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ギャルズメロディー2期   作者: キスよりルミナス
一章  鈴音・香織の成長編
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2話 償いの気持ち(香織)

  2話  償いの気持ち (香織)



 私のスマホにまた通知が来た。誰から来たかと思いスマホを開く。楓からのLINEが1通来ていた。LINEの画面を開いてトークを見ると、未読メッセージが多くたまっている。楓、保真麗、鈴音、柚葉……と私に連絡が来ている。私が学校を無断欠席しているため、誰も私が学校を休んでいる理由を知らない。だから心配して私に連絡をくれているのかもしれないけれど、ここで私が連絡をしては私は学校に戻りたくて仕方なくなり、琴音を1人家に置いて学校に帰ってしまうかもしれない。

 自分で犯した誤ちは自分自身で償う。そのためにはこの行為も仕方のないことなのだ。


 お母さんの様子が良くなったから顔を合わせてあげて欲しいと、病院の方からお母さんのスマホで私に連絡があった。そのため、妹の琴音を連れてお母さんの入院している部屋に様子を見に来た。

 病院ならでは消毒液のような匂いは、別に嫌いではない。学校の保健室とかでも似たような匂いは感じるけれど、その時に嗅ぐ匂いは清潔な香りで好きである。それなのに今、病院の匂いをあまり良く受け取れない。それはきっと今の自分の気持ちから来ているんだろうな。

 入院している部屋は4人部屋で、お母さんは入って右側の窓側のベッドに居る。妹はお母さんの姿を見ると、安心したのか笑顔になってお母さんの元へと行く。私は部屋のドア付近で立ち止まり、琴音とお母さんの様子を遠くから見ることにした。

 「お母さん、元気にしてた?」

 「大丈夫よ。心配しないで」

 お母さんは琴音の頭を優しく撫でる。以前よりは顔色も良くなった気がするけれどまだ痩せ細ったままである。お母さんは栄養失調により1ヶ月間の入院をすることになってしまった。つまり、私はこれから1ヶ月間は学校に行けないということだ。学校に行きたくて仕方ないけれど、琴音の世話をしなければならないから、3学期が始まっても学校に行かず家事をしている。今まで家事なんてしたことが無かったのでスマホで仕方を学んで家事をしている。本音を言うと、琴音のために学校を休まなければいけない意味がわからない。けれど、私が呼び起こした結末であるから文句なんて言えない。

 久しぶりに見る母親の姿に琴音は嬉しそうである。その様子を見てお母さんは笑顔になる。その微笑ましい様子が私の心を痛めさせる。

 今日、私がここに来たのは様子を見に来た以外に理由がある。今まで私が知らず知らずのうちに犯してきた誤ちを謝りたかった。自分のせいで仲の良かった親子の日常を壊してしまった。言えるかどうかは別にして、謝るチャンスがあるならば謝りたかった。

 「香織?わざわざ来てくれたの?」

 私がいることに気づいたお母さんは、か細い声で私に声をかけてきた。

 「うん……。琴音のこと世話するのは、今は私だけだし……」

 「こっちにおいで、香織」

 微笑みかけてくれたことで少し気が軽くなったので、私もお母さんのベッドまでいった。私が琴音の隣まで来たのを確認すると、お母さんは私の左手をそっと包み込んでくれた。

 「ごめんね、香織……。今まであなたの事を騙してきていて……」



 ※ ※ ※ ※ ※



 香織が家に引き取られてから数週間が経ったある日、学校から美和(香織の母親)に電話が入ってきた。それは、香織が勉強の面で1人だけ遅れているという内容だった。香織は、小学3年生の頃に交通事故に遭い頭部に大きな怪我を覆い、記憶を喪失するまでに至った。そのため、殆どの知識も抜けてしまっていたため、勉強面で大きな問題となってしまった。

 それでも、女手1つで琴音と香織を育てる美和は勉強を教える暇などなかった。香織は勉強することが嫌になり、宿題をしなくなり、最終的には学校を拒む程にまでなってしまった。

 その様子を見た美和は香織のために、隣町に引っ越して別の学校へ通わせようとした。それでも香織は学校という存在自体を頑なに拒んだ。

 美和は香織を無理に学校に連れて行こうとも考えたけれど、香織はそれを嫌がり必死に抵抗していた。

 「香織、学校行くわよ?勉強遅れちゃうでしょ?」

 「やー!おべんきょ、むり!いえがいい」

 そんな感じで香織は尽く拒んだ。そんな日々を繰り返していたある日のこと。

 その日も美和は香織を無理やり学校へ連れて行こうとしていた。アパートから歩いて3分程の所で香織が美和から逃げ出した。

 「待ちなさい、香織」

 「やだ!学校なんて行きたくない!」

 全力で走って逃げる香織は周りがよく見えておらず、角に差し掛かった時、大人の人にぶつかってしまった。当然のことながら、子供である香織の方がバタリと倒れた。

 その様子を見た美和は、その人に謝ろうと走って2人のところまで向かった。

 ぶつかられた方の大人は、その場にしゃがんで香織に声をかけていた。

 ようやくそこについた美和は、その大人に深々と頭を下げて謝った。その人からどんなことを言われることも覚悟して謝った。

 「私はいいですけど……。この子のお母さんですか?」

 そこにいたのは20代くらいの女の人だった。そこらでは見ることができないような美人だった。美しさに一瞬だけ美和は見惚れたけれど、すぐにもう一度その人に謝った。

 「はい、本当にうちの娘がごめんなさい」

 「私はいいですよ。それより、お母さん?子供がこんなにも怖がってるんですけど……。私の気のせいでしょうか?」

 その女の人は自身の後ろに隠れる香織を見ながら美和に言った。自分のことを怖がっている香織の姿がそこにはあり、美和はその香織の様子を見て気がついた。自分が香織のためにとしていた行動が、香織にとっては恐怖でしかなかったことに。

 その時、自分はもう香織を学校に連れて行かないように決意した。本当にこれでいいか分からないけれど、香織のためなら致し方ないことだと思った。

 「ごめんね、香織……。学校に行こうなんて言わないから。さ、一緒に仕事に行こ?」

 「やだ、私、このお姉さんと一緒に居たい」

 美和は、いつものことながら香織を自分の職場に連れて行こうとしたが、その女の人のことが気に入ったのか、なかなかくっついて離れようとしなかった。女の人は香織がずっとくっついていることに照れた様子をしていたが、美和の文脈から事情を察したのか、香織の頭にポンと軽く手を「お母さんを信用しなさい」と優しく言った。しかし、香織は「でも、お姉さんと一緒に居たい」と女の人に必死に訴えかける。

 女の人もその様子を見て暫く考えてから美和にあることを提案した。

 「私をこの子と一緒にあなたの職場に連れてってもらえませんか?交通費とか私が全て払いますから!」

 「い、いいですけど……。分かりました。ここから歩いて5分程度のところに職場があるのでついてきてください」

 美和は香織のためと思い、その女の人の無茶振りに答え、自分の職場に3人で向かった。


 

 美和の職場はパン屋であり、住宅街の中にある昔からの老舗である。

 「遅れてすみませんー」

 2人を連れて入ると、客がもう何人か来店していた。その店でバイトをしている女子大生が、「美和さん、今日も香織ちゃんいますか?」と、美和の方を見る。そのバイトの女子大生は香織の事をとても気に入っていて、休憩中は香織の話し相手をしている。だから、香織が来ると仕事中であっても毎回喜び、香織に真っ先に話しかけに来る。

 「うん、香織は今日もいるわよ」

 美和は、毎回香織のことを気にかけてくれる女子大生に好印象を持っているので、その日も嬉しそうに笑顔で答えた。しかし、その日は女子大生は、香織よりも美和が連れてきたもう1人の方をずっと見ていた。女子大生は「え?嘘……?」と、何回も目を擦って女の人を見ていた。

 「美和さん、その人、月本真里さんですよね……?」

 「え?この方、有名な方なの?」

 興奮気味に答える女子大生の様子から、有名人なのかと考えた。美和は全く分からずに、女の人を見てみるが、女の人は「バレちゃったか……」と言い美和の方を向いて話し始めた。

 「私、元アイドルの月本真里です。今は女優とかのお仕事をしているのですが、今日はオフなのでお休み中なんです。それにしても、やっぱ、美和さんには気づかれてなかったんですね」

 美和もそれには驚いたけれど、香織はイマイチ分かっていない様子で女の人を見上げていた。



 美和の連れてきた女の人が、月本真里であるという情報はあっという間に店中に広まった。店主の頼み込みで、その日だけ月本は香織と共に看板娘となった。

 「香織ちゃんだっけ?いっつもこんな感じでお手伝いしてるの?」

 店の前で客を呼びこんでいる間、月本は香織と話していた。月本が、ここに来る前の香織の様子が少し気になり、詳しく話を聞こうと思ったからだ。

 「私はいつもはパンをこねこねしたりしてるの」

 香織は普段、店長から使わない余ったパンをもらい、それをこねて遊んでいる。きっかけは、香織が美和のパンを作る様子を見て「私もしたい」と言ったのがきっかけだった。

 「そうなんだ。ところで、どうして学校にいきたくないの?」

 月本は、あまりに単刀直入に聞きすぎたかと思ったけれど、香織は何も気にする様子無く月本に答える。

 「私、勉強がわからないの」

 香織のその言葉に、自身の中学生の時のことを思い出した月本は香織に同感することができた。月本は、アイドルとして駆け抜けた中学生時代のことをしみじみと思い出した。勉強が出来なくなると、学校自体もあまり楽しめなくなってくる。そのことを理解している月本だからこそ、香織に同感できた。

 「私にもそう思うことがあったわ。だから気にしなくていいのよ?何かあれば、お母さんの許可を取って私の家に遊びにきていいわ」


 そこから香織と月本の関係が始まっていった。香織はそれと同時に小学校には行かなくなってしまったけれども……。



 ※ ※ ※ ※ ※


 結局、自分が全て悪かったんだ。琴音だけお母さんから何も怒られていないように見えていたのは、私の出来が悪かっただけだったんだ。そんな簡単なことにも気づかず、琴音やお母さんに当たっていた私がとても恥ずかしい。そんな身勝手なことをしたうえで、自分だけ私立中学に通わせてもらって、2人をこんな目に合わせてしまった。

 これほどの誤ちを犯して許されるかは分からない。それでも、自分の意思は伝えなくてはならない。

 優しく私のことを見つめてくれるお母さんに深く頭を下げてもう一度謝る。

 「ごめんね、お母さん、琴音。私が間違っていたよ、自分視点でしか見ていなくて勝手にお母さん達のことを嫌っていた。本当にごめんなさい。それに、私が家の事情なんて考えずに私立中学に行ったせいで、お母さんがこんな目になって琴音にまで迷惑をかけた……。私、桜咲学園辞めるよ」

 「その必要は無いわ」

 お母さんと話していて気づかなかったけれど、今入ってきたのか月本さんが私達3人のところへと近づいてきていた。月本さんは今日はオフなのか地味な私服を来て登場した。

 「香織の学費は私が払うから問題ないわ」

 月本さんは近くまで来ると周りに聞こえないようにそっと話した。

 「え?月本さんが……?」

 「うん、だから心配しないで学校に行ってちょうだい」

 私は月本さんの言葉が信じられなかった。私の学費を月本さんが払う……?家族でもないのに、そんなことを月本さんにさせるのは申し訳なかった。

 「そ、そんな……。なら、私は、尚更学校を辞めなければいけないじゃないですか。月本さんに迷惑がかかり過ぎます、本当に申し訳ない気持ちで……」

 月本さんに対してどう言えばいいのかうまく頭に浮かんでこない。でも、取り敢えず今までそうであったのならば少しでも早く学校を辞めなければ、月本さんに申し訳ない。

 月本さんは私の手をそっと握ってから「大丈夫よ」と囁いてくれる。

 「香織が小学生の頃、全く学校行きたがらなかったじゃん?それなのに、私が桜咲学園のことを紹介したら目を輝かせてくれたんだ。だから私は、香織が学校に行き青春もして勉強もして、そして恋愛もしてくれればそれで良いんだよ?もう、私と同じような人生を香織には歩ませたくないから」

 その言葉に私はどこか聞き覚えがあった。決してデジャブや既視感のようなものではなく必ず聞き覚えがあった。

 その言葉を前に聞いた時も私は感じたことがあった。私のことを考えてくれる人がいるということを感じた。

 「ありがとうございます。……こんな私でも、他人の邪魔にばかりなっている私でも、私のことを考えてくれる人がいてくれることがとても嬉しいです。そして……」

 私が話そうとした時、小さい音でスマホに入れている私のスマホに一件の通知があった。見なくても何の通知かは分かっている。

 「私を待ってくれている人がいる!だから、私は今、ものすごく感謝をしています」

 感謝の気持ちを全力で伝えたかった私は、月本さんに微笑みかけた。月本さんは笑顔になり「香織、成長したね」と優しく呟いた。

 「それにしても、香織。3学期始まってるのに学校に戻らなくて大丈夫なの?」

 振り返るとお母さんは心配そうな顔つきで私のことを見ている。思い出したけれど、学校はもう3学期になって数日が経過していた。学校に行きたい気持ちは山々だけれど、私はしなければいけないことがある。

 「私にはお母さんが帰ってくるまで琴音の世話をしなければならないから、学校には暫く戻れないや……。自分の誤ちが引き起こしてしまったことだし、責任を持って罪を償うよ」

 琴音を家に1人にするわけにはいかない。琴音だってお母さんと同じで、私のことを上林家に迎え入れてくれた優しい人である。引き取られた身としてはそのことを頭に入れて、そして上林家の長女として、私は自分の犯した罪を償う義務がある。

 「そ、そのことなんだけどね……。私、お母さんが退院するまで友達の家に泊めさせてもらうから、学校に行っていいよ。ちゃんと友達のお母さんには許可を貰ってるし、いつでもおいでって言われてるから」

 私の服を少し掴んで琴音は気まずそうにしながらも言った。琴音としばらく目を合わせていたけれど、琴音が顔を赤くして「そ、それに……」と続けた。

 「お姉ちゃんにはアイドルで居てほしい。Cosmicrownのリーダー、頑張って欲しい。私、お姉ちゃんがアイドルしてるの好き……だから……」

 「琴音……」

 琴音からの予測していなかった言葉が嬉しかった。今まで、私は憎んでしかいなかったけれど今は違う。

 こんな私でも、今では形上では義理の姉になるけれど、気持ち的には本当の姉になることが出来たのかな……?

 それに、今、久しぶりに私の口から琴音に対して名前を言った気がした。今までの私はそんなこと言えなかった。そこで自分も意外と頑固なんだって初めて気付かされたけど。

 「そうと決まれば、明日、学校に連れて行ってあげるわ。香織、明日は琴音ちゃんが学校行ってるあいだに連れて行ってあげるわ」

 月本さんはそう言って車のキーをチラッと見せてきた。

 窓の外はすっかり暗くなっていたけれど、この場にいるだけで明るい気持ちになっている気がした。



 


 次の日。やっとのことで私は学校に戻ることにした。学校の寮までは月本さんが送ってくれた。

 「香織、行ってらっしゃい。あなたを待ってくれる皆が居るわ」

 「ありがとうございます、月本さん。じゃ、行ってきます」

 私は荷物を持って寮へと歩いて行った。上を見上げると雲一つ無い、素晴らしい青空が広がっている。曇りが1つもない私の心の中を表しているようであった。

 

 待っていてくれるアイドル部の皆と柚葉、私のことを密かに応援してくれる琴音、私の人生をしっかりと考えてくれている月本さん。そして、私のことを家に引き取ってくれたお母さん。


 色々な人に支えられることに感謝をして私はまた歩き出した。

 


 

 

 

 



 

 

 


やっと香織登場させました。来週分からアイドル系の内容が入ってくるので、そっからもお楽しみに


誤字脱字などがありましたら報告よろしくお願いします。感想とかもできれば貰いたいです。

Twitterのキスよりルミナスもよろしく

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