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ベータのくすり屋  作者: 碧海


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辺境の町より ユーリス

閑話 ユーリス視点です。

<ユーリス>

 この国シェーングレンは、風の精霊信仰を中心に人々は暮らしている。


 俺、ユーリスはその王都中央で生まれ、7歳の時に教会によってアルファと認定された。兄3人姉2人の6番目。両親の仲は大変良くて、父は母一筋。それで子ども6人だから母は大変だったと思う。


 アルファであることと、生まれつき魔力が多かったので、小さいときはよく魔力暴走を起こして雷をあちこちに落として困らせていた。一番大きな魔力暴走の時には、家に雷が直撃して大穴が開いた。


 魔力が多いこともあって、王都の魔法学校へは行かずに主に家庭教師から学び、魔法士に魔力のコントロールや魔法の使い方を教わった。


 上に兄たちがいるので、俺は跡継ぎの心配もなく割と自由に育てられ、16で成人する頃には冒険者として独立すると言って家族を驚かせたが、いろいろな条件付きで許可を得た。


 その条件の一つがこいつ、キルディスを連れていくことだった。キルディスは俺の2歳上で幼いころから一緒に育ち、年の離れた兄たちより兄に近く兄弟のような友達のような存在だ。


「キリー、今更だけどお前本当に俺についてきてよかったのか? 家からそろそろ帰って来いって言われないか?」

「いまさら何言ってるんだ、もう家を出て6年だぞ。俺は3男だし、家は兄が継いですでに男子が2人生まれてる。妹も去年結婚したし気楽なもんだよ。」


 癖のある黒髪をかき上げて、薄茶の瞳でいたずらっぽく笑った。俺も割と大きな方だが、キルディスは背も体格も一回り大きい。こいつもアルファだが威圧感がないのはこの人懐っこい笑顔のせいだ。


「ユーリス、明日からファーレン商会の護衛依頼だったよな。」

「ああ、ルードが隣国へ買い付に行く護衛だ。明日王都を経って、中央門経由。戻りは5日後の行程だったはず。」

「了解。今回は護衛1人の契約だったから俺は王都にいるけど、何かあったら魔法通信で連絡しろよ。」

「まったく・・・。俺をいくつだと思ってるんだ?もう22だぞ。独立した16の時から過保護は全く変わってないな。」


 俺はため息つきながらキルディスに向かって言った。


「俺にとってはいくつになっても出会ったときの可愛いユーリスだよ。 あ~、金髪で大きな碧目が可愛い子だったのになぁ。すっかりデカくて可愛くなくなっちゃったぜ。」

「年寄りの思い出話かよ。お前だってまだ24じゃん。」


 俺は基本王都のはずれにある小さな自分の家を拠点にしている。小さいといってもそこそこ部屋数はあるのでキルディスも一緒に生活してる。


 冒険者になりたては、王都のギルドに登録して2人で傭兵や護衛の依頼を片っ端から受けて経験を積んだ。ギルドに登録して6年。そこそこ経験を積んできたので、今では常連からの指名依頼を主にうけて生活している。軽い依頼なら俺1人で受けることも多くなってきた。 


 魔力と魔法のレベルは俺の方が上になったけど、剣の実践となるとキルディスの方がまだまだ上なので俺を1人で出すのがまだ心配みたいだ。まあ、うちの家から息子をよろしく~って言われちゃってるから仕方ないか。


 俺は翌日早朝ファーレン商会の荷馬車でルードと一緒に辺境の町へ向かった。


 中央門のある辺境の町は、ルードの妹ブラウが小さな薬屋をしている。 俺より2歳年下だが独立して店を経営してる。ルードや家族が心配しているが、自分で調剤もするし、特に健康茶は独自のブレンドをして評判が良い。案外しっかりしている娘だと思う。


 ファーレン商会とは冒険者になりたてのころから依頼を受けているので長い付き合いだ。商会はいろいろなものを扱っているが、特に力を入れているのが薬や薬草だ。商会内でも薬師を雇い入れて薬を作ったり、新しい薬の研究もしている。そのため隣国への買い付けや、城壁外の薬草の採取に護衛は必須だ。最近はルードや他の商会員の護衛は、ギルドを通す場合もあるが直接俺に依頼がくることも多くなった。護衛は信用が大事だからな。なのでルードとも気心が知れている仲だ。


「ルード、今回は短期の買い付けなんだな。」

「ああ、定期買い付けじゃなくて、急ぎで必要なものがあったからね。」


 ルードガー・ファーレンは29歳で妻子持ち。商会はまだ両親が現役で切り盛りしているが、買い付けなど重要なところはほぼ任されている、優秀な後継者だ。


 荷馬車の御者台で柔らかい金茶の髪が揺れている。彼の家族は全員ベータだが、妹も含めなかなか商才にたけている一家だと思う。なにより、彼らのまとうやわらかな空気が好きだ。


「ブラウの店は繁盛してるみたいだな。」

「うん、常連さんに可愛がってもらってる。はじめはどうなるかと思ったけど、ユーリスに張ってもらった店の結界魔法は厳重だし、中央門の警備隊長にも頼んで時々様子を見てもらってるし、魔法通信でその日の売り上げ報告と一緒に日々の様子もわかるから、うちの両親も少し安心してる。」


 ブラウによく似た横顔がやさしく笑う。


「魔法通信のやりとりだけだったから、2か月ぶりに顔を見れるから楽しみだよ。」


 ここにも過保護がいた。もう成人してるのに独立した子どもを心配するのはどこの家でも同じなのか。なんだかくすぐったいような気がする。いかん、護衛なのに油断しすぎだ。まあ、中央門を出るまでは大きな危険はないからほどほどの緊張でいいかな。


 そして俺たちはブラウのいる辺境の町へ向かって行った。


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