『リ・バース』第一部 第6話 Claymore①
○降霊術(汎用)
・腕状霊魂…腕型の魂を招聘する。
・口状霊魂…同じく口型の魂を招聘する。
・拘束術…霊力の輪で対象を拘束する。
・物体操作術…特定の物体を触れずに動かす。流体のベクトル操作も可能。
・失神術…対象に気絶状態をもたらす。
・除霊術…魂を境界に送り返す。降霊術の解除が可能。
○降霊術(固有)
・纏鎧術…イスラフェリオの固有降霊術。身体強化の上位互換。
・吐魂術…イブンの固有降霊術。自身の魂を分割し、他の肉体に宿す。
・嚥魂術…キルヒムの固有降霊術。他の魂を自身の肉体に宿し、そこに刻まれた肉体情報と魔術を再現する。
・毒化術…ウカノフの固有降霊術。致死毒を散布する。
・吸血霊術…ピックルス一族の固有降霊術。武器に吸血霊を宿し、自身の血を吸わせる事で攻撃力の向上、生体武器化を図る。
・影の部屋…「影」の固有降霊術。異空間「地下」を開く。
○死霊化術
・突然死…術に使用する怨霊を生成する。通常の降霊術に於ける「魂の招聘」に当たる工程なので厳密には術ではない。
・使役術…対象を生ける屍化し、操る。
・招喚魔術…使役術で生成した生ける屍を遠隔地から呼び出す。通常の招喚魔術とは詠唱が異なる。
・死の舞踏…シュラの固有降霊術。常時発動。「死に至る病」状態をもたらす瘴気を散布する。
① シアリーズ・ド・ゲネラッテ
帝城、天秤宮二階バルコニー。
五大近衛宮のうち南側に位置する三つ──白羊宮、獅子宮、宝瓶宮──と庭園を臨むそこにシアリーズが足を運ぶと、既に先客が来ていた。
妹であるアウロラ姫だった。外周の手摺りに凭れ掛かり、頰杖を突いてぼんやりと庭園を見下ろしている。
シアリーズは、予想外の事に少々驚く。アウロラは昔からあまり活動的な方ではなかったが、先帝の死去以来増々自室に籠り、公的な場以外で姿を見せる事は少なくなった。今もふらりと彷徨い出てきたのだろう、家臣たちが見たら慌てて即座に叱言を言うであろう寝間着姿で、髪も結わずにそこに居た。
やや躊躇ってから、シアリーズは声を掛けた。
「アウロラ」
「陛下……?」
妹は、物憂げな表情でこちらを振り返る。シアリーズは微笑み掛けた。
「二人きりじゃない。そんなに畏まった呼び方はしなくていいのよ」
それから改めて彼女を見つめ、彼女の寝間着が病人の着るそれである事に気付いてやるせない気分になる。殊更に周囲に見せつけるような事をしなくていいのに、と思うが、自身も喪服を意図した黒いドレスを何年も纏い続けているので、他人の事を言える立場ではない。
アウロラはふっと息を吐き、足早にバルコニーを出ようとする。シアリーズは咄嗟に「待って」と呼び止めた。
「……何ですか、お姉様?」
「えっと……アウロラ。ここで、何をしていたのですか?」
取り立てて用件がある訳でもなかった。苦し紛れな事を言うと、アウロラはやや不快そうに眉を潜めた。
「別に何も。何処に居ようが、私の勝手でしょう?」
言ってから、微かに唇を噛む。
「ああ、でもごめんなさい。ここはお姉様のお気に入りの場所ですものね。私は部屋に戻りますので、どうぞごゆっくりお過ごし下さい」
「アウロラ──」
やはり彼女の気は荒んでいるな、とシアリーズは思う。
バルコニーは確かに、皇女時代から自分のお気に入りのスポットだった。ライガやリクトが天秤宮に遊びに来ると、自分たちはよくここでお茶会をした。アウロラの事も招く事はあったが、彼女は自分たちに遠慮し、時々誘いに乗ってもすぐに部屋に戻ってしまう事が多かった。
リクトはしばしば彼女を気に掛け、あれこれと世話を焼こうとしたが、それも彼女には辛い事であるようだった。
「ドーデムの事が、心配ですか?」
違うだろうなと思いながらも、シアリーズはそう口に出す。
アウロラは、冗談ではないというように顔を顰めた。
「ヤーツ殿の事が? 何で私が、あんな鼬のような男の心配など」
「婚約者を、そのように言うものではありません」
言いながらシアリーズは、自分は何と残酷な事を言っているのだろう、と思う。
マロン=エキュレット・エルヴァーグの事を思い出した。アウロラは以前の婚約者である彼とも、あまり仲が良くなかった。マロンの方で婚約について事務的な態度を取り、彼女との関係を深める事にあまり積極的でなかった、という事もあるが、アウロラはそもそも、シアリーズの婚約者であるリクトを慕っていたのだ。
彼女はそれでも、自分の立場について、子供にしては痛々しさすら感じる程に理解していた。意識せずに冷ややかな態度を取り続けるマロンとの関係について自分なりに考え、自分から積極的になろうと努めていた。
しかし、最終的にマロンは──。
「お姉様に言えた事ですか? 私が……あの頃の私が、どれだけ望んでも叶わなかったものを持っていながら、贅沢にもあの男を求めたあなたに」
アウロラは、くしゃりと顔を歪めた。
「あの男が、戻って来たのでしょう?」
ごくあっさりと言われ、シアリーズは胸郭の内側で心臓が跳ねるのを感じた。
「何故、それを……?」
「お姉様の態度を見れば一目瞭然です。……安心して下さい、誰にも言うつもりはありませんから」
アウロラの口調は、吐き捨てるかのようだった。
「お姉様はいいですよね。外見は変わってしまったとはいえ、またあの男に会えたんですから。それなら何故、マロンは戻って来ないのですか? おかしいじゃないですか……あの男は、マロンを……」
「アウロラ……」
シアリーズは疼く胸に拳を当て、視線を落とした。
「……ごめんなさい。私は、確かに我儘な女なのでしょう」
「もういいですよ。今の私は、レボルンス殿を求めている訳ではありません。お姉様から何かを奪いたいなんて事も、思っていない。お姉様に何かをして欲しい訳でもない。単なる、見苦しい嫉妬です」
アウロラは言うと、すたすたとシアリーズと擦れ違った。
──自分は何処まで、妹を傷つけてしまうのだろう。彼女の慕うリクトの婚約者という立場、それで居ながら、ライガを求めた事。それが立場上叶わないものでありながら、彼と共に居る事は許された事。
そしてその彼は、いつしかアウロラにとってリクト以上に大切な存在となったマロンの仇となった。もう戻らないマロンを置き去りに、戻って来たライガ。その事に喜びを覚えずにはいられない自分──。
「……嫉妬くらい、させて下さい。別に私、お姉様の邪魔をしようなんて、思いませんから」
アウロラはそう言うと、立ち去った。
シアリーズは暫し無言で佇み、やがてゆっくりと手摺りに歩み寄った。
もう今までの人生の半分以上の月日を遡る昔、この場所で談笑していた幼い自分たちの姿が、今でもそこに見えるようだった。あの頃から自分は、妹に犠牲を強いていたのだ。
しかし──ならば、どうすれば良かったのか。
彼女と一つしか歳の違わない自分に、何が出来たというのだろうか。
(ライガ、リクト……帰って来て)
ソレイユで戦っている彼らに、シアリーズは胸の内で語り掛けた。
アウロラの気持ちは分かっていても、ライガに生きていて欲しいという気持ちを否定する事は出来なかった。
本日より第六話「Claymore」を投稿します。いよいよライガとリクトがイスラフェリオと交戦する話ですが、イスラフェリオは敵組織の長なのだから相当強くしなければ、と意識した結果、とてつもなく凶悪な強さとなってしまいました。この後これと戦う場面を何度も書かなきゃならんのかい、と思うと気が滅入りますが、現代編のライガも一撃必殺の技を乱発出来るのでまあおあいこでしょう。
『夢遥か』連載時の「鵤羽原流刀術」や、こちらは未公開ですが先々月また集英社ライトノベル新人賞に応募した作品──なろうで公開する未来は来て欲しくありません──など、最近の藍原センシのバトルものにはどうも一撃必殺の技が戦局を左右するネタが多いような気がします。そういう技に対してどのような対策を取るのか、或いはどのような場面で効果を発揮するのかなどを考えつつ書くのは難しいながらも面白いものです。
バトルもの(ラノベ以外ではあまりありませんが)を書く作家の人たちに「凄いな」と思うのは、三十ページくらいぶっ通しで戦闘シーンを書いたとしても全く冗長な感じがしない事です。これにはやはり、戦闘が単調なターン制にならない、という事があると思います。私はしばしば舌戦でお茶を濁している節がありますが、人語を解さない魔物との戦いなどではそういう訳にも行かず。そう考えると、改めてSAOプログレッシブなどは凄かったのだなと思えてきます。
因みに舌戦で私の好きなパターンは、「感情的な主人公、嘲弄的な態度を取りイデオロギー的な台詞を吐く相手」→「相手、頑なな主人公に対し動揺し段々と感情的になる」→「主人公、理論を超越した叫びと共に押し切る」というものです。既存の作品では、Fate(UBW)の士郎とアーチャー、ガンダムSEEDのキラとクルーゼの戦闘などがそのような感じです。小説では、三島由紀夫『美しい星』の大杉重一郎と羽黒一派の人類存亡をかけた舌戦が非常に感動的なのでお勧め。
脱線しましたが、ここまでお読み下さりありがとうございました。




