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ギャルズメロディー2期   作者: キスよりルミナス
一章  鈴音・香織の成長編
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1話  ありのままの自分(鈴音)

 

1話    ありのままの自分 (鈴音)



 私は友達と一緒に何かのことをするのが夢だった。モテたいとか人の上に立ちたいとかよりも断然叶えたかった夢だ。私ほどの人であれば、友達を作るなど容易いものであり、クラスの中心になるなど簡単なものだった。

 ただ、友達と一緒に何かをすることは私には難しかった。それは、私の能力不足から来ているものではなく、私の家の事情であった。両親が共働き(ママは海外に単身赴任、パパは桜咲学園の学園長)のせいで小学生の時は放課後、妹と弟の世話をしなければならなかった。そして中学生になってからは、パパの仕事を手伝って少しでも早く2人を塾に迎えに行く、という日々であった。

 そのため、私には放課後に自由な時間が無かった。教室で駄弁ったり、帰り道に通学生の友達と遊んで帰ったり、部活を思いっきりしたり、そんなこと願っても実現する確率は極めて低いと理解していた。それでも、この夢が叶う確率が微かにあるとするのならば私はそれに賭けようと思っていた。


 そんな私の夢をアイドル部が叶えてくれた。


 香織が、保真麗が、楓が、そして桜田先輩、松崎先輩が、アイドル部に私を温かく迎え入れてくれた。そしてパパも、私が部活することを快く許可してくれた。


 いろんな人の支えで今の私がいる。


 そのことに常に感謝をして、新しい年も友達と共に部活をやっていきたいと思う。






 新学期になってもクラスメイトに変わった様子も無く、新年になったところで何も変わらないなと感じる。楓、柚葉は様子が変わっていなかったけれど、保真麗は少し顔が丸くなったような……?

 新年になってから2日ほどCosmicrownの練習があったのに、リーダーである香織が来なかった。私達が連絡を取ろうとしても全く連絡が取れなくて、どうしているかわからない。香織と同じクラスの保真麗から聞いたところによると、香織は今日も学校に来ていないんだとか……。

 そのため香織の状況を知っている人は誰も居ない。病気になったとか、鬱になっとか、いろいろな噂が立っているようだが、私はどの噂もイマイチ信用できない。あの香織が病気になったり鬱になったりするなんて非常に考えづらいからだ。

 理由はどうであれ、香織がどのような状況か分からない内は、どのような考えでも憶測であって決して事実では無いので他人と話し合ったって仕方ない。私は香織のことを、1人でゆっくり考えることに決めた。

 「あのさ、大宮……」

 「ど、どーしたの?」

 私がボーッとしていると、隣の席の男子から話しかけられた。考えごと中に不意に男子から話しかけられて驚いてしまった。別に男女は関係ないけれども。

 「今日の放課後、時間ある?」

 隣の席の男子は顔を赤くして、周りに聞こえないように、少し小声で恥ずかしそうに私に言った。この話し方からすると、またあのパターンなのかな……?私は結果を予測してその男子に答える。

 「……あるわよ」

 「じゃ、教室で待っていてくれる?」

 「うん、放課後に私、自分の席で待ってるね」

 これからある事を考えると、無理にでも笑顔を作って知らないフリをしていないといけない。そんなことを考えてしまう自分のことが嫌になる。今回もまた、自分の心を傷つけるようになるだろう……。



 その日の放課後、私はその男子に告白をされた。



 告白した男子に答えを言うと、私は荷物を持って急いでアイドル部の部室へと向かった。どうしても今は、女子だけの空間であるアイドル部に駆け込みたかった。本当に今だけかと言われると、そんな訳では無いのだけれど。

 部室のドアを開けて中に入ると、私と香織以外は練習を始めていた。どうせすぐに終わる告白だと思って、部活には間に合うだろうと思っていたけれど、うまくいかずに時間がかかってしまった。

 「遅れてごめんなさい」

 「いいよー。さ、鈴音ちゃんも一緒に練習しよっか」

 松崎先輩が優しく私に声をかけてくれる。やっぱりアイドル部に居る方が落ち着くな、と感じつつ私は体操服に着替える。今が1月なうえに部室に暖房設備が設置されていないので、体操服に着替えるだけで体が寒さに震え出してしまう。

 着替え終わり、制服をバッグの中に入れている私のところに楓と保真麗がやってきた。

 「今日、来るの遅かったけれど何かあったの?」

 「えっと……何でも無いわ。特に……普通に遅れてしまっただけよ……」

 いくら友達であろうとも言えないものがある気がする。少なくとも、今の私には、教室で告白されたことを楓と保真麗には言える気がしない。告白した側にだってある程度のプライドはあるだろうし、告白したことを言いフラされてしまってはプライドがボロボロだろう。だから、告白後における最低限の暗黙の了解は守らなければいけなだろう。

 ただ、私を見つめてくる2人の眼差しに耐えきれずに、私は目を逸らして「告白された……」と小さく呟いた。

 その私の言葉を聞いた2人に、「鈴音はほんとモテるよね」と感心された(?)。私だって好きで男子から告白されてる訳では無いので、そんなことで感心されても嬉しくない。

 失礼なことを言うかもしれないけれど、男子から告白されても微塵も嬉しく無いのだ。私が、美人で話し上手で成績が良くて……と、男子達の理想像であることは自覚している。それでも、男子から告白されても嬉しく無い。

 小学校の時に計8回、中1だけで計4回目。初めて告白された時は嬉しかったけれど、気がつけば、告白されることを当たり前だと思って告白してくる男子達が面倒にすら思えてくる。

 「いいよねーモテる女子って。私もたくさんのイケメンから告白されたい!」

 保真麗がキラキラとした尊敬の眼差しで私のことを見上げている。ただ、こんなのが演技だなんて私には一発でわかる。

 ここ最近の保真麗は、住川君を休み時間に見張る事が多いような気がする。見張っているのは他の女子と仲良くしていないかをチェックするためらしい。それ程までに住川君の事を一途に考えている保真麗が、まさか別の男子に告白されたいなんて考えているであろうか。

 そんな保真麗もなかなかに男子達からはモテてているけれど、本人はそんな自覚全くないらしい。

 だからこそ、嘘でもそんな発言を易々とするものならば、男子からの告白は耐えないだろう。

 もしその事を分かっていて言っているのならばとても恐ろしい話であるけれど……。

 「モテても楽しく無いわよ?」

 私くらいのレベルの人間しか経験したことないかもしれないけれど、多くの人から告白されても、告白してくれる人のことを好きでなければ何も楽しくないのだ。どの人も付き合いたいとは思わないし、友達くらいの関係で居た方がちょうど良いことだってある。

 「そう言えるのは鈴音くらいだよね……。アイドルは恋愛禁止って言うけれど、中学生の私達にそんなことは無理なんじゃないかな」

 楓が苦笑いをして皮肉を込めてるかのように言った。皮肉を言われても仕方ないような発言をしてしまった、と少しは感じたけれど、別に背伸びをして言っているわけでは無いし自慢をしたいがために言っているわけでも無いので許してもらいたいところ。

 「鈴音ちゃんはー、中学生なのに恋愛しないつもり?」

 保真麗の突然の言葉に私は不意をつかれたような気持ちになる。言われてみれば、香織と保真麗は住川君、楓は笹岡君、それぞれに好きな相手が居る。けれど、私だけはそんな人は居ない。男子にモテている私は、彼氏を作るチャンスなんてザラにあるのに、私自身が恋愛をしていないから彼氏を作れない。

 「私は恋愛なんてしなくてもいいわ。それに、多分そんな気を起こすことなんて無いから」

 自分で言っておきながらだけど、本当に寂しい人生になりそうで心配になる。周りが次々と青春をする中、1人で淡々と中学・高校生活を過ごしていく自分の姿が容易に想像できてしまう。それでも、私は付き合える最低限の人と付き合うことよりも、自分にとって理想の人を探し求め続ける道を選ぶんだろうな。

 「1年生の3人、練習するわよ。大会まであと2ヶ月よ?」

 「す、すみません」

 私達が話していたところに松崎先輩と桜田先輩がやってきた。さすがに話し過ぎたかと反省しつつ、その場で身体をほぐすためストレッチを始める。

 「鈴音、身体柔らかくなったじゃん」

 「楓のおかげよ、感謝してるわ」

 楓は、私のことを自分のことのように喜んでくれる。アイドル部に入ったばかりの頃から、楓には色々と面倒を見てもらっていたので、楓から褒められたり喜ばれるたりすると、より一層嬉しく感じる。

 「そういえば、香織ちゃんはお休みなの?」

 香織が何日も休んでいることが気になったのか、桜田先輩が保真麗に聞いた。保真麗の方を見ていると、保真麗からアイコンタクトで助けを求められた。香織の休んでいる理由なんて私達も知らないので、ここで適当なことを言うのは好ましくないであろう。

 「実は、私達も香織と連絡すらつかなくて……」

 困っている保真麗の代わりに私が答えた。結局のところ、嘘をついてもどうにもならないのだから事実だけを伝えることにした。桜田先輩と松崎先輩は、私の話を聞いて不安げな顔で互いに見つめあった。松崎先輩は窓の外を眺めながら「香織ちゃん早く戻って来て欲しいな……」と寂しげな表情で小さく呟いた。




 大会に向けてのキツイ練習メニューを終えて、今日の部活も終わった。

 練習メニューはキツくて、部活が終わり家に帰るとすぐに寝てしまうし、授業中も眠くなることがたまにある。それでも、私は長年の自分の夢を実現させることができたから、部活には全力で取り組んでいる。友達と一緒に部活をすることで、自分だけ寂しい思いをすることは無くなったと思っていた。

 しかし、香織の居ない部活は何処か寂しいものであると、ここ数日で身に染みて感じた。きっと誰かが1人が居なくても同じようにそう感じるのだろうけれど、香織の場合は特にである。毎日の部活でどんなに練習メニューがキツくても、全く疲れを感じずにできるのは、香織が部活内の雰囲気を明るくしてくれていたからであろう。

 何気ない日常でも、いざ無くなると急に恋しくなる。いつも居てくれたところに居ないと、寂しく感じる。

 ただ1人だけが居なくなるだけで、私をこんな気持ちにさせるのなら、そこは私にとって本当に好きで大切な場所なんだろうな……。

 「香織、早く帰って来ないかしら……」

 更衣室へ向かう廊下の窓から、夕焼けに包まれてゆく黄昏時の街の景色を眺めながら1人で呟く。

 願っても叶うかなんて分からない。それでも、ほんの少しの確率でも叶うのならば私はその確率に賭けたい。この私の信念が香織を早く戻って来させることができたらいいのだが……。

 そんなことを思いながら歩いていると気がつけば更衣室に着いていた。中には誰か居るのか電気が付いていた。

 多分入っているのは楓か保真麗だろうな。と思いつつ、更衣室の重いドアを開けて中に入った。

 「あぁ……。今日も私は可愛いな……」

 中に入ると、鏡に手を置いて自分に見惚れている保真麗の姿が目に入ってきた。あまりに自分に見惚れているのか知らないけれど、私が入ってきたことに気づいていないようだ。

 「保真麗、何やってんの?」

 「す、鈴音ちゃん⁉︎え、いっ、今の見ていた⁉︎あぁ……恥ずかしいよぉ……」

 紅く染まった顔を両手で隠して鏡の前にしゃがみ込む保真麗の姿を見ると、なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。自身に見惚れていた場面を私に見られたことが恥ずかしかったんだろうな。私も、そんな場面を他人に見られてしまっては完璧な自分を保てない気がする。

 しゃがみ込んでいる保真麗は顔を覆った両手の指と指の間から私の様子を伺っている。

 「鈴音ちゃん……。このこと誰にも言わないでね?」

 「言わないわ。安心して、約束は守るから」

 私は心配している保真麗の隣に並んで座った。部活に入る前の私だと、きっとこんな行為はしなかっただろう。誰もが踏み歩いた床に座り込むなど考えられなかった。

 学園長の娘として恥じることのないよう、常に完璧な自分であることを目標としていた私は、見た目・行為などを徹底していた。そのため、床に座り込んだりなど絶対にあり得なかった。

 そんな私がこうして居られるのは、保真麗が(アイドル部のみんなでも)心を許せているからであろう。心を許せるからこそ演じずに、ありのままの自分を曝け出せるのだろう。

 「気にしないでいいのよ。自分を愛することなんて何もおかしくないわ」

 私は保真麗の頭をそっと撫でて優しく声を掛ける。保真麗は私の発言が意外に思えたのか両手で顔を隠すのをやめて、驚いた様子で私のことを見ている。

 「……鈴音ちゃん?」

 「え、わ、私、何かまずいこと言っちゃった?」

 保真麗の突然の反応に、自分がまずいことを言ってしまったか急に不安になってしまう。保真麗はゆっくりと首を横に振って「違うよ」と言う。その保真麗の一言に安心させられた。私が安心していると、保真麗は続けて話し出した。

 「私ね、鈴音ちゃんのことを未だによく分かってないんだ。鈴音ちゃんがどんな性格でどんな感情を抱いてるのか。だからね、鈴音ちゃんにさっきのとこ見られた時、とても不安になってしまったの。鈴音ちゃんから引かれてしまったのかなって。だけど、鈴音ちゃんは私のことをおかしくないと言ってくれた。それが嬉しかったんだ」

 時々、チラチラと私と視線を合わせて恥ずかしそうにしながらも保真麗は話してくれた。保真麗の中での私って今まで何だったんだろうな……。と、考えると急に心配になってきた。勝手にこっちが、保真麗の事を心を許せる友達として見ていただけで、保真麗の方は友達だと見ていなかった可能性まであるというわけよね?なんと恐ろしい話。

 「鈴音ちゃんは、自分のこと好きになったこととかある?」

 「へっ?」

 突然の質問に少しだけ反応が遅れてしまう。何を話されるかと思えば、自分のこと好きになったことの有無についてだ。こんな話、普通の人にならしないであろう。だが、この話を保真麗が私にしてくれたということは、もしかしたら保真麗は私に心を許してくれるようになったのかもしれない。もしそうであるのならば本当に嬉しい限りである。

 取り敢えず本題に戻り保真麗の質問についてじっくりと考えてみる。私自身、自分のことを美人だなとかモテるなとか思うことはあったにせよ、恋愛感情であれ、仮にその感情以外でも、自分のことを好きになったことはない。

 「私は無いわね……」

 私の答えに、保真麗は視線を下に向け「そうよね……」と寂しげに小さく呟いた。私のあの言葉に、きっと保真麗は自分と同じような境遇にいる人に会えたと感じたのかもしれない。それで、私に心を許してくれたのかもしれない。だが、実際の私は保真麗の考えていたような人物では無かったはずだ。そのため保真麗は、期待した故に、結局は自分だけしかそんな境遇に立たされていないんだと寂しい気持ちになったのだろう。誰かいると思い実際は誰もいなかったとなると、尚更寂しい気持ちになるだろう。

 保真麗は話しづらいことも私に話すくらいまでに心を許してくれた。それならば、私の今から保真麗に取るべき行動というのはただ1つ。私自身を曝け出し保真麗に心を許していることを示すだけではないだろうか。

 「保真麗、私は自分のこと好きになったことはない。でも、自分のことを美人だなとかモテてるなとか、自分自身に、大宮鈴音であることに特別な誇りを持っているわ。周りから見て完璧な自分であるために、ありのままの自分ことをずっと隠していたの。でも、私は保真麗だから言えるの。保真麗に心の許せる1人として認めて欲しくて、それに保真麗のことを心の許せる人だと思ってるから言ってるの。だから保真麗、そんな寂しそうな顔をしないで。私が保真麗の事を支えてあげるから」

 私は、今、自分の中にある保真麗に対する感情の全てを保真麗にぶつけた。保真麗に私のことを、心の許せる人物の1人として認めてもらいたい。保真麗が1人きりだと思わないようにしたい。友達として保真麗の心の支えになれたならそれでいいと思う。

 私の言葉を聞いた保真麗は安心した様子で私に抱きついてきた。

 「ありがとう、鈴音ちゃん。私、鈴音ちゃんにそう言って貰えて嬉しい……。私も鈴音ちゃんのことを支えられるように頑張るから、互いに支えあっていこうね。」

 私は保真麗のことをそっと抱いた。

 きっと過去の私ならこんな行動できていないだろう。私が少しでも心を開けるようになったアイドル部に、私は心の中でそっとお礼を言った。

 

 

 


誤字脱字がありましたら報告よろしくお願いします

感想とかも書いて欲しいです


Twitterのキスよりルミナスもよろしく

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― 新着の感想 ―
[良い点] 2期から読み始めました! アイドル関係のアニメなどはたくさんあると思うけど、小説というのは新鮮です [気になる点] 大したことじゃないですが、 鈴音は両親がお金持ちなら家政婦を雇えばいい…
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