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ギャルズメロディー2期   作者: キスよりルミナス
二章  トーナメント
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9話  黄昏時に貰う手紙 (楓)

  9話  黄昏時に貰う手紙 (楓)



 気がつけば2月の下旬になり、あと2週間でトーナメント本番という時である。

 珍しいこともあるもので、田崎先生が部活に顔を出した。アイドル部の顧問ではあるのだけれど、まだ若いので雑務なり何なりが多いんだとかで、なかなか部活に顔を出せていない様子。

 そんな話を聞くと教師の仕事ってブラックだなぁと思うけれど、これくらいの話はまだ優しい方だと鈴音が言っていたのを思い出した。以前に鈴音の父親(学園長)が勤めていた学校は、若い教師が毎年のように辞職願いを出してくるんだとか。

 とまぁ、どこの学校でも新米教師というのは雑に扱われがちであるけれど、田崎先生は苦しい表情をしていないからホッとする。


 「さて、再来週に迫ったトーナメントなんだけど、メンバーについては和美ちゃん(松崎先輩)から話があると思うけれど、大会の概要については私から話すね」

 と、言って田崎先生はツラツラと長いお話を話し始めた。「それ、本当にいる?」っていう大会の規約も話すものだから途中眠りかけてしまった。



 どうやら今回大会は出る学校が少ないため、今年はトーナメント戦はせずに、8学校がそれぞれパフォーマンスをしてからその中から1位を決める。

 そして、その1位が決勝で前年度優勝校である里見学園との対戦になるらしい。

 1つの学校につき、ユニット部門は2人で1組、ソロ部門は2人枠があり1人ずつ競技をすることになっている。



 8校だけとはいえど、九州の月城や、東京の私立何とか学園(名前知らない)やら、大阪の国立音楽何とか学校(こっちも知らない)など、名門校しか出ないんだとか。

 それに比べてうちの学校といえば、アイドル部は2年目であるし、去年は地区大会で月城に負けたような……と、あまり好ましい状況ではない。

 残りはメンバーで誰が残るかという問題になってくる。優勝を狙うのならば、先輩2人と、鈴音、香織の4人がベストな判断だと思う。だが、私だって出てみたい……。

 

 「じゃ、次は和美ちゃんからのメンバー発表だよ。和美ちゃんよろしく」


 気がつけば先生が松崎先輩にバトンタッチをしたところだった。松崎先輩は私達の前に出て、1度私達全員と目を合わせてから持っている紙に視線を落とす。

 

 松崎先輩、頼みます。私も出てみたいのです!


 心の中でそう叫んだけれど、松崎先輩には心の声が届くわけないだろう……。



 ※  ※  ※ ※ ※ ※


 

 結果から話そう。結果として私は、トーナメントの桜咲学園代表メンバーに入ることができた。

 ソロ部門に私と鈴音、ペア部門で香織と松崎先輩が出ることとなった。


 保真麗と桜田先輩が出ないことになったけれど、その理由は以下の通りである。

 

 桜田先輩は、大会当日に歌番組への出演が被ってしまい出ることができずに、保真麗はバレンタインイベントの時に会社側からホワイトデーも頼まれたらしく、トーナメントの日は撮影日で大会に行けないんだとか。


 と、いうことで私は消去法で選ばれた可能性が無いことはない、というよりむしろ消去法だったと言う方が良いのかもしれない。

 余った桜田先輩の枠に保真麗も入れることが出来ないので、仕方なく私を入れるしかなかった。そんな話があってもおかしくない。

 けれど、選ばれたことに変わりはないので胸を張って出場をすることができる。


 トーナメントに向けて心を少しだけ整理するために私は寮前のベンチに座って、沈むのが遅くなった夕陽が照らす夕方の空を眺めていた。鮮やかなグラデーションが綺麗で、見惚れてしまうほどに美しかった。

 普段、空をぼーっと見上げることなんて無いから、新鮮な経験であって悪くはない。

 ブレザーを着ているから体全体が寒いと感じることはなく、顔をそっと撫でてゆく冷たい風が気持ちよかった。

 

 「東田、こんなとこで空を見上げてどーしたんだ?」

 

 あ、この声は彼の声じゃん。顔を見らずともそこにいるという事実だけで、嬉しくて心が弾んでしまう。

 「私さ、トーナメント出るんだ。スクールアイドル・トーナメントっていう中学生アイドルの一大イベント……」

 どんな言葉を返してくれるのかな?喜んでくれたかな?なんて妄想を膨らましながら、空を見上げたまま返事を待つ。

 空って綺麗だなぁと、群青色に染まる空を眺めていると、私の横にドカっと彼が座った。

 私は、彼の顔が見たくて空を見上げるのをやめて隣に座る彼と目を合わせる。切長の目が私は好きなポイントの1つでもあったので、目を合わせると緊張してドキドキと心臓が飛び出しそうなほどに拍動してしまう。

 「おめでとう。その大会がどの程度のものなのか、俺にはサッパリ分からない。ただ、お前から話してくれる話題ってことは嬉しかったんだろうな、その事が」

 「えへへ、ありがとね、笹岡」

 私は隣の彼に少しだけ寄って甘えてみる。

 優しい笑顔で微笑んで、男子のゴツゴツとした右手でそっと私の頭を撫でてくれる。そっと撫でてくてる、ただそれだけでも、この日々が幸せなものであると感じることができる。

 友達と一緒に大会に向けて頑張って、好きな男子との大切な時間を過ごすことができて、本当に素晴らしいなと実感する。

 いつか忘れたけど、香織と会って間もない頃、「私達、青春してるね」なんて話したことを思い出す。もうあの記憶も前の記憶になってしまっている。

 チョコを最後まで渡すことが出来ずに、結局それを自分で食べちゃったような人も居れば、恋愛なんてしなくていいと言って恋愛をしない人も居る。

 そんな中で私はなんと恵まれているのだろうか。東田 楓で良かったなと思う。

 

 「突然のことなんだが、この前、事務所に行った時にユアユイ先輩達から手紙を頂いていたんだ。Cosmicrownの誰かに渡して欲しいと言われていたが、東田が話しやすいと思ってな」 

 「え、見せて見せて」

 笹岡は確か《ミュージック・スターズ》で作曲やらをしていた気がする。それなら、優亜先輩や結衣先輩とも話す機会があってもおかしくない。

 私は体をさらにギュッとくっつけて笹岡にさり気なくアピールするが、笹岡は表情を一つ変えずに手紙をポケットから出す。恥ずかしがってくれていいのに、と思いつつ、笹岡のことを見る。笹岡が1枚のメモ用紙みたいな手紙を出す。私はそれを受け取り内容を確認してみる。


 

 『  Cosmicrownの誰かへ

        

   

  この前、オーナーからCosmicrownのメンバーの名前表記についての相談があるので、リーダーである香織ちゃんを呼んできて欲しいと言われたの。

  だから、香織ちゃんにそう伝えておいてね、よろしくね。( ・∇・)

 

        篠崎優亜・結衣 より  』


 手紙にはこのようにメッセージが書かれており、丸文字で可愛らしく書かれていた。

 結衣先輩が書いたのであろうと、字を見るだけで判断できる。優亜先輩は綺麗な字を書くけれど、達筆すぎて逆に読みづらいような字を書くけれど、結衣先輩は丸文字で可愛い字を書いている。

 

 それにしても、名前の表記ってなんなんだろう……。


 私には全く想像がつかないけれどそんなことはどうでもいい。香織にあとで聞けばいい話だし、今は大会に向けて集中しなければならない。


 「……ユアユイの先輩たちからの手紙読み終わったか?」

 「うん。ちゃんと読んだよ。」

 笹岡がなんだか性に合わずソワソワとした態度である。その証拠に、なんか視線が彷徨っていて私のことを見てくれようとしてない。あと、気になっていたのだが、さっきからずっと左手私から見えないように隠しているんだけど何か隠してるの……?

 「お前に渡したいものがある……」

 「はぁ……、なになに?」

 笹岡がようやく左手を出した。左手には、丁寧に封筒までしてある手紙があった。

 それが何なのか考えていた私に、笹岡は手紙を突きつける。急に前に手紙を差し出されて驚いてしまった私はギョッとしてしまう。

 笹岡は普段は冷静な人間であるため、手紙を他人に渡す際にそのように乱暴に突きつけたりしない。実際、さっきの先輩からの手紙の時だって、いつも通りだったのに今回はどうしたの?

 「急にどうしたの……?」と、態度の変わりように半分呆れつつ、手紙から視線を上げて笹岡の顔を見てみる。

 そこにはモジモジとした態度の笹岡がいた。辺りはすっかり暗くなっているが、いつのまにか点いていた外灯の灯りのおかげで笹岡の様子が伺える。

 普段見られないその様子を観察するようにじっと見ていると、笹岡はさらに顔をカーッと赤くする。そして、ゆっくり立ち上がってベンチに座る私のことを見る。

 「……手紙の中身は、あのプレゼントだよ……。」

 そうボソッと呟いただけで、その後はどうも言葉が続かない。普段とは全くの別人のような笹岡に「何なのよ……」と思い、続くセリフを待っていると、笹岡が突然に走り出した。

 何か言いかけたまま逃げられてしまうのでは、気になってしまうので笹岡を呼び止めようとする。

 「ま、待ってよ!」

 すぐに止まってくれたから、さほど距離は離れていない。灯りがあるとはいえど、もう辺りは暗いので離れてしまうと顔の様子が伺えない。私は貰った2つの手紙をスカートのポケットに入れベンチから立ち上がり笹岡にゆっくりと歩み寄る。

 「笹岡、あのプレゼントってなんのこと……?」

 笹岡のいう『あのプレゼント』が何のことか、私には分からなかった。

 ゆっくりと私の方を振り返った笹岡は、意を決した様子で私と目を合わせる。

 「前に言ったクリスマスプレゼントのこと、覚えてるか?」

 「うん……。」

 クリスマスの日、クリスマスプレゼントを頼んだところ、既に渡してあるというような返答が返ってきた。その時、『何言ってんだろう……』と不思議に思ったが、そのプレゼントのことについて何か話があるのだろう。


 「クリスマスプレゼントは、Cosmicrownのクリスマス曲だ……。」


 「……えっと……。えー!?あんたが作ったの!?」


 以前、笹岡がミュージック・スターズで作曲をしていると本人が言っていたが、私達のクリスマス曲を担当していたことまでは気づかなかった。私は、クリスマス曲の可愛らしいイメージと普段の笹岡とのギャップに驚きを隠せなかった。


 「その手紙の中には、Cosmicrownのクリスマス曲の楽譜が入っている。あの曲、俺が作曲したんだ。お前のイメージに合うようにって。」


 恥ずかしそうな様子の笹岡は、最後の方は私から目を逸らして地面を向いてぶつぶつと言葉を発していた。

 今なら,今までのやり返しができると思い、咄嗟に意地悪な言葉ををかけてみる。


 「へぇ〜、私のこと考えながら?っていうか、こんな可愛い曲作れるなんてねぇ。」

 

 「うるせー。こっちは仕事なんだから仕方ねーだろ!」


 顔を真っ赤にして否定した笹岡は、私に背を向けて男子寮へと帰っていった。

 そんな笹岡を引き止めることも出来ずに、私はその様子を見送っていくことしか出来なかった。 

 

 姿が見えなくなったのを確認してポケットからあの手紙を取り出す。

 そっと封を開けて中身を確認すると手紙が数枚入っている。

 確かに笹岡の言う通り、あの時のクリスマス曲の譜面が小さくコピーされて入っていた。

 歌詞は手書きで、丁寧な字で書かれていた。そして、その歌詞の最後には『アイドル活動頑張れよ。』と笹岡の字でメッセージが書かれていた。あの笹岡が……?と意外に思う。


 「ほんと、恥ずかしがり屋さんね。」

 

 明日、このセリフを言ってからかってやろうかなと思ったが、こんな嬉しいプレゼントを貰っては、そんな意地悪もできない。

 貰った譜面の紙を元に戻して、ポケットの中に大事にしまい女子寮へと帰った。


8話と9話本当はセットだったんですが、ちょっと場面の変わり方的にバラバラにしました


Twitterのキスよりルミナスもよろしく

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