が行われた。初日にライカを見つけることが出来なかった騎士たちも、要領を得たのか次の日からは何とか彼女を見つけることができるようになった。途中で彼女を見失うこともあったが、概ね順調に訓練が進められているとライカは実感していた。
いつもと違うことに気付いたのは、町での訓練を始めて5日目、7日の期限を明日に控えた訓練の最終日のことだった。
昼二の鐘が鳴って一刻ほど過ぎたころ、こうやって歩き回るのも今日で最後だなと思いながら大通りを歩いていたライカは、騎士のもの以外の視線を感じた。
(見られている・・・?)
その正体を確かめるべく、すぐそこにあった帽子屋の前に行き、窓越しに帽子を見ている振りをする。そして窓に反射した景色を見ると、遠くにだがフードを被り全身を外套で覆った人物がこちらを見ている様子が映っていた。
ライカは何気ない風を装って帽子屋の前から離れ、自分が尾行されているのかどうかを確認するために再び歩き始める。
騎士たちが自分を追ってくるのが気配でわかった。フードの人物もついて来ているようだ。
(やはり私を尾行けているようです。なぜなのかはわかりませんが)
視線に殺気は感じられなかったので、敵ではないと思うのだがフードで顔が見えないので判別ができない。どうするべきかライカは歩きながら考えを巡らせる。
(あの人物は私を誰だと思って尾行しているのでしょう)
フードの人物は彼女のことをライカだと思っているのか、ライルだと思っているのか。どちらしても尾行される心当たりはなかったが、放置するわけにもいかず、彼もしくは彼女を撒くことにする。
(騎士の方々も撒いてしまうことになってしまいますが、仕方ありません)
ライカは歩く向きを変えて、大通りから路地に入ると、何度も曲がり角を折れて奥へ奥へと向かう。大通りを中へ入るとそこは、限られた土地に大勢の民が住めるよう背の高い集合式建物がひしめき合って建っており、道もかなり狭くなっている。かなり入り組んでいるため、慣れない人間は迷うこと必死の場所だ。
フードの人物を撒いて人気のないところまで来ると、素早く建物の屋根に上がる。下を見下ろして見渡すとフードの人物と騎士たちがそれぞれ建物も間をうろうろとしているのが見えた。どうやらお互いの存在には気づいていないようだ。
(ここから見る限りではフードの方も城下には不慣れなようですが・・・それにしても誰なのでしょう)
追われる理由が分からないライカは、フードの人物が誰なのか心当たりが全くない。
うろうろと住宅街を彷徨っていたフードの人物は、四半刻ほど経つと諦めたのか大通りへと戻っていく。すぐにライカも後を追って屋根を下り大通りへと向かうことにする。
騎士たちはまだ住宅街から出てきていない。
(騎士の方々には後で謝らないといけません)
多少の申し訳なさを感じつつも、ライカは騎士を放置することに決める。
大通りにはフードを被った行商人や他国からの旅人などが何人も歩いているため、ライカを尾行していた人物を追うことは難しかったが、彼女は気配を消して確実に後をついて行った。
フードの人物は大通りを北へ抜けて、貴族の住宅がある区域へと進んでいく。
(最近同じようなことをしたような気がします・・・)
子爵の息子を尾行したことを思い出していると昼三の鐘が辺りに響いた。
(すぐに王城に戻らなければ皆様にご迷惑がかかってしまいます。しかし)
正体を確かめずにこの場を離れたくはないと、尾行を続けることにする。
幸いフードの人物の目的地はすぐ近くだったようで、貴族区域に入ってすぐ歩みを止めた。そこは貴族がお茶会や夜会を開いたりする場所「黄玉邸」だった。遠い昔に没落した貴族の屋敷を改築しており、かなり豪華な造りとなっている。貴族であれば誰でも利用することができ、この場所では頻繁に様々な趣向を凝らした会が開かれている。どんな会が開かれているかは、「黄玉邸」の前にある看板に記されており、訪れた人がすぐ分かる仕組みだ。
「黄玉邸」主催の茶会や夜会は一風変わったものが多いため、いつも大勢の貴族で賑わっている。ちなみに「黄玉邸」は王都に住む全ての貴族が出しあった資金で運営されているらしい。
全てマールから聞いた情報だ。
ライカが看板を見ると何も書かれていなかったので今日は会は開かれないようだ。
フードの人物は扉の前でフードを取ると中へと入って行ったが、露わになった顔を見てライカは驚いた。
貴族は自分の屋敷で茶会なども開くこともありますが、黄玉邸に行くことの方が多いです。




