表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャルズメロディー2期   作者: キスよりルミナス
一章  鈴音・香織の成長編
PR
6/15

6話  夢幻であるならば 《後半》(鈴音)

6話   夢幻であるならば……《後半》 (鈴音)



 ①  夢との向き合い方


 

 自分の夢もハッキリと分かっていなかった自分がGND代表として、このフェスに出場していることは間違ったことである。

 多くの賑わいを見せるこの会場に居る来てくれた人達に夢を与えなければいけないのに、こんな私が夢を与えれるはずは無い。そして、みんなにも……。

 

 強い自分であるために気づかないフリをしていた根付いた気持ちが私を錯視させていた。今は、前に夢見ていた幻覚のような夢は『夢幻』と名付けるとしておこう。

 

 もし、アレが『夢幻』であるならば、私はアイドルとしての大宮鈴音には成れないだろう。



 

 GNDというブランドだけあって名前の影響力は大きく、GNDのブースやショップには多くのお客様が集まっている。

 GNDはターゲット年齢層が小・中学生が主であるが、赤や黒などでクールにキメている衣装により、20代のお客様も多くいる。

 こんなに多いならば、関東地区のGND所属の方が来てくれればいいのに。その方には今日は別の仕事が有るので私が代わりに指名されたということ。つまり実際の代表では無いといったところ。

 そんな私が次の夢への道標となるブランドが見たくて、集まって来てくれた多人数のお客様を前にどう振る舞うかが試される。

 もし失敗をすればブランドの恥となりかねないところが問題である。

 私にしてみればブランドのオーナーである羽柴さんからは大きな期待を背負わされているように感じるけれど、本人はそのような気持ちはなく「リラックスして頑張って欲しい」と言っていた。

 「私はどうすればいいのよ……」

 私は目の前の自分の進むべき道をどのように進めばいいか分からなくなり、会場のお客様をぼんやりと眺めながらその場に立ち尽くしてしまう。

 「大宮さん、そろそろ握手会が始まります。準備よろしくお願いします」

 スタッフの方から声を掛けられて現実に戻る。握手会をする方を見ると、多くのお客様が並んで私のことを待ってくれている。

 立ち止まっていたって何も見つかる訳がない。GNDのアイドルはみんなに夢を与えるアイドルなんだから、夢を与えなければいけない。

 私の心の中で混ざり合う気持ちが、私を立ち止まらせてしまう。

 「鈴音さん元気が無いなぁ。どーしたんじゃ?」

 「羽柴さん……!」

 悩んで立ち止まる私に前から羽柴さんが話しかけてきた。羽柴さんはバケツとモップを持って清掃員のような格好で私の前に現れた。

 羽柴さんは今年で50くらいの歳であるけれど、話し方は何処かに居そうなお爺さんのような話し方。性格は温厚で、趣味はボランティア活動(掃除とか好きらしい)などと、決して派手な方ではない。

 私と歳は随分と離れているけれど、あの方の人間性が私に対してほっとさせるような安心感を抱かせている。

 「どうしたんじゃ?ステージの上で光り輝いている鈴音さんとは様子が違うでは無いか?」

 いいおじさんとは言えど、名の高きブランドのオーナーである。鋭い所は鋭く、他の人では気付かない細やかな事にも気づき、私もあの方から意表を突かれる事も少なくない。

 「ちょっと夢が霞んでしまいまして……」

 私はGNDのアイドルとして自分自身のことを恥じ、羽柴さんと顔を合わせて言えなかった。だから、どのような表情をしているかは私には何も分からない。

 私に対しての失望の表情なのか、怒りの表情なのか、呆れた時の表情なのか……。

 「夢なんざ、霞んでもいつか現れてくれる!」

 「えっ……⁉︎」

 予期していなかった返答に顔を上げると、羽柴さんの温かい笑顔がそこにはあった。自分の目を疑ったけれど、たしかに羽柴さんは笑顔である。

 「GNDは『次の夢へと進みだすブランド』をコンセプトにしているんだ。だから、鈴音さんにも夢へと進みだしてほしい。何でも良いんだ。大きな夢というのは姿を消しやすい。小さな夢からコツコツと掴んで行き、最後の目標である大きな目標を掴めばそれでいい。GNDのアイドルには、そうやって、夢へと進んで行ってもらいたいんじゃよ!」

 自分は、大きすぎる夢を見ていたのかもしれない。次に進むステップが大きすぎてそのステップを乗り越えることが出来なかったんだ。

 ママに見てもらうという最終目標が私の心の内に居る。その事に気づいた時、私は自らのハードルを上げて途端に空回りし始めしまった。普段の日常生活で大きなミスをしない私が、空回りして大きなミスを犯した。

 「大きな夢はゴール地点に置くものですわね……」

 心の中の言葉が口に出てしまい、そっと自分に言い聞かせるような形になる。

 今まで通りの私で良かったんだよ。一歩一歩を確実に歩んでゆき、目の前にある夢を掴んでいく。そして、私の目指す大きな夢へと進み出していく。それで良かったんだよ……。

 「ありがとうございます、羽柴さん!私、どうすれば良いかが分かりました!」

 「それはよかった……」

 その羽柴さんの温厚な笑顔を見ると、途端に進みだしていく意欲が湧いてきた。

 私は夢を1人で叶えようとしていた。でも、結局のところ、どんな夢においても誰かの助けが必要になる。その助けの手をそっと伸ばしてくれる人がいる限り、私は夢へと歩み続けることが出来る気がする。


 そしていつか、私がそんな助けの手を差し伸べられるようなアイドルになれたらいいな……。




 ②  振り向いてくれるまで




 握手会も無事に終わり、GNDのブースの中を1人でのんびりとした気持ちで歩いていた時のこと。

 握手会をしたところのすぐ近くに一冊の青いノートが落ちている事に気がついた。

 さっきまではお客様がわんさかと居たせいで、会場の床なんて殆ど見れないような状況だったけれど、昼ご飯時になって人の流れが少しだけ緩やかになった。その事もあり床に落ちているあのノートに気づくことができた。

 幸い踏まれたような形跡は無く、変な型もつく事なく落ちていたけれど、そのノート自体は使い古された感じがあり、綺麗な新品ノートとは違っていた。

 ノートの表紙についている鉛筆(シャーペン?)の鉛の跡や、開き慣れたようにやわらかいノートの状態が、使い古されている事を無言で証明してくれる。

 「落とし物かしら……?届けに行くしかなさそうね……」

 このノートを私が持っていたとしても意味は無いし、紛失してしまった本人が1番このノートを見つけたがっているだろう。

 「あ、あの……」

 落とし物センターへと向かおうとした時、服をピッピと小さい力で引っ張られた。誰なのかと思い振り返ると、そこには小学5年生くらいの女の子の姿があった。

 肩までの短めの後ろ髪、キリッとして意志の強さを感じさせる目つき、首に掛けている大きめのヘッドフォン……。小学生なのにクールにキメている彼女からは、どこかしら楓のような雰囲気を感じてしまう。楓と髪型は違うけれど、どうしてだろう……?

 楓もクールな感じを漂わせているし、まるで小さくなった楓を見ているような気分になる。

 「ノートを見ませんでしたか……?」

 私は自分の手に持っているノートを見て、落としたのはこの女の子なのだと瞬時に悟る。

 私はその子にノートを差し出して「このノートかしら?」と聞いてみる。

 このくらいの年齢ならば、妹や弟と大きくは年齢が離れていないから話しかけやすい。

 「そうです!ありがとうございます!」

 女の子は私からノートを受け取ると顔がほころぶ。その様子から察するに、彼女は相当にこのノートを愛用していたのだろう。

 「よかったね、見つかって」

 私が微笑みかけると、彼女は笑顔だったけれど、徐々に表情が暗くなり始めた。

 「ど、どうしたの……?このノートではなかったかしら……?」

 急に心配になり声を掛けるけれど、その子は黙ったまま、助けを求めているような表情で私のことを見つめている。

 「いや……。私、ちょっと相談したいことがありまして……。お時間宜しいですか?」

 時間的にはこれから1時間は予定は何も無く、私が自らの手でブースをアピールするだけの時間。ただ、この時間が終わればステージがあり、ブランドの説明があり……。と、予定が詰まっている。

 「1時間なら時間があるわ。私でよければ、あなたのお悩みを聞いて相談に乗るわ」

 


 と、このような流れで、私たちはブースの端っこの休憩所のところに2人で並んで座り話す事にした。



 ※  ※  ※ ※ ※ ※



 「実は私、5つ歳の離れた兄貴が居るんです……。小さい頃は私のことを可愛がってくれていたのに、兄貴に彼女ができてからというもの、全く私に構ってくれなくなって……」

 苦しげに泣くのを我慢する様子を見せながらもその娘は私に話してくれた。

 でも、その苦しい表情になる気持ちが私にも分かるから、どう相談に乗ってあげれば良いのかわからない。

 私もママが私のことを全く見てくれていないことで、心が苦しくなったことは片手の指で数えられる程度では収まらない。

 自身でも解決できていない問題であるのに、他人のはできるなんて事は無いのだから、私には良い答えは出す事はできないだろう。

 「もし鈴音さんが私と同じ立場に立ってしまった時、鈴音さんはどうするんですか?」

 純粋な瞳で私のことを見上げられると「私にもできません」なんて事は絶対に言えない。

 私も似たような立場に立っているんだよ……?きっとこの娘は、私が似たような立場に立たされている便りの無い人間だと気づいていないだろう。

 「私は……その人が振り向いてくれるようなことを自分で考えて全力で取り組むようにするわ。あなたは何かやってみたりしてるの?」

 私が隣の娘になるべく優しい口調で尋ねてみると、その娘は私の前にさっきのノートを出した。

 使い古したノートの表紙には、ネームペンで綺麗な楷書体で『姫路 菜月』(多分、この娘の本名)と書かれ、その上に『ロックについて』とも書かれている。

 「菜月って名前なのね。良い名前ね」

 「そ、そんな……。ありがとうございます」

 まずは親しげな感じを出さなければ打ち解けた状況も作ることが出来ずに、気まずくぎこちないままで進んでしまう。それで、この大切な相談の時間を提供してあげることができないというよろしくない状況になってしまう。

 私が達成できそうにない夢を、叶えられそうにない夢を、この子にはちゃんと叶えて欲しい気持ちが込み上げてくる。

 「それで、ロックについて……とは?」

 このノートとお兄さんとの関係性が掴めずにいる私には、このノートをどのように使って相談に乗ってあげれば良いかわからない。

 「兄貴はロックが好きなんです。学校でも部活でもロックをするくらいに、ロックが好きなんです。だから、私も兄と同じくらいロックができるようになれば振り向いてくれると思って作ってみたんです。……ただ、それでもうまくいきそうに無くて……」

 菜月ちゃんのセリフの最後の方は消えかかるくらい小さい声であった。横に座る彼女の表情から、お兄さんに構ってもらえない事に対する寂しさ・悔しさが見て伺える。

 私の場合は昔から見てもらえていなかったから、まだ心につく傷は深くはないけれど、菜月ちゃんの場合は構ってもらえなくなってしまったから、結構なダメージが入っているだろう。

 


 でも、私だって寂しいんだよ……。


 弟・妹のママやパパに甘える姿を遠くから見ることしか出来なかった。

 パパは私のことも2人と同じくらい可愛がってくれるけれど、ママだけは私のことを見てくれなかった。

 どれだけ頑張っても私の方を振り向いてくれずに、ついには私のことを一回も見てくれずに海外に旅立った……。



 「鈴音さん、顔が強張ってますよ……?何かあったんですか?」

 菜月ちゃんの言葉に気づかされ、自分が無意識に過去について考えていたことに気づく。

 スマホの内カメラで自分の顔を確かめると、そこには眉間にシワを寄せて怒るような顔の私が醜く写っていた。

 

 私もこんなに感情を表していたんだ……。


 自分の表情から今までの感情の強さが分かり、心が吹っ切れ諦めがついた。

 

 大きく深呼吸して顔の緊張を解く。さっきまでの表情が無かったかのように、笑顔を無理に作って菜月ちゃんの方を向く。

 「……私も、菜月ちゃんの気持ちがわかるわ……」

 菜月ちゃんには予想外の言葉だっただろう。ハッとした表情になって暫く硬直していた。

 状況を理解できた菜月ちゃんは私に何かを言おうとしていたけれど、私はそれから先を言わせたくはなかったのでそれを遮るように続ける。


 「どれだけ可愛がって貰えなくても、かまって貰えなくても、それを解決するための努力をしていれば振り向いてくれるはず。いろいろと試行錯誤していれば、振り向いてくれるんじゃないかなって思うの……。だから、それまで私とあなたで一緒に頑張るわよ!」


 菜月ちゃんには、私と同じようにいつまでも辛い思いはして欲しくない。しっかりとお兄さんとの仲を取り戻して、笑顔になれる日が来て欲しい。

 「鈴音さん……。わかりました!私、ロックについて更に勉強して努力をして、兄貴に構ってもらえるように頑張ります!鈴音さんも頑張ってください!」

 決意を固めた凛々しい表情が私には眩しかった。この娘はきっと、常に前へと走り出せるような人物なんだろうな。

 自分には無い、菜月ちゃんの人間性が少しだけ羨ましく感じる。

 「ありがとう。頑張ってね、菜月ちゃん」

 「はい!今日はありがとうございました!」

 菜月ちゃんに深く頭を下げられるけれど、私がやれたことなんて何かあったのだろうか……。でも、菜月ちゃんが良いならそれで結果としてはいいのかな。

 

 『あと10分で中央ステージにて、GND所属、大宮鈴音さんのライブステージが始まります』

 

 あれ?もうそんな時間になってしまったの?

 ドーム内の電気パネルにはオレンジのライトで時間は13時50分と示されている。

 中央ステージの方に目を向けると、私のステージを見に来てくれる人達であふれている。

 「鈴音さん、私も見に行って良いですか⁉︎鈴音さんのライブステージがみたいです!」

 横に立つ菜月ちゃんが純粋な目をキラキラと輝かせながら私を見つめてくる。

 


 その菜月ちゃん様子を見て私は大事なことに気がついた。

 

 ライブステージの前に居るお客様、そして菜月ちゃんなど、私のライブステージを楽しみにしてくれている人がいる。

 

 「鈴音ちゃんのライブだって!見に行くしかないよ!」

 

 「みたい!私、鈴音ちゃんのファンなんだよ!」


 「あの子さ、中学生なのにめっちゃ色っぽくて大人びていて、うち、マジファンになったんだけど!」

 

 私達の隣を通り過ぎてゆくカップルや学生さんは、そう私のことを賞賛しながら中央ステージの方へと向かっていく。

 その人達の表情はどの人も楽しみにしてくれている笑顔で、その笑顔を見るだけで私の心がなんだか嬉しくなる。



 そうか、私がアイドルとしてやっていくのは、自分だけのためじゃないんだ……。私のことを見てくれて、応援してくれる方々……ファンの皆さんのためなのかもね……。


 もう、振り向いて貰うためだけのアイドル活動じゃない。

 

 ファンの皆さんに向けてのアイドル活動なんだ!



 「菜月ちゃんには、是非見て行って欲しいわ!じゃ、いってくるわよ!」

 私はそう告げると、ファンの皆さんのためにライブステージの方へと走って向かった。



 

 ③夢に向かって進みだす



 気持ちが変わって見る、ステージ上からの景色は輝いていた。私のライブステージを見て喜んでくれる人、楽しんでくれた人達の笑顔がとても輝いて見えた。

 「皆さん、今日はありがとうございました!」

 


 私がアイドルである限りは、私のことを応援してくれ、楽しみにしてくれるファンの方々のために頑張ろう。

 そのように努力してくれれば、きっとママは振り向いてくれるはず!

 ファンの方々のために頑張る事は、あの夢を叶える前の小さな夢なのかもしれないけれど、心の底から素晴らしいことだなと思えた。


 羽柴さんの言っていた、『小さな夢からコツコツと掴んで行き、最後の目標である大きな目標を掴めばそれでいい。』が、私の脳内でもう1度繰り返される。


 「私、次の夢へと歩みだすことができたのね……」


 大事なことを気づかしてくれた、ファンの方々と菜月ちゃんに感謝の気持ちを込めてもう1度「ありがとうございました!」と、声を張って言う。



遅れてすみません

内容のおかしなところ誤字脱字等ありましたら報告よろしくお願いします


Twitterのキスよりルミナスもよろしく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ