No.29 一騎討ち
お互いに武器を構え相手の隙を伺う。
こんな真剣勝負ライアンさんの時、以来かもしれない。
でもこの戦いは大会とは違う。
ルールもない、時間もないのだ。
この戦いが終わるのは命尽きるか相手が降参するまで続く。
だが、これこそがシャンランさんの言っていた本当の戦いなのだ。
命と命のやり取り、恐怖するどころかワクワクする。
私はこんな奴に絶対負けない!!
しかし、相手の反応も早い。
大型の鎌であれば重心が下にいきコントロールが難しいはずなのに正確に私の足目掛けて横から切りつけてくる。
咄嗟に逆手に持ち替え剣で鎌の攻撃を食い止めるが「ギリギリ」とお互いの武器が鳴る。
身動きが出来ず、その場でお互いに硬直する。
このままでは力負けすると思った私は後ろに下がりながら鎌を受け流す。
「ダメだよ、油断してたら。試合みたいに防具もないから一撃一撃が死に繋がるんだよ?わかってる?反応は悪くないけど力はやっぱり無いみたいだね。僕に言われたくないか…」
「勿論わかってますよ。貴方にどうやって勝とうか考えていたんです!!」
ここは無法地帯だ、何をやっても許される。
試合でも使ったリーグ戦用の弾を剣で破壊し、ジュリオさんの後ろに回り込み。
「メイが使ってた弾丸そんな風に使えるんだ。試合経験も乏しいから知らなかった。どこにいるの?」
「ここですよ、ジュリオさん」
その声に相手は咄嗟にこちらを向くがもう遅い。
杖を奪うのと同じように取っての中央部を掴み、回転すれば簡単に武器を奪える。
やっぱり日々の基礎鍛錬は無駄ではなかった。
遠くに武器を飛ばしその場で組みつく。
その様子にヤンさんは驚きながらも拍手をしてくれた。
「何これ、全然動けないよ。ノラ、戻って実物顕現して。相手を妨害して、手を離してお願い」
『ジュリオから離れて、あっち行ってよ』(小声)
(何でノラさんは声が小さいんだろ。鳴き声も小さいのかな?なんか気が緩んじゃうな)
その言葉通り気づいたら手を離され相手は逃亡をはかろうとしている。
私は慌てて彼を追いかける。
『おいバカンナてめぇ何やってんだ!!折角のチャンスが台無しじゃねぇか!!』
「そうですよバカンナ。そんなんだからカラスにも馬鹿にされるんですよ」
「わかりましたから、ヤンさんは真顔で言わないでください!!」
(なんだろう…。ジュリオさんは見た感じといい戦ってる時も強いという感じがしない。この勝負、勝てるのだ。でも油断している自分もいる。どうして?)
「やっぱりいいね君は余裕があって。本当は僕の事舐めてるでしょ?だからダメなんだよ。君は負ける、僕より強いからさ」
その言葉に心臓が大きく高鳴る。図星だ図星をつかれたのだ。
私は弱い事も知っているが同時に強い事も知ってる。
私には様々な試合経験があるのだ。
その経験から今回の試合結果を見るなら私は彼に勝てる。
でもそのせいで私は彼に負ける。
矛盾しているようだがこれがジュリオさんの強さなのだろう。
「僕はね、今まで努力した事がなかったんだ。最近になって訓練所に通い始めたんだよね。大切な仲間を失いたくないからさ。でも気まぐれで参加した大会にもなんだかんだ言って優勝出来た。僕は弱いけどそれが強さなんだ。違う?」
「…いえ、違わないと思います。貴方は誰よりもいい物を持っている。貴方は相手に弱いと見せかける強さがある。そして相手が油断した所を掻っ攫う。それであってますよね?」
その言葉に彼は微笑む。
しかし、弱々しく笑みを浮かべるので本人としては複雑なのかもしれない。
「戦いはさ、相手を選べないんだよ。選ばせてくれない。実力の違う者同士が戦う事なんて多々あるよね?でも僕は守護者なんだ。どんなに弱くてもね。紛れもなく大会を勝ち抜いた。君だって最初から強かったわけじゃないでしょ?」
「…そうですね。色んな可能性があると思います。でもこれだけは、はっきりと言えます。負けるのは貴方ですジュリオさん」
相手を負けに追い込むのは簡単だ。
この無法地帯なら尚更だろう。
私が相手を降参させればいいのだ。それまで戦い続ける。
正当法なんかいらない。手段は選ばない。
相手もそうなのだから。遠慮しなくていい。
「…すぅ、はぁ…」
深呼吸し、目を見開く。
手加減はいらない全力で挑め。絶対に負けられない!!
ジュリオさん目掛けて一直線に走り出す。
まずは自分に優位な砂浜まで移動させるまずはそれからだ。
「何やってんの?真正面とか正気とは思えないんだけど。何か怖いよ、あっち行ってよ!」
と鎌を上から振りかぶられるがそんなのお構い無しで空いた腹部に剣を突き刺し、後ろに押し出すようにジュリオさんを遠くへ追いやる。
思い込み通り砂浜に近づくと彼の腕を切断する為、それ目掛け一直線に襲いかかる。
勿論切断したのは義手のほうだ。
肉片よりこちらのほうが切断しやすいだろう。
あれだけ大きい鎌なら両手でないと使えない。
これで武器を封じたのも一緒。
後は立てなくなるまで畳みかけるだけだ。
「なにこれ、もう嫌だよ!僕をいじめないでよ!」
「いじめてなんかいませんよ。これが本当の戦いなんです。何だか吹っ切れました。良い子ちゃん面するのは今日でおしまいです。慈悲の心があったら母も倒せませんから。大丈夫、武器は使いません。拳で勝負しましょう」
剣を投げ出し、拳一つで攻撃を開始する。
なんだが楽しくなってしまった。
もうはちゃめちゃだ、何も考えられない。
でもそれがいいのだ。
片手だがジュリオさんも受け身をとってくる。
その後ムキになって蹴りをお互いに入れるが決着がつかない。
次第にジュリオさんが涙を流すようになってしまった。
「もうやだ!お嬢ちゃんを止めてよヤン!」
「面白いのでそのままにしておきます。私も参加したいぐらいです」
「まともな奴いないの!!」
そのあともジュリオさんが降参するまで殴り合っていた気がする。
お互いの守護霊も呆れていたが私は楽しかった。
お互いヘトヘトになるまで戦い続け、最後は砂浜に突っ伏してた。
「もうダメ、動けない。なにこの子、外見によらず恐ろしいというか怖いよ。本当にゴミクズにされるかと思った」
「私の両親を見ればわかりますよね?まともじゃないんですよ。私も親も」
「うぅ、凄い悔しい。完全にサンドバッグだったもん僕」
そんな話をしているとヤンさんが私達を見つめこちらに近づいてくる。なんだ楽しそうだ。
「青春ですね。ジュリオ、後で私と殴り合いましょう。勿論拳と拳で。一度でもいいからやってみたいと思っていたんですよね。友達と喧嘩」
「やだよ!…まぁでもずっと地下にいるよりこうやってみんなと星空を見ていた方が楽しいかもね。それで勝敗はどうするの?」
「あっ、忘れてました。…そうですね、ならジュリオさんにおまかせします。貴方がしたいようにして下さい」
「…家族に会いたい。友達と会ってこうやって騒ぎたいよ。…いや、大人数は嫌だけどアトリエに招待出来る人数だったらいいかな?両親は仕事人間だから僕がいなくても心配しないだろうけどさ、でもこうやって夜空をみてると会いたくなるんだよね。空は繋がってるからさ。不思議だよね」
そのあと、休憩しようと砂浜で3人並んで体育座りをしているとジュリオさんがポツリ、ポツリと話始めた。
No.29を読んでいただきありがとうございました。
しばらく戦闘描写をしていなかったので何か上手くいきませんね。
9試合あるのであまり一つ一つの試合を丁寧に描写する事は控えています。
やりすぎるとそれで満足してしまった次を読む気なくしますからね。
繋がるように書ければいいかなと思っています。
9回目でやっとまともに書けるぐらいでちょうどいいんですよ。
ノラは声が小さいですがイタチというかフェレットが鳴き声が小さいので小声にしています。
次はNo.30「レオナルド」の話をお送りします。
ジュリオは少し変えて回想ではなく、2人に昔話をしてくれるように書きたいと思います。
コードネームは画家や様々な分野で活躍した「レオナルド・ダ・ヴィンチ」からですね。
美青年で万能の天才と言われています。ジュリオも活躍の幅が広いので「カエサル」や月関連で天文学者である「ガリレオ」と悩みましたがこちらを選びました。
レオナルドという名よりダ・ヴィンチの呼び名の方が有名ですが。
実はダ・ヴィンチは正式な苗字ではなく日本でいう山田さんとか木下さんとか場所を示す苗字なんですね。
レオナルドはヴィンチ村の出身だったので苗字の無い彼は出身地の名前を取っていたので個人を表すならレオナルドとなります。コードネームなので本名が分からなければそれでいいんです。男性なのはわかりますからね。




