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ほんの少しの味見と言った姉  作者: 夏見颯一
番外編【白昼夢の令嬢は夜を知らない】

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1【夢見る令嬢の夢】


 彼女は夢を見ながら生きていた。

 いつまでも夢を見て生きていた。


 その夢がなんなのか、誰も知らない。


「婚約を解消しよう」


 そう、婚約者のロアズ伯爵令息レオンに言われた時、彼女がふわりと微笑んだのも、きっと優しく甘い夢を見ていたからだ。


 それまでレオンは何とか彼女の夢を覚まそうとしていた。

 だが、一向に目を覚ます気配のない彼女に、現実を見据えないといけない貴族夫人を務める事は無理だとレオンは諦めざるを得なかった。


「いつか迎えに来てね」


 両家の間で婚約解消が決まり、去って行くレオンの背に彼女は声をかけたが、迎えに来るつもりのないレオンは返答もする事はなかった。

 永久に夢の中で待っていれば良い。

 その後、レオンと彼女は会う事はなかった。


 だから、彼女の夢がなんなのか知る事はなかった。



「いつか迎えに来てくれるから」


 現実の世界に彼女の理解者などいなかった。

 彼女の目には現実は映らず、誰の言葉も届かない。


 婚約者として一心に寄り添っていたレオンの言葉も彼女を動かす力はなく。

 騎士団で顔を合わせたマリーベルの言葉にも彼女の夢を覚ます力はなかった。



 彼女はただ、夢を見ていた。

 それが実は楽しいだけの夢だけではなく、自分に都合の悪い夢であっても。

 その夢が覚めるまで。






『覚めないけどね。起きてるから』


 深い闇の向こうからのたくさんの笑い声は、人の耳には届かない。




ご注意ください。

ファンタジー部分の謎を含めての番外編です。

なお、魔法要素は微妙です。妖精に期待してはいけません。

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