No.35 決着
「グリフォン、あいつらを狙う。戻れ、顕現せよ」
上空から私達目掛けてロケットランチャーが発射される。
「皆さん逃げて!!」
全員で攻撃を避ける為、四方に散らばる。
ペアであるアポリナルさんの手を引っ張り共に隠れる。
「今バッチを持ってるのは私とヨハンナさんとマリアちゃんです。それをヴァンダさんが誰を狙うかで今後の戦況が変わってきます」
「今、それぞれの位置はどうなっとるん?」
その言葉にワットさんから送ってもらった位置情報を携帯で確認する。
マリアちゃんは変わらず寮に。
ヨハンナさんは私達とは反対方向を目指している。
橋の方向という事もあり違う島に移る算段なのかもしれない。
「アポリナルさん、私いい案を思い詰んだんですけど聞いてもらえますか?」
「何?いい案って?俺に出来る事なら協力するで」
そのあとその案について話す事にした。
「え!?あかん、そんなんリスクありすぎやカンナちゃん考え直した方がええ。確かに俺が持っとるから実行出来へん事はないけど。ヴァンダさんにも皆んなにも混乱をきたすで」
「それが狙いなんです。赤のローブを着ている人はこの場にヴァンダさんとヨハンナさんしかいません。でも私が着ればこの場にいる赤のローブをきた女性は3人になります。しかもヴァンダさんはフードを被っていて顔がわかりにくい。ヨハンナさんにも同じ指示を出します。私を特定されて捕まえられたらゲームセットなのは変わりませんから」
「成る程な、こうすればお互いの条件は一緒や。気づいてのは本人だけ。ヴァンダさん視点、カンナちゃんがフードを被っていたらヨハンナちゃんと見間違えるかもしれん。…ほならやってみよか?ただ単独行動したらあかんで、それだけで見間違えられるんやから」
「勿論です。アポリナルさんありがとうございます」
そのあと、アポリナルさんからローブを借りて2人で身を隠していた時だった。
サラマンダー様が慌てた様子でこちらへと向かってきた。
「サラマンダー様、ちょちょ隠れてや。ヴァンダさんに見つかってしまうで」
『しかし、緊急事態なのだ。ヴァンダが寮の方に向かっている。余は身体が大きいから中に入れんのだ。心配でならん』
「確かに寮の中に仲間がいますけど…」
その言葉を遮るように寮から爆発音が聞こえてきた。
その音に思わず私はそちらへと駆け寄ってしまった。
「カンナちゃんアカンて!!任せたらええねん!!」
その言葉を無視して寮に向かうと私の部屋の窓ガラスが割られドタドタと足音がしている。
「八咫烏さん、顕現して!!」
1階の窓ガラスを割り、中に入るとヴァンダさんがマリアちゃんに詰め寄ろうとしている。
「何故ここにバッチの反応がある?カンナはどこだ教えろ。部屋にもいなかった。彼女はどこだ」
「ち、近づかないで!!教える訳ないじゃない。ヒュドラ顕現して!!毒を打ち込むわよ!!」
マリアちゃんは威嚇する様に長細い毒針を持っている。
両手に挟むように8本持っており今にも投げそうだ。
緊張状態でその場を見守る事しか出来なかった。
というより身体が上手く動かない。
逃げたくても逃げられないのだ。
ヴァンダさんはマリアちゃんの言葉に対しゆっくりと私が隠れている方へ近づいてくる。
毒針に警戒しているのかもしれない。
無数の首をもつヒュドラの毒だ。
普通の蛇とまた違う効果があるのかもしれない。
マリアちゃんと連携して挟み打ちをするなら今しかない。
小さな声で顕現し、剣を出す。
腹部を狙い拳と共に攻撃するとヴァンダさんがよろけた。
「やるじゃん!もう終わりよ!!」
4本の毒針がヴァンダさんの腕に刺さるがすぐに顔を顰めながら全部の針を抜いてしまった。
「こんな物が私に効くとでも?」
「効くわよ即効性だもん。もう麻痺症状が出てるんじゃない?」
その言葉に手を抑え倒れ込むヴァンダさんに私は驚愕した。
「少量だから軽度だけどもろにくらったら危なかったわね。カンナさん、彼女をトワコ先生の元連れて行くわ。手伝って」
「は、はい!!」
ヴァンダさんを動かそうとすると自分で立ち上がり身体を引きずりながら外に出ようとする。
「グリフォン行くぞ!!私はまだ戦える。最後の守護者として務めを果たしてみせる」
「ヴァンダさんもうやめましょう。その体では無理です!!トワコ先生の薬を飲まないと命に関わります!!」
「…ねぇ。放っておいたら死ぬよ。それともなに?貴方倒されたいのカンナさんに。カンナさんやってあげたら?このままだと彼女が可哀想よ」
「…わかった。わかったからもう言わないでマリアちゃん。ちゃんとケリは付けるから。逃げたりしないから。お願い」
ヴァンダさんは上空にいる。
サラマンダー様を呼び1人で大空へと向かおうとする私を皆心配しているが何も言わず飛びたった。
ヴァンダさんの体力はもう限界まで来ていた。
武器で抵抗しようともせずグリフォンさんの上でぐったりとした状態で私を待っていた。
虚な目をしながら私を見つめてくる。
私の事を恨んでいるだろう。
そうでないと自分が納得出来ないのだ。
これから彼女の命を奪うのだから尚更。
私はそっとヴァンダさんに近づき首元を狙い剣をあてがう。
震える手を両手で押さえながら力を込めていく。
次第に出血も多くなり傷も広がってきた。
するとグリフォンさんの姿が透け始めヴァンダさんが落下しそうになる。
慌てて手を握りサラマンダー様の方に乗せようと思ったがそんな気力も体力もなかった。
このまま一緒に死にたい。楽になりたい。
この悪夢から逃れる事が出来たらどんなに嬉しいか。
ヴァンダさんを抱きしめながら落下しているとこんな声が聞こえた。
「Chcieliśmy po prostu być bohaterami ...」
(私達は英雄になりたかっただけなのに…)
意味はわからないが、何故か涙が溢れていた。
そのあと意識がなくなり私はヴァンダさんと一緒に死んだと思っていた。しかし、現実は甘くなかった。
気づいたら自分の部屋にいて窓ガラスの割れた跡もあったが戦いは終結したようだった。
私は死ねなかった。落下したもののヴァンダさんがクッションになってくれた事や他のみんなも救助に当たってくれたそうだ。
欠けていく月を見ながら涙を流す日々を過ごしていた。
だが時間は止まってはくれないし、トワコ先生の薬で体調も良くなった。
しかし、心が追いつかなかった。
戦いの中でドンドン血生臭くなる自分はやっぱり人殺しという言葉が似合うのかもしれない。
こうして、長く苦しい満月の夜は終わりを告げた。
No.35を読んでいただきありがとうございました。
なんか凄い鬱エンドみたいになってしまいましたね。
でも作者の理想として9人いる内の4人が生き残っていただけかなり甘くしているつもりです。
初期は全滅か、いてもジュリオだけにしようかなと思っていましたからね。
文章がスッキリしないというか謎行動が多くて申し訳ありません。
本当はヨハンナちゃんやアーリフ君にもスポットを当てようと思ったんですが制作時間がなくて諦めてしまいました。
時間があるときに展開を変えずに追記できたらいいんですけどね。
次が第2部ラストになります。今までありがとうございました。
No.36(End)「依頼」をお送りします。




